翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)、ビジネス記事翻訳。副業で外国人に日本語を教えていましたが、2019年3月で卒業。フィンランドが大好き。ウラナイ8所属。

老後の人間関係は財産

ネットフリックスの『グレイス&フランキー』は70代女性の二人が主人公ですから、老化や死も描かれます。

夫側の有責で離婚したから、グレイスとフランキーも老後を生きるためのお金はしっかり手にしているはず。となると、求めるのは人間関係や生きがい。

 

グレイスはは現世の願いをすべて体現したような女性。持って生まれた美貌に加えてフィットネスやスキンケアに心血を注ぎ、若々しくスリムな姿を保っています。さらに化粧品会社を立ち上げたビジネス手腕の持ち主であり、長女に経営権を譲り、次女は医師の妻に。

 

一方のフランキーはヒッピー上がり。瞑想や占い、自然食品に凝り、常識はずれの行動を繰り返します。きれいな色合いの洋服を襟を立てて着こなすグレイスに対し、ブラジャーをつけないと公言し、国籍年齢不詳の民族衣装スタイル。養子の男の子が二人いて、長男は父と同じく弁護士になりましたが、次男は薬物とアルコール依存症からの回復途中。「出産経験がないくせに」とグレイスにマウントを取られたこともあります。

 

夫同士が弁護士事務所の共同経営者なので家族ぐるみのつきあいをしてきたものの、陰ではお互いのことを「大嫌い」と言ってきた仲。

離婚のショックに打ちのめされるグレイスに長女のブリアナは自助グループに入ることを提案します。AA(アルコール依存症の会)が有名ですが、アメリカ人は同じ問題を抱えている人が自発的に結びつくことで立ち直ろうと考えるのでしょう。

しかし、「同性愛者の夫に裏切られた70代の妻」というのはアメリカでもかなり特殊です。結局、身近にいる同じ立場のフランキーと結びつくしかありません。

しかもグレイスはアメリカのカップル文化にも順応しており、人間関係は夫婦ぐるみが基本。離婚により人間関係も失ってしまうのです。

 

わが身の行く末を想像しながら観ているのですが、もともと友達が少ないので、老後の人間関係にはあまり自信がありません。

大学時代の友人が3人ほど東京にいますが、コロナのためここ2年ほど会っていません。コロナがなくても、私と違い子育てをちゃんとこなしてきた友人は子どもの結婚や孫の世話で忙しく、顔を合わせる機会はそれほどなかったでしょう。

 

そんな中、日本語教師時代の同僚から連絡があり、久々に横浜で会うことになりました。要求水準の高い学生と上司に挟まれて胃の痛い思いばかりしていた3年間。非常勤で月火水の3日間教えていたので、水曜日の授業が終わって一緒にお茶を飲むのが何よりの楽しみでした。

 

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せっかくなので、横浜の崎陽軒本店1階でアフタヌーンティ。コロナの前は予約を取るのがむずかしかったのに、空いていました。

 

外国人留学生が激減し、多くの日本語学校が休校状態ですが、元同僚は自治体主催の在留外国人向けの日本語教室で教え続けているそうです。日本語教師だったことも忘れてのんびり暮らしている私は頭が下がる思いです。

まったく向いていなかった教師稼業ですが、こうして縁ができただけでもやった甲斐があるというものです。

 

そして、ウラナイ8の仲間。

uranai8.jp

1年目はイベントも実施したけれど、こちらもコロナの影響でリアルに会うことが少なくなりました。それでもZoomを使った講座やミーティング、そして曜日担当で毎日掲載されるデイリーメッセージによってつながっています。この秋からは、紹介制のオンラインブッククラブも始まり、本好きの人たちとの縁もできました。

 

こうして見ると、まったく孤独な老女というわけでもないか。

老後資金の管理だけでなく、人間関係のメンテナンスにも心を配る必要があります。

 

「自分らしく生きたい」と願うのは呪い?

