翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

北陸応援割と「すっぱい葡萄」

北陸応援割、JALで小松に飛んで空港近くの片山津温泉あたりに泊まれるといいなと思ってJMBツアーで予約を試みましたが、あっという間に枠が埋まってしまいました。本当に応援したいのなら、割引なんて使わず正規料金で行くべきなのでしょう。

 

定期的に通っている個人経営のフットケアのサロンでそんな話題を振ってみたら、女性オーナーは「割引とかクーポンは一時的にお客様が増えるけれどデメリットのほうが大きいので使わないことにした」と言います。新規のお客さんがリピーターになってくれるかと期待したらそんなことはなくて、初回限定の割引を渡り歩くお客さんが多くて、常連さんに迷惑をかけることになってしまうそうです。

そして、北陸応援割の時期に旅行してもそういうずうずうしいお客さんで宿もいっぱいで不愉快な思いをするかもしれないから、予約が取れなくてよかったんじゃないかという結論に達しました。世の中には「もらえるものなら何でも限界までもらう」という貪欲な人がいるのです。

 

「旅は道連れ」と言いますが、同じ飛行機や鉄道の乗客、同宿者の運をかぶってしまうことはあり得ます。1月2日の羽田空港JAL機炎上事故で「お正月の正規料金で乗っている乗客だから、民度が高くて全員無事だった」と感じたのは記憶に新しいところ。イソップ物語の「すっぱい葡萄」ではありませんが、低料金ばかりをアピールしている旅には参加しないように誓ったのですから、北陸応援割が取れなくてよかったと思うべきです。

 

bob0524.hatenablog.com

 

クーポンとかポイントカードなど、消費者としては当然の権利だから堂々と使っていいはずですが、断捨離のやましたひでこさんは「その分どうぞ儲けてください」と断っているそうです。

 

 私が無欲だからではなく、強欲だからともいえます。小さな得ではなく、もっと大きな得を見ているといったらいいのでしょうか。もっと大きな世の中の機運や人とのご縁を見ているのです。チマチマと目先の損得で動くと、チマチマしたお金しか入ってこないのです。

 

bob0524.hatenablog.com

 

単なる片付けテクニックを超えて断捨離がここまで普及したのは、やましたひでこさんのこうした姿勢に共感する人が多いからではないでしょうか。

 

 

昨年秋のスペインの巡礼路で出会った猫。巡礼者たちは、自分だけが得しようなんて利己的な思いとは無縁で自分のペースで淡々と歩き続けていました。そうした旅を体験したというのに、帰国すると世俗に戻ってしまいました。



 

草津温泉の雪女

毎年この時期にはスギ花粉に悩まされ、鼻炎薬が手放せません。北海道か沖縄なら花粉がないので2月下旬は沖縄に行くことにしました。

 

しかし、鼻炎と目のかゆみが耐えがたいに日々。草津温泉は高地にあるので花粉の飛散が少ないという情報を得て、行ってみることにしました。

新宿から高速バスで4時間ほど。北海道や沖縄より近いのですが、移動時間はそんなに変わりません。

 

3月なのでそんなに寒くないだろうと考えたのが大間違い。湯畑にも雪が降っていました。

1月の島根・温泉津(ゆのつ)温泉でも大雪となったし、私は雪女なのかもしれません。

 

日本屈指の有名温泉なので一人で泊まれる宿となると限られます。検索してたどり着いたのが、日本に初めてできたペンションという綿貫ペンション。旬の食材を使った食事も魅力的です。

watapen.com

ネットでの口コミも好意的なものが多く、こういう個性的な宿には泊まれるうちに泊まっておくべきです。

コミ通り、親切な経営者のご夫婦に迎えてもらったのですが、雪のせいか宿泊客は私一人だけ。私さえ予約しなければお休みできたのにと恐縮しましたが、「そんなこと、お気になさらないでください」と歓迎してもらいました。

というわけでお風呂も貸し切り。源泉から引いている新鮮なお湯を満喫しました。

夕食には春の息吹を感じさせるフキノトウが出ました。一泊二食で1万円以下という破格のお値段なのに、品数も多く天ぷらは揚げたてを一つずつ運んでくれます。

 

