ボゴタで現地の日本人ガイドと合流して空路でバランキージャへ。コロンビアの旅行業界で働く唯一の日本人です。
ガルシア=マルケスが小・中学校時代を過ごし、ジャーナリストとして働いた街です。母のルイーサ・サンティアガが「実家を売るためにアラカタカまで一緒に行ってほしい」と頼んだことから『百年の孤独』の着想が生まれました。
バランキージャからアラカタカまで専用車で移動。若ければバスを乗り継いで行ったかもしれませんが、かなりむずかしそう。
マクダレナ川沿いのある一画は最貧困地区で、余所者が足を踏み入れるのは非常に危険。20年ほど前は道中に武装した反政府ゲリラも出没していたようですが、現金欲しさにベネズエラから流れ込んだ難民がナタみたいな凶器を持って窓ガラスを割って襲ってくるという物騒な話を聞かされました。韓国映画「ボゴタ 彷徨の地」の世界。「そんな奴は轢き殺してしまえばいいんだ」とのことですが、そんな目には遭いたくないものです。
『百年の孤独』でアラカタカは「マコンド」という地名となります。近くのバナナプランテーションの名前がマコンドで、ガルシア=マルケスが音の響きを気に入ったのです。

「マコンドのバナナプランテーションが博物館になっているらしいので、アラカタカの前に寄ってみませんか」とガイドさん。
幹線道路を離れてバナナ畑の脇の道に入ると、とんでもない悪路で車が激しく上下に揺れます。ガルシア=マルケスをテーマにした旅のアテンドはガイドさんにとって初めてで、行ったことのない場所。運転手さんも知らないそうで、Googleマップもあまり当てになりません。というのも、マコンドという地名があちこちに表示されるのです。運転手さんは窓を開けて街の人に聞くのですが、人によって指差す方向が違います。まさにガルシア・マルケスの小説に入り込んだような気分。新天地を目指すホセ・アルカディオとウルスラあるいは『迷宮の将軍』に描かれたシモン・ボリバルです。
結局、この日はバナナ畑の凸凹道をぐるぐるまわっただけであきらめて、アラカタカへ。

街の至るところにガルシア=マルケスがいます。そして、生家は博物館に。太宰治の金木町及び斜陽館のコロンビア版。

庭には、ホセ・アルカディアを縛り付けた木が。
ここで10代の女の子たちに声をかけられます。日本人だというと大興奮。アニメやマンガのファンなんでしょう。片言の日本語を話すのですが英語は出てきません。
その日の夜、一杯飲もうと外に出たら彼女たちと再会。一緒に何か飲もうと目の前のお店に入りました。
スマホの翻訳アプリで会話したところ、名前はアシュレイとダニエラ。アラカタカの住民です。彼女たちはアイスクリームで私はビール。コロンビアは物価が安く、地元の人が行くような店ではビールが200円ほどです。
彼女たちが帰った後、ビールをおかわり。店の女主人が翻訳アプリを貸しなさいとジェスチャーで示し、スペイン語で何か言います。
「初めて会った人を簡単に信じてはいけません」という日本語訳。
初めてじゃなくて、昼間に博物館で会って再会したからちょっと感動したんです。そうした言葉をぐっと飲みこんで、素直にアドバイスに感謝しました。彼女の目にはコロンビアを甘く見ている軽薄な外国人旅行者に映ったのでしょう。

家族経営らしく、小学生ぐらいの男の子も手伝っていました。真ん中が私にアドバイスしてくれた女性。
道に迷いつつ、ついにたどり着いたアラカタカで念願のガルシア・マルケスの生家へ。現地の人と交流していい気になっていたら、辛口アドバイス。小説の1ページでは書ききれない濃密な1日でした。