翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年秋、スペイン巡礼(フランス人の道)。2025年夏、ガルシア=マルケスの聖地巡礼でコロンビアへ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。おかげさまで四刷になりました。

円とドルが交差する街、コザ

何度も沖縄に来ているのですが、コザを訪れるのは初めて。

沖縄はアメリカ文化の影響を強く受けていますが、嘉手納基地に隣接するコザは特にその傾向が強い街です。今回の旅の目的は、英語が飛び交うライブハウスでアメリカ音楽を聴くことですが、そんなお気楽なことで行っていいのものか。台湾有事がささやかれる今、米兵がらみの事件に巻き込まれたら、左翼と右翼双方から激しくバッシングされそうです。しかし今行かなくてはいつ行けるのでしょう。台湾問題がすっきり解決するには時間がかかりそうだし、年を重ねるごとに気力と体力が失われていく私は思い立った時に行動するしかないのです。

 

那覇から路線バスで1時間半ほど。宿泊するホテル近くのバス停で降りました。コザに初めてできたビジネスホテルという触れ込みの宿です。チェックインの3時まで時間があったので遅めのランチを食べることにしました。


Googleマップで良さそうな店を探し、定食がおいしいという食堂へ。「でいご」は沖縄を代表する赤い花です。

男性が一人で切り盛りしていました。この人の接客も口コミで絶賛されています。「年配の客が多く一人一人に気を配り、最後には何も言わずに持ち帰り容器を食べ残している常連さんの机にそっと置いていました」という一文にグッときました。ぜひ会ってみたいし、この人が作る料理を食べてみたい。

 

フーチャンプル定食、ご飯を半分にしてもらいました。ゴーヤや豆腐、そうめんのチャンプルもいいけれど、私は沖縄独特の圧縮麩を使ったチャンプルが好き。野菜がたっぷり入った滋味あふれる一皿でやさしい味付けです。

昼食には遅い時間なので私の他にはお客さんが一人だけ。その調理も終わっていたのでお会計の時に「これまで食べたフーチャンプルの中で一番おいしかった。Googleマップの口コミは本当だった」と話しかけてみました。嬉しそうでちょっとおどろいたようなのでスマホを取り出して見せてあげました。「フーチャンプル最高においしかったです。こういうのが食べたかったの一言に尽きる。味噌汁にも具材たっぷりで大満足」という口コミを読み上げると「そんなふうに書いてくれた人がいるんだ」と感無量のようす。こんなに喜んでもらって、私も幸せな気持ちになりました。

 

こうしたちょっとした出来事が旅の思い出となります。観光名所を回ってもすぐ忘れてしまうのに。

米軍基地の街といってもコザは普通の人たちが日常生活を送っているのです。街に着いての最初の体験で、この街と私の相性は最高だと確信しました。

 

ホテルにチェックインし、午後8時の開店を待って向かったのがコザミュージックタウンの2階にあるウイスキーリバー。

開店すぐのはずなのですが、金曜日の夜とあってそこそこお客さんがいました。日本人客は私だけですが、スタッフは日本人です。メニューがドル表記。こんなこともあろうかとアメリカ旅行で残ったドル札を持ってきたのですが、日本円でも払えるとのことでした。

スタッフの若い女性の手が空いて、話が聞けました。大阪出身で移住してきたそうです。コザに来たのはこの店の求人があったから。そして、靴音を響かせながら数人が踊っているのはカントリーのラインダンス。縦横のラインに沿って同じステップを踏むダンスです。

アメリカ音楽を体験したくてコザに来たと話すと「もっとディープな雰囲気を味わいたいのなら、ゲートストリートがいい。黒人音楽専門の店もある」と教えてくれましたが、今晩はこれで十分。刺激に満ちた一日でした。

 

生活は面倒、旅は解放

今の住まいは築25年のマンション。新築で購入して二度目の大規模修繕の真っ最中です。

不動産は買って終わりではなく維持管理に手間がかかります。今回、わが家は理事が回ってこないタイミングでしたが、たまたま理事になっていた人たちはさぞかし大変だったでしょう。修繕費用も急騰している中、契約がまとまり修繕工事に着手できたのは喜ばしいことです。そして今後は人口減少により分譲マンションでも空き部屋が増え管理不能になる建物が増えてくるのではないでしょうか。

