夫と浜松に行くことになり、私だけ先に静岡で二泊。熱海や伊豆、箱根の温泉にはよく行きますが、静岡や浜松は新幹線で素通りすることが多いので、この機会に街を味わってみようと考えたのです。観光スポット巡りより、地元の人々の日常生活を垣間見るのが好きです。
駅から近いビジネスホテルを適当に選んだのですが、これが大正解。変わった間取りで、デスク回りとベッドが壁で隔たれていて、いかにも集中できそうなスペースになっています。

壁を隔ててベッド。浴室には大きめのバスタブがあります。

ワーケーションには最適な間取り。今は仕事をしていないけれど、本を読んだり考えをまとめるにはぴったりな部屋です。この部屋に泊まりたいから、また静岡に来たいぐらいです。ホテルのスタッフに聞くと、このタイプの部屋は1フロアに1つしかないそうで、次に予約する時は指定しなくては。
世の中には五つ星のラグジュアリーホテルが好きな人もいますが、広くて豪華な部屋は借りてきた猫状態になって、あまりくつろげません。そして、「この一泊分で普通のビジネスホテルに何泊できるんだろう」と考えてしまう貧乏性です。
駅近くのビルの3階に静岡市美術館があり「スウェーデンのうつわ グスタフスベリのある暮らし」展をやっていました。グスタフスベリはスウェーデンを代表する食器メーカーで、フィンランドのイッタラやアラビアのような存在でしょう。

おもしろかったのが「フィーカ」のカップの展示。スウェーデン語でコーヒーを意味する「Kaffi」の音節を逆にした「fika」のがフィーカ。女性たちがコーヒーを飲みながら人と過ごしてリラックスする時間のことです。

カップが7種類あるのは、焼き菓子を7種用意する習慣にちなんだもの。6種類では質素、8種類では見栄っ張り。7がちょうどいいとのことですが、どの国でも女性の集まりはちょっと面倒くさい部分があります。
日本語学校で教えていた頃は、北欧の学生も多くて、デンマーク人の「ヒュッゲ」「ヤンデの掟」、フィンランド人の「シス」など教師の私の方が教わることばかりだったのを思い出しました。
ランチはスープパスタの「ズッパ」へ。

野菜とハーブを煮込んだスープのパスタ。南イタリアの料理だそうです。
意外と男性客が多かったのですが、パスタを食べ終わったら無料のご飯をもらってリゾット風に食べることができるから。私はパスタとスープだけでおなか一杯になりました。
そして、静岡市に来た目的の一つは静岡県庁。「国の光を観る」計画の一端です。
「観光」の語源は「国の光を観る」。出典は易経「風地観」です。
よき為政者の国は明るい光に満ちています。光の状態を見れば、その国がどう統治されているかわかるという意味です。
入札により民間業者に委託される官公庁の食堂。官と民の関係がうまくいっていれば、おいしくてサービスもよく、メニューに工夫もあるはず。食堂の状態から、その地の行政の一端を垣間見ようという計画です。
沖縄県庁の食堂がなくなって、代わりに那覇市役所に行ったみたのですが、弱者に寄り添う場所として機能しているようで沖縄の厳しい経済状況がうかがえました。
ランチを済ませていたので、県庁内のカフェへ。障害者が働いています。

私が住む区の区役所の1階にも障害者雇用団体が運営しているカフェがあります。
空いていたのでゆっくりコーヒーを飲んでいると、指導する立場らしい方がゆっくりと食材や食器の収納をスタッフと一緒に確認する声が聞こえてきました。民間のお店では働くのがむずかしい人も、こういう場所があれば社会とつながることができます。
そこに人が暮らしているというリアルな実感が得られたら、それが私にとっての旅になります。遠い外国にも行ってみたいけれど、隣の街であっても、見知らぬ人々がそれぞれの生活を営んでいるのを垣間見ることができれば、それで満足。しっかり「国の光」を観たという満足感が得られます。





