翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年秋、スペイン巡礼(フランス人の道)。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。おかげさまで重版になりました。

カミーノの占星術師

オリソンの山小屋からロンセンバーリェスと次の街まで韓国人のスンニと歩きました。一般的なモデルケースよりかなりゆっくりしたペースです。7週間もかけるのにサンティアゴデコンポステーラを目指さないというとびっくりされますが、スンニは3ヶ月も休暇を取り、予定も決めずに歩いています。すでにレオンからサンティアゴデコンポステーラまでは歩いたことがあり、バックパックは3キログラム。「バックパックは肩で背負うのではなく、腰と胸で支えると楽になる」とアドバイスをもらいました。

一緒に歩くといっても微妙に速度が違いますから、付かず離れず、途中の休憩や宿で合流します。韓国人なのにBTSのメンバーは3人しか知らないというスンニ。「日本にはもっとすごいグループがたくさんいるのに」と言われましたが、このあたりは国を越えた人それぞれの好みでしょう。

 

スンニと3日間同じ宿に泊まり、次の宿は別の街をそれぞれ予約していたのでいったん別れました。巡礼路からちょっと外れた小さな宿で、宿泊客は8人。ドイツ、フランス、スコットランドポーランドアメリカと私以外は全員欧米人で、年齢層は高め。四国のお遍路と熊野古道を何週間もかけて歩いたというシニアもいました。お遍路さんの白衣を着て歩き、各地でのお接待を受けたとのこと。巡礼は宗教というより旅行とエクササイズを兼ねた趣味として定着してるようです。

 

さて、歩いているうちに目に入ったフードトラック。コーヒーがあります。まだ朝早くてお客さんが誰もいないから、一番客になろうと近づいてみると、コーヒーは無料で主体は占星術と瞑想のセッションでした! これは受けるしかない。

 

「看板の写真、撮ってもいい?」

「もちろん。僕も入ったほうがいいんじゃない?」

 

鑑定スペースはこんな感じ。私も地元のお祭りでこんな占いの屋台を出したんだとなつかしくなりました。お代は寄付制ということで10ユーロを籠に入れました。普段は大学院でエンジニアを学びつつ障害児教育に携わっていて、占いは趣味の一種だそうです。世界中どこへ行っても同類の人に引き寄せられるものなんでしょうか。

 

生年月日と出生地を伝えるとヨーロッパ時間に変換してチャートを出してくれました。

「ああ、君は想像力が強くて夢の中にいるような人だね」

「だから、この道(カミーノ)を歩いているわけ。仏教徒からすると、この道自体が夢でできあがっているようなものだから」

アドバイスとしては、夢の中から現実世界に着地するために、小さなものやプロセスに目を向けるといい。たとえば、今飲んでいるコーヒー。味や香り、カップを手にした触感など。そして日常生活ではルーティンを決めて、順番通りにやる(put things in order)。なるべく自然の中に身を置くように。そのためにも今回のカミーノはとても意義がある。キリスト教の教義より、足の裏で踏みしめる大地、風にそよぐ木々を感じよう…。

 

大層な決意をして巡礼に出たわけですが、結局は同じところをぐるぐる回って、似たような話をしています。易の教えの不易と変易。変わらないけれど変わっていく。それを実感するためにスペインまで来なくてはいけなかったのでしょう。