先日の飛騨高山と仙台のツアーを選んだ決め手は、最終日の宿が秋保温泉の佐勘だったから。
佐勘には「神は細部に宿る」という週末の夜だけ営業するカフェがあります。今回は日曜日だったので、行くことができました。
オープンの午後9時過ぎ、他にお客さんはいないくて私たち夫婦だけでした。ここに来たかったのは、レコードコレクションから好きな曲を選んでかけてもらえるから。アメリカの50年代から70年代の曲があるらしいので大いに期待しました。
男性一人で切り盛りされているので、まずはコーヒーを注文してからファイルを開いてゆっくり曲を選びました。残念ながらボブ・ディランとザ・バンドはなかったのでアニマルズの「朝日のあたる家」。

ボブ・ディランのデビューアルバムにも入っている曲で、映画「ア・コンプリート・アンノウン」、「PERFECT DAYS」にも使われています。
原曲は娼婦に身を落とした女性が半生を振り返るというアメリカのフォークソングですが、アニマルズは不良少年に変えてロックにアレンジ。イギリスだけでなくアメリカに逆輸入されて大ヒットしました。
当たり前のように歌っていた古いフォークソングが、イギリスで最先端のエレクトリック・サウンドに生まれ変わり、自国のヒットチャートのトップに。「そうか、この手があったか!」と衝撃を受けたディランがフォークからロックへ転身したのは想像に難くありません。
「神は細部に宿る」でコーヒーを淹れてくれた男性は、キャリアが長そう。
2023年8月に仙台市で開催されたG7サミットは佐勘がメイン会場だったので、その当時からお勤めしていたのか聞いてみましたところ、そんなに長く働いていないとのこと。
まったく違う業種で定年まで勤め、しばらくは家でのんびりしていたけれど、奥さんに鬱陶しがられて再び働くことに。
午後は1階のラウンジカフェ、夜は館内ツアーのガイドとワインバー、週末の夜だけ「神は細部に宿る」と大活躍。前職と異なり、お客様に直接喜んでもらえる仕事が楽しくてしかたがないそうです。
私と同じぐらいの年かと思ったら、72歳とのこと! やはり高齢者も社会とつながるために何か仕事をしたほうがいいのでしょう。単なるスキマバイトでは、この男性のような充実感は味わえないだろうし、どうしたものか。なつかしい曲のレコードを次々とかけてもらいながら、今後の身の振り方を考えてしまいました。