翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

小津安二郎

お金の流れを止めるな 石井妙子『おそめー伝説の銀座マダム』

『女帝 小池百合子』が興味深くて、ウラナイ8のメンバーと読み会を開いたりしました。 bob0524.hatenablog.com 小津映画を一通り観ているので、『原節子の真実』もおもしろく読めました。 bob0524.hatenablog.com 石井妙子の他の著書も読んでみたいと手に取…

占い師は体験していないことを占えるか

メールが普及していなかった時代、女性誌のライターとして毎日のように出版社に出入りしていました。 ネタ探しと締め切りに追われる報道系に対して、コスメやファッション担当のライターは見た目も華やか。たしかに身なりに構わないようなずぼらなライターに…

丙午の美学『原節子の真実』

『女帝 小池百合子』がおもしろくて一気に読みました。ノンフィクションということになっていますが、著者の石井妙子による物語のようでもあります。 ウラナイ8のメンバーも興味を持ち、東西占術の研究会を開きました。著者に対してはメンバーそれぞれに思う…

カズオ・イシグロの生誕地を訪ねて

今年最後のJAL「どこかにマイル」で長崎へ。 4つの候補地は、那覇・宮古島・大分・長崎。寒さが厳しくなってきたので沖縄に行くのもいいし、大分は温泉天国。長崎にもずっと行ってみたいと願っていたので、どれになっても最高という組み合わせでした。 …

マギーの『東京物語』

イタリア人のマギーが我が家に滞在したものの、週のうち4日は、ほぼ放置状態でした。 「本業と日本語学校が忙しくて、ほとんど相手できないから。食事もなし。外で食べるなり、コンビニで買うなりして」と伝えておきました。 カウチサーフィンやホームステ…

王義之の結婚と『秋刀魚の味』

欲深いのはしかたがないけれど、あさましいことはしたくない。 bob0524.hatenablog.com 服やバッグ、靴と欲しい物がいっぱいでも、一番欲しいのは「幸せな結婚」という女性が大半のはず。「こんな結婚がしたい」と公言して自ら動き回ったほうがいいのか、流…

『東京物語』の熱海、そしてフィンランド

3月の末にフィンランド人のヘンリク君と訪れた熱海。 「日本人はシャイで秘密主義のところがあるのに、どうして見知らぬ人と裸になって温泉に入るのか不思議」という外国人学生もいますが、フィンランドはサウナ大国。サウナのある家庭も多いし、公共のサウ…

ディランが歌い、イシグロが書く

カズオ・イシグロを読むようになったのは、彼がボブ・ディランとザ・バンドの大ファンだと知ったから。 ディランだけでなく、ザ・バンドを並べたところにぐっときました。フォークからロックに転向したディランが大ブーイングを浴びていた時代、バックバンド…

下関で金子みすゞと田中絹代を思う

JALの「どこかにマイル」でたまたま北九州に行くことになり、思い出に残る旅ができました。 一泊目の下関をすっかり気に入りました。本州の果てであり、九州はすぐそこ。韓国も身近です。海の幸もおいしいし、しばらく暮らしたいと思うほどでした。 そし…

カウリスマキ監督の引退

10代の私を導いたのがボブ・ディランなら、中年期はアキ・カウリスマキです。西洋かぶれでありながら、西洋のコンプレックスもあり、対等の立場で外国人と友達になることなんてあるのだろうかと思ったものですそんな時、フィンランド人のアキ・カウリスマキ…

人生はすべて縁起で回っていく

映画『Buddhist 今を生きようとする人たち』の上映会後、監督の後藤サヤカ氏とジャーナリストの佐々木俊尚氏のトークショーがありました。後藤監督は、この映画を撮ろうとして撮ったのではなく、三浦明利氏の記録映像を撮っているうちに、次から次へと仏教関…

転倒注意

今月のNHKラジオ英会話のテーマは、LA Story(ロサンゼルス物語)。テキストの前書きによると、小津安二郎の『東京物語』のアメリカ版だそうです。アリゾナ州フェニックスで一人暮らしをする老いた父とロサンゼルス在住の娘夫婦が登場します。 父が転倒して…

買い物断食その後

何度も断食をしています。 食べ物だけでなく、買い物も。きっかけは、フィンランド映画『365日のシンプルライフ』。 d.hatena.ne.jp「食品と本、音楽、消耗品、人への贈り物以外は買い物をしない」と、2014年の秋に始めたのですが、365日は続かず、春に挫折…

アンネと観る『生まれてはみたけれど』

連休にフィンランド人のアンネが我が家に1週間滞在しましたが、私は本業のライターと副業の日本語教師でてんてこ舞い。アンネからはコンサートやイベントに一緒に行こうと誘われましたが、「悪いけれど、仕事が手一杯なので無理。一人で自由にどこでも行っ…

ロバート・デニーロに学ぶ老後の生き方

ロバート・デニーロといえば、私にとっては「ゴッドファーザーpart2」。 反社会的なイメージが強かったのに、高齢者の役をうまく演じているのにびっくりしたのが「みんな元気」です。 この映画を観たのは、小津安二郎の「東京物語」のオマージュだから。 妻…