今回の修繕を担当する会社はかなりきちんとしているようで、足場の組み立て工事予定などのスケジュールと住民がやっておくべきことのリストなどを郵便受けに入れてくれるだけでなく、一階に設置した大きな電子パネルに表示されます。ベランダに置いていた鉢植えを室内に移動し、網戸を外しました。網戸はハウスクリーニングの会社が預かり、張替えか洗浄を依頼できます。どこも破れていないのですが、25年も使っているので張替えを頼みました。

 

生活するのは面倒なことの連続です。確定申告は年に一度ですが、毎日の家事は掃除してもきりがないし、食材を買って余すことなく使い切るのもむずかしい。このまま年を取っていけばますます面倒になっていくでしょう。

 

そして、人間関係も面倒。昨年新たに知り合ったメンバーと飲み会があったのですが、そのうちの一人が昭和脳で学歴厨のオヤジでした。仕事の付き合いならまだ我慢できますが、プライベートの割り勘飲み会では勘弁してほしい。

いきさつはこちらに書いています。

uranai8.jp

しかし私以外のメンバーは気にしていないらしく、二度目の飲み会も企画されLINEの通知がどんどん来ます。こんなことならその場でキレていればよかった。飲むと小さなことがどうでも良くなり、場の雰囲気を壊さないようにヘラヘラしてしまったのです。

昔だったら連絡を断つことで距離を置けたのですが、LINEのようなコミュニケーションアプリは、グループ全員のやりとりが送られてきます。二度目の飲み会は予定があるので欠席と連絡し、後は既読スルーしていれば放っておかれるかと期待したのですが、名指しで「元気?」「空いている日は?」など聞かれます。グループ退会は全員に知られるので角が立つとも言ってられず、多忙を理由に抜けました。

 

そうしたことが重なり、杉花粉も飛び始めたので沖縄に逃亡。

季節はすっかり初夏。

 

とりあえず旅に出てひとときの解放。今回は2週間ほどの滞在。旅先で料理や掃除をしたくないので2〜3泊ごとにビジネスホテルとリゾートホテルを転々としています。

 

タオル屋さんの猫店長は店先でぐっすり寝込んでいました。

昨年も同じようなことをして、来年もまたこの時期に沖縄に来ると思います。

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ランダム・ウォークで世界を巡る

経済の勉強もほとんどせずにニューヨーク市場に打って出た私ですが、アメリカ株の投資本は一冊だけ読了しています。

バートン・マルキール『ウォール街のランダム・ウォーカー』

「株式相場は専門家でも予測できないから、インデックス投資で長期運用が最も望ましい」というのが結論。

この本を読んだ当時すでに50代後半で、体力や気力があるうちの旅行資金を作るための投資なので、そんな悠長なことはやっていられないと思いました。

 

そして「テクニカル分析は科学的な外見を装ってはいるが、実は占星術と同類である」とか「アナリストの業績予想は占星術よりお粗末」など占いが引き合いに出されていることから、占い師は株式相場と相性がいいと感じたのです。

どの銘柄が上がるか占うというより、易で鍛えた直感と連想力を駆使すれば、アナリストと張り合えるのではないか。具体的には、これから世の中に必要とされる業種で経営方針や社風、CEOの人物像、社名や商品名のネーミングセンスなどをチェックして銘柄を選定。アメリカの業界紙の翻訳仕事を30年以上続けてきたことも、米国企業の分析に役立ちました。

 

長期保有を原則とし、ハイテク、製薬、日用品、食品、外食など業種を分けて10社ほどに投資。時代の風向きが変われば銘柄を入れ替えていきます。言わば自分だけの投資信託のようなもので、ファンドマネージャーは私。

 

アメリカ株は四半期ごとに配当が出るので、とりあえずドル建てMMFに入れて旅行に必要な分だけ日本円で引き出して使っています。先月の上海旅行の資金にもなりました。今年は職場とも言えるウォール街にも行ってみる予定です。信じられないほど物価が高いらしいニューヨークですが、アメリカ株で儲けたお金をアメリカに還元するのです。

 

