翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

旅も人生もバッファが必要

スペイン巡礼の体験記で「何日までにゴールしなくてはいけない」と苦しそうな表現を見かけることがあります。限られた休暇で歩くとなると、そうなるとしかたがないでしょう。

昨年秋の巡礼は、いたって気楽でした。体の調子に合わせてゆっくり歩けたから。最初の1週間は宿を予約していたところ、フィンエアーの思わぬアクシデントにより成田空港を24時間遅れの出発に。ゆとりのあるスケジュールだったので帳尻を合わせることができたのです。

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IT業界で使われるバッファ(buffer)という言葉。一時的にデータを蓄えておくメモリーを指し、一般的にはゆとりや余裕という意味です。旅も人生もバッファがないと行き詰ります。ぎっしりスケジュールが詰め込まれた旅や、締め切りに無理やり合わせる仕事は心身をすり減らします。

 

それなのに、二度目のスペイン巡礼は100キロほどしか歩かないということで、あまりゆとりのない日程。体が慣れないうちに一日20キロ以上歩き続けて、足が疲れてタクシーを呼んでもらう始末でした。

極めつけは帰国便。マドリード・フランクフルト・成田のルートを選びました。帰国の途ではできるだけ早く日本に戻りたいので乗り継ぎ時間の少ない便を予約したのです。ところがスケジュールが変わり、フランクフルトでの乗り継ぎ時間が45分に短縮されました。けっこう厳しそうですが、ネットで体験談を読むとJALで通しのチケットを購入しているので何とかなるとのこと。国内線の乗り継ぎでは、時間が押してくると地上係員が降機場所に待機して誘導してくれますが、国際線でも同じらしい。もし乗れなかったら、他社の便かホテルを手配してくれるそうです。

実際にフランクフルトに到着すると、まずパスポート・コントロール。日本人で帰国のための乗り継ぎだと申告すると問題なく通れましたが、かなりの行列だったので時間がかかりました。JAL職員を探しましたが、どこにもいません。日本行のJAL便の搭乗口を探して向かったのですが、EU圏内から国際線への乗り換えなのでいったんゲートを出て再入場するしなかなく、迷うことばかり。この時点でボーディングタイムは過ぎていたので、半分はあきらめつつ搭乗口を目指しました。

ここでようやく私の名前を呼ぶJAL職員と遭遇。ああ、助かった。いつもの降機場所で待っていたけれど、今日は違う場所だったので会えなかったと説明されました。そんなことを言われても、乗客側に知る由はありません。長谷川岳だったら逆上して一気にカスハラに走るでしょうが、ともかく予定した便に乗るのが先決です。それに日本のJAL職員と違って淡々とした応対だし、クレームをつけるほうがおかしいという気になりました。結局、職員と合流して搭乗予定の飛行機に向かっているのですから。

最後の乗客として搭乗しましたが、他の乗客からのブーイングはありませんでした。機長のアナウンスによると、フランクフルト空港も混雑して、なかなか離陸の順番が回ってこないとのこと。乗り継ぎ客が多少遅れても問題はなかったのです。

 

しかし、こういう綱渡りのようなスケジュールはもう組まないと誓いました。心のエネルギーを消耗するし、いい年をしてあたふたと空港内を走るはみっともないし。多忙なビジネスマンでもあるまいし、時間を節約する必要なんてまったくないのですから。

 

昨年の巡礼では、猫に行く手をはばまれました。時間を気にせず猫と遊べる旅程で本当によかった。交通機関が発達している現代社会であえて歩いて巡礼を選ぶような人間が移動効率を考えるほうがおかしいのです。