ネットフリックスの『グレイス&フランキー』に夢中です。

ジェーン・フォンダマーティン・シーン、ハリウッドを代表する名優の二人が高齢の夫婦を演じています。

夫は弁護士、妻は化粧品ビジネスを立ち上げて軌道に乗せたというアメリカンドリームを体現したカップル。そんな理想的な妻を裏切って関係を持ってきた相手と再婚したいと言い出す夫。なんと、浮気相手は男性で同じ弁護士事務所の同僚。彼にも妻がいて、長年家族ぐるみでつきあってきた仲です。

普通の浮気だったら、どろどろしたメロドラマになるのに、同性愛というのがポイント。妻たちはパニック状態ですが、幼馴染の子どもたちは父親同士の恋愛を受け入れます。

 


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わざわざ結婚をやり直ししなくても、長年連れ添った妻と仮面夫婦を続け、ひそかに恋愛すればいいのにと、不純な私は思ってしまいます。同性愛への理解が進んだカリフォルニアとはいえ、眉をひそめる人はいるでしょう。同じ職場で働いているのだから、いくらでも逢瀬の機会はあるだろうし。

 

「自分らしく生きる」という呪い、という言葉を思い出しました。

「自分の人生は自分で決める」「すべてのひとが”自分らしく生きられる”社会を目指すべきだ」というリベラルの価値観は、1960年代のアメリカの西海岸(ヒッピームーヴメント)で始めり、その後、パンデミックのように世界じゅうに広がっていったきわめて奇矯な考え方だ、とあります。

 

マーティン・シーン演じるロバートの浮気相手であるソルの妻、フランキーはヒッピー上がり。あやしげな瞑想をして占星術を信じています。ソルが「自分らしく生きたい」と離婚を申し出たら、どんなに嫌でも反対はできないでしょう。

 

すべての人が「自分らしく生きる」のは一見、素晴らしいことのようでいて、闇もあると『無理ゲー社会』には書いてあります。

「自分らしく生きられない」人はどうすればいいのか、答えがないから。

大学生の就職活動では夢や理想についてけれど、夢なんかないのにどう答えればいいのかという相談が相次いでいるそうです。

 

誰もが夢を抱き、実現に向けて努力できればいいけれど、具体的な夢を持てなかったり、努力が苦手な人もいます。そんな人に対して自己責任を押し付けるのはかえって残酷です。カースト制度は差別的で非人間的な制度だと非難されますが、能力ではなく生まれによって職業が決まるのであれば、努力不足や自己責任を問われることはありません。

『グレースとフランキー』の夫、ロバートとソルが夢を実現できるのはアメリカの白人男性で弁護士として成功しているからという意地悪な見方もできます。

 

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ドラマの舞台がサンディエゴというのも絶妙です。リベラルなカリフォルニアにあってロサンジェルスやサンフランシスコよりのんびりしているイメージ。

アメリカには当分行けないだろうから、沖縄の北谷でアメリカ気分を味わいます。

貧乏舌の幸福

美食家ではなく料理もあまり得意ではありません。

母は専業主婦で、兄のリクエストでしょっちゅうフライや天ぷらを揚げていましたが、私は油の後始末が面倒なのでもっぱら店で買っています。

 

食のこだわりがないので、なんでもない食事がとてもおいしく感じられます。いわゆる「貧乏舌」。

玄米菜食でも暮らせますが、ベジタリアンではないので肉も食べます。

高山で3泊しましたが、観光地のため普通の定食を出すところが少ないので、入ってみたのが精肉店が直営する「丸明(まるあき)」というお店。

空いていたので、立派なテーブル席に案内されました。焼肉定食もありましたが、一人のためにコンロに点火してもらうのも気が引けて、ステーキ丼にしました。

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A5ランクの飛騨牛ステーキ御膳。

味音痴の私でさえ、仰天するようなおいしさです。これまで食べていた牛肉はなんだったのかと思うぐらい。ウラナイ8の杏子さんが、エネルギーを充電するためにはまずお肉と言いますが、食べるごとに生きる喜びが実感できます。