理想の死

前回に続いて「コレラの時代の愛」について。フェルミーナ・ダーサの夫、ウルビーノ博士は医師です。 小説の冒頭は、ウルビーノ博士の友人、ジェレミア・ド・サン・タムールが自殺した現場。「60になったら、どんなことがあっても自らの命を絶つ」と恋人に宣…

「七人の侍」と「荒野の七人」

日本語教師養成講座で習った項目の一つに「数詞」があります。 たとえば、ハ行の「杯、匹、本」の前に1、6、8、10がくると、数字の最後が促音となり、pの音が加わって「いっぱい」「ろっぴき」「はっぽん」となります。9はハ行、カ行(個、階…)、サ行…

「東京物語」と「日の名残り」

クリストファーさんとサリーさんのイイダ夫妻と半日過ごした時、「ロスト・イン・トランスレーション」から映画の話になりました。フィンランド人に、よく「東京物語」について話します。「あなたの国のアキ・カウリスマキは、『東京物語』を観て、映画監督…

言葉で伝わること、伝わらないこと

フィンランドの18歳、ヘンリク君は日本にもかなり慣れてきました。 最初は3週間のホームステイは長いと思ったのですが、始まってしまうとあっという間に毎日が過ぎていきます。ヘンリク君は日本語を勉強しに来ているので、学校からホストファミリーに「日本…

ジュネーブからの風

2年前にはフィンランド人の旅人を次々とホストしたのですが、このところはずっとカウチサーフィンから遠ざかっていました。リクエストは届きます。でも、あまり魅力的だと思えないゲストをわざわざ泊める気にはなりません。特別なおもてなしをするわけでは…

旅先で垣間見る人生 2015

初めての地を旅するのも刺激的ですが、同じところに何度も行くのも楽しいものです。 観光スポットを駆け足で回るのではなく、その土地に暮らす人の人生を垣間見るような体験ができます。 前回の島根の旅でもそう感じました。d.hatena.ne.jp島根の温泉津(ゆ…

他人と比べない生き方

易では冬至、四柱推命や九星気学では立春が年の切り替わり。 一般的には1月1日が新年の始まりで、その都度、「新しい1年の抱負を考えてみたりします。個人的には、一年を占う年筮を立てる冬至が最も重要な区切りとなっています。年度が改まる4月も、新ス…

現世は束の間の旅のようなもの

須賀敦子を再読しています。今年はイタリアに行きたいと思ったのですが、どうも無理なようなので、須賀敦子の描くイタリアを楽しんでいます。最初の著作『ミラノ 霧の風景』が出版されたのは1990年。作家の関川夏央が「須賀敦子はほとんど登場した瞬間から大…

楽しく生きるためにも、英語は必要

映画『白夜のタンゴ』を観ました。あわただしいムードの年末ではなく、観るなら年初と決めて、渋谷のユーロスペースに出かけました。実に楽しい映画でした。なつかしいフィンランドの湖と森のシーンに夢中になり、あっというまに時間が過ぎました。 (しかし…

還暦(60歳)で姥捨て山

来年の秋に優春翠と花巻に行くことになりました。優春翠が関東と島根の二拠点生活を始めたこともあり、二人で遠出をしたり私が島根に遊びに行く計画は早めに日程を決めることにしています。『赤毛のアン』にも、こんなセリフがあります。 Looking forward to…

大人になんてならなくていい「みうらじゅん・根本敬トークイベント」in高円寺

毎週、NHK『笑う洋楽展』を楽しみにしています。「いつも心にディランと仏教を」 d.hatena.ne.jp高円寺フェス2014で、みうらじゅんと根本敬のトークイベントがあると聞き、いそいそと出かけてきました。みうらじゅんには、「高円寺は日本のインド」という名…

本当に新しいことはいつまでも古くならない

入棺体験で、生と死はそれほどかけ離れているものではなく、つながっているものだと感じるようになりました。 新しいことと古いことも正反対のようでいて、新しいものは誕生した瞬間から古くなっていきます。今年のディラン先生の誕生日(5月22日)にNHK…

人は皆、誰かのために生きたいと願う

アキ・カウリスマキに影響されて、小津安二郎の作品を次々と観ています。『長屋紳士録』は1947年公開。戦後の焼け野原が舞台です。あの頃映画 松竹DVDコレクション 「長屋紳士録」出版社/メーカー: 松竹発売日: 2013/07/06メディア: DVDこの商品を含むブログ…

いつまでも続く長い放課後

小津安二郎のドラマ『青春放課後』を先日、NHKテレビで観ました。 最初に放送されたのは、1963(昭和38)年。小津は里見紝と共同で脚本を手がけてています。 映像は現存していないとされていましたが、約50年ぶりに見つかり、再放送されたのです。日本映…

「私の墓には『生れてはみたけれど』と刻みます」

フィンランド旅行の準備として、アキ・カウリスマキと宮崎駿、そして小津安二郎の作品を観ています。「カウリスマキ、小津を語る」の最後はこう締めくくられます。 The epitaph on my grave will be "I was born, but". (私の墓碑銘は「生れてはみたけれど…