旅に出ると思わぬところに投資のヒントが転がっているものですが、最大の恩人は外国株への投資に気づかせてくれたマイクです。2012年、カウチサーフィンで初めてホストしたイギリス人です。

退職後の株式投資先として日本を考え、実際にどうなのか自分の目で確かめるために来日したマイク。「投資は大成功でかなりのリターンを得た」というお礼のメールが届きました。その後はどうしたのかわかりませんが、円がここまで安くなっても、当時の日経平均株価は1万円前後ですから、保有を続けていたとしてもかなりのプラスを維持しているはずです。

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ランダム・ウォークなのは株式市場だけでなく、人生そのもの。確実にうまくいく方法なんて誰も知りませんが、とにかく歩き続けていけば何かが起こります。

カウチサーフィンをやっていた頃は「初対面の外国人を自宅に泊めるなんて」とあきれられたものですが、ランダム・ウォークで世界を巡るのは楽しくて有益だと気付かされた体験でした。

マーケットはおもしろい

資産のほとんどは米ドルで運用していますが、2024年から始まった新NISAの成長投資枠は日本株で埋めています。せっかく政府が作ってくれた制度ですから。そして、中途半端な軍備よりも、経済力のほうが国を守るのに有効ではないかと考えています。

 

最近気になったのは、アメリカの大手運用会社であるバンガード社が日本国債の買い入れを停止したというニュースです。

news.yahoo.co.jp

 

このニュースの意味を知りたくて、日本国債の入門書である服部孝洋『はじめての日本国債』を読んでみました。

 

 

経済の基礎知識もないままに、よくもここまでやってきたとあきれるほど、知らなかったことが丁寧に解説されています。

 

最も印象に残ったのは、「日銀にとって通貨の価値が下がることほど恥ずかしいことはない」という一文。円安とは、通貨に対する信認、ひいては日銀に対する信頼が揺らいでいることだから。円安になればなるほど私腹が肥える私は恥じ入るばかりです。

 

国債は満期と利回りがあらかじめ決められており元本割れのリスクはありませんが、激しい通貨安やインフレによって国債そのものの価値が下がります。トルコ国債の利回りが30%ほどもあるのは、それだけ高金利にしないと買い手がいないからです。日本国債の利回りが上がったと聞くと、不安になります。

 

日本国債は国が発行し、証券会社や銀行が購入し、個人に販売します。

プロのトレーダーは(国債の)マーケットを作るために在庫を持たなければならない。普通の投資家だったら、マーケットの先行きが読めないのなら、一切投資をしないという選択肢もありえるが、証券会社はすべての在庫を売却するわけにはいかない。

この一節を読んで、金融業界に進まなくてよかったと改めて思いました。相場の才能があるような気がして、プロのトレーダーという道もあったかと夢想したのですが、個人投資家だからここまでやってこれたのです。それに、個別株の売買はタイミングがすべてで、ほとんど運に左右されます。

 

国債ビジネスは最高の知的ゲーム。金融政策や国際情勢、投資家の行動を読み、自分なりに予測を立てて市場に向き合い、それが損益というはっきりした形で成果を感じ取る。マーケットはおもしろい。

大いに共感。アマチュアでもマーケットはおもしろい。

深夜にネット証券でニューヨーク市場の口座を開くと、凄まじいスピードで変わっていく数字が、マーケットを巡る血流のように見えてきます。私のお金もこうして休みなく世界を巡っているのです。どこに流すかを決めたのは私。これほどおもしろいことがほかにあるでしょうか。

 

時々「投資をやってみたいのですが」という相談を受けますが、それに対しては「単純なアドバイスはできないという事実を告げる」べきだとあります。不親切だと思われるかもしれませんが、最も誠実なアドバイスです。

そして、自分の大切な資金を運用するなら、自分で学ぶしかありません。損失との付き合い方についても、秀逸な解説が書かれています。

リスクを取ったら、損をする可能性を受け入れなければならない。損失した際の納得感は、運用の意思決定をする際、自分がどれくらい主体的に勉強したかによる。あまり勉強もせずに投資信託を購入して損失をした場合、大きな後悔につながりかねない。

 