 

ステーキ丼は極上の味でしたが、これから牛肉を食べるたびに「高山のあの味より落ちるな」と思ってしまったらどうしよう。

難民キャンプに慰問に来たお金持ちが、子供にお菓子をあげた話を思い出しました。食べたことのない夢のような味に子供は夢中に。難民キャンプで出される食事を味気なく感じ、車が来るたびにまたお菓子がもらえるのではないかと飛び出して轢かれて死亡。お菓子の味を知らなければ、渇望することもなかったでしょう。

 

昼にこれほど充実したものを食べると、なかなかお腹がすきません。そして夜の食事となると地方都市で一人で気楽に入れる店が見当たりません。

高山桜庵は共立メンテナンス系列なので、ドーミーインと同じく夜鳴き蕎麦がふるまわれます。素朴な味で、これはこれで大変おいしい。夕食を済ませたあとの夜食という設定なので量が少なく、午後9時という遅めの時間に食べる背徳感がますますおいしく感じさせるのでしょう。

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昼は3000円近いランチ、夜は無料の夜鳴き蕎麦。金持ちなのか貧乏なのかわからない旅に思わず苦笑。そして、どんな状況でも機嫌よく楽しむ人生の達人を目指そうと思いました。

 

飛騨高山ワーケーション事情

コロナがそろそろ落ち着いてきて、静かなワ―ケーションを実施。

 

泊まるならサウナと水風呂があるドーミーインが最高。共立メンテナンスががドーミーインの上位ブランドのラビスタ函館、沖縄ビーチタワー、ウェルネスの森伊東、高山桜庵の4か所でワ―ケーションプランを出しています。

いずれも7泊以上ですが、高山だけお試しプランとして3泊がありました。

 

東京から高山はJRだと名古屋か松本経由となり、けっこう時間がかかります。最も速く行けるのが新宿から直行の高速バス。といっても朝8時15分に出発して高山に到着したのは午後2時近くでしたからかなりの長旅です。

 

コロナ以前、高山の街は外国人観光客で大賑わいだったようす。特にヨーロッパ人旅行者に人気で、街ぐるみで歓迎していたそうです。

高山桜庵もその頃は超満員で多忙だったことでしょうが、カップルや家族旅行が数組見かける程度でした。貸し切りの家族風呂が3つもあるので、大浴場はいつも空いており、サウナはほぼ独占状態でした。

ワーケーションプランだと、素泊まりで一泊4000円という破格の安値。掃除もタオルの交換もなく、部屋は下層の3階。長期滞在客向けに共用キッチンとランドリールームが自由に使えます。

 

大浴場の露天からの眺望はすばらしく、朝晩、たっぷり楽しめました。

ただし、サウナへの情熱はなさそう。サウナは低めの温度で水風呂も生ぬるい。水風呂には手桶がなく、せっかくの露天スペースには外気浴用の整い椅子がありません。しかし、格安のワ―ケーションプランで文句を言ってはバチがあたります。

 

大浴場が朝9時までなので、その後にちょっと仕事。昼食のために外出して散歩し、カフェでお茶。古い町並みは格好のウォーキングコースです。チェックアウト時間が過ぎ、他のお客さんたちが出払ったあとにこっそり宿を出て、午後の早い時間にホテルに戻るのは、まるで居候のようでした。

 

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おいしそうな地酒もありましたが、一応ワ―ケーションなので禁酒。一人で飲むと飲みすぎてしまがちなので。

「山の民」「海の民」という分類があるなら、私は「海の民」ですが、たまに山の街で過ごすのもいいものでした。桜庵というぐらいだから、桜の季節にはさぞきれいなことでしょう。