近くのヴィレッジホテルの経営陣がドイツの温泉を視察し、ペンションという食事付きの小規模の宿を知り、従業員の一人に別荘地の一画に作ってみたらどうかと従業員の一人に勧めました。それが女将さんのご両親。大規模ホテルと別荘だけでは味気ないので中間的な施設も作って草津を総合的に発展させようという構想があったのかもしれません。

 

創業は1969年ですから、建物は年季が入っています。できるだけ手を入れて丁寧に維持していることがわかりますが、先のことは決まっておらず夫婦二人でできる範囲で続けていくとのことです。草津を訪れる客をおもてなしすることが生きがいになっているのでしょう。同じ敷地内に息子さんが経営するイタリアンレストランもありますが、今後のことはまだ決まっていないそうです。

 

私が旅を続けるのは、こういう話を聞きたいから。家族の歴史が詰まった宿に泊まるのは一編の小説を読むかのような味わいがあります。

 

今回は思い立って出かけたため短い旅となりましたが、次回は草津の長期滞在を考えています。

先日の伊東の記事がOtellさんの目に留まり、アンバサダーになることに。私の紹介経由でOtellを利用すると3000円引きとなるそうなので、ご興味のある方はぜひご連絡ください。

otell.jp

 

親を否定して生きる 韓国ドラマ『無人島のディーバ』

Netflixの『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』がとても面白かったので、同じく主演がパク・ウンビンの『無人島のディーバ』も観ました。「できないことがない女優」と評されるだけあって、半年間一日3時間ずつのボーカルレッスンを受けて堂々とした歌声を披露しています。

 

日本のドラマにも出演し人気上昇中のチェ・ジョンヒョプが相手役です。

 


www.youtube.com

 

パク・ウンビンがいくら芸達者だからといって、無人島で15年間も生き延びるという設定は荒唐無稽。しかし回が進むにつれて、無人島の設定は必要だったとわかりました。

恋愛や韓国の芸能界事情も描かれていますが、大きなテーマが父親による児童虐待だったからです。日本以上に儒教精神や家父長制度が根付いている韓国で、実の父親を否定するドラマはすんなりと受け入れられず、そのために無人島に漂着という現実離れした要素をプラスしたのかもしれません。

暴力親父は自分では愛情深いと思い込んでいる節があり、執念深く逃げた家族を探します。このあたりはサスペンスドラマのようでぞくぞくしました。再会できたら改心して優しい父親になるのかと思いきや、逃げた罰を与えることしか考えていません。この父親役の俳優さんも鬼気迫る迫真の演技でした。

とんでもない暴力親父の血が自分にも流れていると知りつつ生きるのは容易なことではないでしょう。だからこそ、ようやくつかんだ平穏な生活の喜びも丁寧に描かれていました。

 

一昔前までは、結婚したら子供を持つのが当たり前で、親は無条件に子を慈しみ育てるものだということになっていましたが、親も未熟な人間だし子供との相性もあります。虐待までいかなくても、親子関係がうまくいっていないという人は多いのでは。「毒親」という言葉も一般的になってきました。

 

この記事の「育ててもらったからといって、無理に親を好きでいる必要はない」というタイトルに救われる人もいるでしょう。親子の縁は強いけれど、必ずしもとらわれる必要はありません。

blog.tinect.jp

 

 

 

無人島のディーバ』には東洋占術が出てくるので、ウラナイ8のデイリーメッセージでも紹介しました。

uranai8.jp

 

本をめぐる旅

ブログを通して交流している、よかよかさん。

風に吹かれて (hatenablog.com)

 

稲垣えみ子『人生はどこでもドア リヨンの14日間』という本を教えてもらいました。

bob0524.hatenablog.com

 

「旅に出たからといって日頃興味を持っていないことをやってもおもしろくない。料理や洗濯、掃除や買い物など旅先で日常生活を送りたい」という稲垣えみ子の考え方は玉村豊男と同じです。そこで、フランスのリヨンに2週間滞在して日常生活を送ることに。