直感と連想力を頼りにマーケットを歩いてきた私ですが、百戦連勝ではありません。損切りできてこそ一人前。「戒め銘柄」があるからこそ、今の私があります。

uranai8.jp

 

上海の金融街。金融とは「資金の融通」、お金のない人とある人をつなげること。共産主義国家であっても、金融なくては社会が成り立たないのです。

 

上海証券市場も興味深かったのですが、ホテル近くの「小商品市場」は大きなビルの中に小さな店がぎっしりと並び、見て歩くだけでも楽しめました。サンリオのドロップシールもたくさん売っていたので、小中学生のお嬢さんがいる知り合いのために購入。大量に仕入れてメルカリで売れば儲かるでしょう。安く買って高く売るのはマーケットの基本です。

 

お金の風景を見に行こう

円安により日本人はあまり海外に行かなくなったと報じられています。パスポートの保有率も約17パーセントと諸外国と比べても低い状況です。

 

私の場合は、加齢により海外に行けなくなる日がやってきます。シニア向けの至れり尽くせりのパックツアーもありますが、自分の体や頭を使って現地と直接対峙する旅にしか興味がありません。

 

本業だったライター業はほぼ引退状態で、収入のほとんどはアメリカ株の配当となってしまったこともあり、今年の海外の旅はのテーマは「お金」です。

 

1月の上海の旅でまず向かったのが、証券取引所

香港上海銀行と同じく風水を意識した設計。よく言われるように、景気の「気」は気分の「気」。気の巡りが滞ると、お金の巡りも悪くなります。

 

共産主義なのに証券市場があるのは不思議ですが、1987年から株式市場を開設し「社会主義市場経済」という独自のシステムを作り上げているのです。

 

ブル(雄牛)像の写真を撮りたくて、警備の人にスマホの画像を見せながら聞くと、場所を教えてくれました。取引場は見学できませんが、建物1階には自由に入れます。

角を下から上へと突き上げる雄牛が上げ相場の象徴なのは西側と同じです。反対の下げ相場は前足を上から下へ振り下ろすベア(熊)。市場関係者らしき人々はスーツの肩に赤い布をかけていました。先が読めない相場に立ち向かう闘牛士のような存在でしょうか。

 

上海最古のホテルを改装した証券博物館。中国の市場取引の歴史が展示されています。予約不要で入場無料。国を挙げて証券市場を育て維持しようという意気込みが感じられます。

中国本土の株式市場に興味があるものの、中央政府の決定一つで外国人投資家の立場が変わるリスクがありそうで手を出せません。

 

そして、上海で見るべきなのは証券取引所ではなく実際のお金のやり取り。現金を一切排除した世界です。

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現金を使わず、すべてのやりとりが電子化されると、脱税や裏帳簿もなくなります。

帰国後、健康ランドの露天風呂で地上波のバラエティ番組を見ていたら、飲食店の脱税を摘発する国税調査員が棚やカーペットの裏側まで調べていました。勧善懲悪で庶民が喝采する筋書きなのでしょうが、中国の人にしたら時代劇に見えるのではないでしょうか。

 

こちらは昨年末に旅した台北の雙城街夜市。名前は夜市だけど昼もやっている屋台もあります。中国本土とは異なり、現金取引。

台湾元(ドル)のコインは1元、5元、10元、50元の5種類で1元は日本円で約5円。お釣りが出ないようにぴったり払ったつもりが、屋台の女性が強い口調で何か言ってきました。足りなかったのかとあわてて紙幣を出そうとしたら、5元のつもりで50元を出していたのです。外国人だから黙って受け取ればそのままなのに「うちはそんな商売はしない」というお店の気概を感じました。ちょっとした出来事ですが、強く印象に残りました。

 

実業家で著述家でもあった松岡正剛によると、そもそも風景とは「景気」の強いすぐれた場所のことを言うそうです。景気とは、景色のもっているスピリットやエネルギーのこと。国の好き嫌いといったイメージに経済というフィルターを入れると、目に入る風景は異なってきます。

そして、同じ国に行っても時代が違えば風景はがらりと変わります。今のところ世界の三大基軸通貨はドル、ユーロ、円とされていますが、これからどうなってしまうのでしょうか。世界の風景を見て回りながら、自分なりの投資のスタイルを探ることにします。