ランチで入ったお店の女将さんが、いろいろと気遣ってくれてちょっとしたデザートまでいただきました。

「またいらしてください」と声をかけられて、つい「また来たいのはやまやまなんですが、ちょっと遠くて…」と口走りました。

「どちらから?」と聞かれて、正直に「東京から」と答えると「私も東京出身なんです」とのこと。高山にお嫁に来て、老舗の店を切り盛りしています。こうして人の人生を垣間見ることができるのも旅の楽しみです。

 

世界だけでなく日本にも滞在したい場所が限りなくあって、生きているうちにすべて行くことは無理でしょう。駆け足であれこれ巡るより、じっくり腰を据えて一つの街を味わいつくしたいものです。

 

「アナザーラウンド」の前に

「アナザーラウンド」は英語で「みんなでもう一杯ずつ」という意味。飲み物が出されるたびにお金を払うキャッシュ・オン・デリバリーのパブで複数の人数で飲む場合は、ラウンドごとに順に支払ったりします。

「アナザーラウンド」で杯を重ねるうちに、飲みすぎてしまいがち。そんなタイトルのこの映画、アルコール依存症の中年男の悲惨な話かと思いきや、突き抜けた明るさがありました。それにしても、16歳から飲酒が認められているとはいえ、デンマークの高校生は飲み過ぎ。

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酒飲みの失敗の数々は身につまされましたが、最もトラウマが呼び起されたのが、授業シーン。人生に行き詰っている主人公は高校の歴史教師。やる気のないつまらない授業を続けていて、生徒だけでなく保護者からも「このままでは受験できない」とつるし上げられます。

 

私と同時期に研修を受けて日本語学校の教壇に立った同僚。ある日、学生たちの一団が職員室を押しかけて「○○先生のことで」と教務主任に訴え、その週のうちにクビになりました。ヨーロッパでは授業に不満があると教師が糾弾されるようです。

 

そこで友人であり同僚の教師から教えられたあやしげな理論。

人間は血中のアルコール濃度が0.05%だとりリラックスして自信に満ち、人生を楽しめる。さらに仕事の効率も上がり、想像力が高まる…。

たしかに。私が酒をやめられないのも、気分が高揚するから。溜まっていたアイロンがけなどめんどうな家事をてきぱきと片付けられます。

 

映画でも、アルコールの効用はてきめん。

つまらなかった歴史の授業は、学校のトイレでウォッカをひっかけると導入から学生の心をつかみます。

「1940年代の有権者だとして、3人のうち誰に投票するか?」

「1番目はマティーニが好きでいつも酔っ払い。しかも女好きで浮気をする。2番目は完全にアルコール依存症睡眠薬も飲む上にヘビースモーカー。3番目は酒もタバコもやらず、女性関係もきれいで子供や動物を愛する。」

学生が3番目を選んだところで、種明かし。1番目はフランクリン・ルーズベルト、2番目はウィンストン・チャーチル、3番目はアドルフ・ヒトラー

こんな歴史の授業ならぜひ受けてみたい!

 

そして実験に参加した心理学(日本では倫理社会?)の教師は、極端にあがり症の生徒にも酒を勧めます。デンマークの高校卒業試験は口頭試問。知識を詰め込んでも本番で失敗しがちです。

プレッシャーに押しつぶされて試験を投げだそうとする学生に、酒を飲ませて落ち着かせます。出題はキルケゴール。学生は堂々と「大切なのは、失敗した自分の不完全さを認めることだ」と答えます。

 

ほろ酔い気分で仕事がうまくいっているうちはよかったのですが、やはりアルコールはコントロールできません。酒に飲まれて悲劇的な結末を迎えるか、完全禁酒で生き直すかと予測したら、意外に明るいエンディングでした。

 


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最終シーンのキレキレのダンス。主人公の中年教師を演じたマッツ・ミケルセンは元体操選手で「北欧の至宝」と讃えられるほど。たしかに、どんなにくたびれたシーンを演じても、そこはかとなく名優のオーラを放出していました。酒を飲んでも楽しく踊れるぐらいの量にとどめたいものです。