悪戦苦闘です。私が体験したスペイン巡礼だと、地元の人たちは日々通り過ぎていく巡礼者の扱いに慣れているので、どこでも受け入れてもらえましたが、リヨンとなるとそうはいかないでしょう。しかし稲垣えみ子は4日目にして地元のカフェで開眼しました。

楽しそうにおしゃべりしていたおばあさん二人組が帰ろうと席を立とうとしたところで何となく目があい、にっこりしたらおばあさんも天使のような笑顔を返してくれました。フランス語で熱心に話しかけられて、かろうじて「サイレンス」という言葉だけが聞き取れたので「うるさくおしゃべりしてごめんなさいね」とおっしゃりたかったのではないかと推察。ぜんぜんそんなことないからと、顔と手を振ったら、おばあさんはにっこり笑って手を振って帰ってくれた。

たったこれだけのことで、銭湯と同じだと気づいたのです。

 自分の居場所を作っていくのに必要なことは、きっと語学力でもないし、お金でもないし、いやどっちもあるに越したこたあないですが、そこに本質はないんじゃないでしょうか。

 つまりこれって……我が愛する銭湯と一緒です。

 財産も、名声も、地位も関係ない。ただその人の「ふるまい」と「佇まい」だけがその人の価値を決めるのが銭湯だと思ってきましたが、まさかリヨンが銭湯だったとは!(笑)

 

そうです、公共浴場デビューはけっこう大変。いわゆる「主」が仕切っている空間に入って行くのは勇気が要りますが、そこで認められたら、世界で通用するコミュ力を手に入れたようなもの。

 

『人生はどこでもドア リヨンの14日間』を読んでまた旅に出たくなりました。ザ・バンドのロビー・ロバートソンは「音楽が世界を広げてくれた。どこへでも連れて行ってくれた」と語っていましたが、本を読むのも同じ効果があります。

 

スペイン巡礼で会ったスロベニア人のカップルの女性は「ベロニカ」という名前でした。「スロベニアのベロニカ! パウロ・コレーリョの本の通り!」とびっくりしたら、「どうやら私たちは同類。いつも本を読んでいるタイプ」と言い当てられました。スペイン巡礼のために読んだ本をお互いに紹介して盛り上がったのを覚えています。

 

スペイン巡礼中に出会った私設図書館。読み終えた本を入れて、誰でも自由に持ち帰ることができます。世界のどこに行っても読書愛好家がいます。

根無し草のように生きる

次はどこにワーケーションに行こうかとOtellのサイトを見ていると、伊東に移住を考えている人には補助金が出るとありました。

otell.jp

先月訪れた島根の温泉津(ゆのつ)は地域が一丸となって移住者を歓迎しているようす。若い人による個性的な店があちこちにできていました。

そんな人「ほぼ毎年、島根を訪れている」と話すと、「それならいっそのこと移住してみては?」と声がかかりました。

 

bob0524.hatenablog.com

 

石垣島のウォーキングツアーでお世話になった「ゆんたくガーデン」も移住を推進している一般社団法人でした。案内してくださったからも東京出身でした。

ツアーの終わりに「今夜、移住説明会がありますよ」と誘われました。一人で気ままな暮らすような旅をしていると、移住希望者に見えるのかもしれません。

 

 

日本の人口が急激に減少していくなか、自治体間で移住者の取り合いが起こっているようです。このままのペースだと消滅する市町村も出てくるでしょう。「先祖から受け継いだ土地を子孫に残していく」という従来の価値観は行き詰り、資産価値が低く売却できず、所有しているだけで負担が生じる「負動産」だらけとなるのでしょうか。

 

もっと若かったら移住を考えたかもしれませんが、高齢になってからの移住は地域に貢献するどころか負担をかけるばかりです。それに車の運転ができないと地方暮らしは厳しそう。

東京の住まいを引き払う予定はありませんが、マンションのローンを完済したからといってあの世に持っていけるものではありません。とりあえず生きている間だけの仮の宿。自由に動ける体力があるうちは、根無し草のようにあちこちを旅して暮らすつもりです。

いつまでも都会に暮らしたいと願っても、加齢により自立した生活ができなくなれば、むずかしくなるかもしれません。持ち物を減らし、フットワークを軽くしてどこでもふらっと移れるようにしておくのが理想です。