翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年秋、スペイン巡礼(フランス人の道)。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。おかげさまで重版になりました。

ディランが歌い、イシグロが書く

カズオ・イシグロを読むようになったのは、彼がボブ・ディランザ・バンドの大ファンだと知ったから。

 

ディランだけでなく、ザ・バンドを並べたところにぐっときました。フォークからロックに転向したディランが大ブーイングを浴びていた時代、バックバンドを務めたのがザ・バンドです。

ザ・バンド」というバンド名は、ディランとウッドストックに隠棲していた頃、地元民から「ボブ・ディランと一緒にいるバンド(ザ・バンド)」と呼ばれたことに由来します。私はザ・バンドと一緒にやっていた頃のディランの曲が一番好きです。

 

ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロは「ボブ・ディランの次に受賞なんてすばらしい」と喜んだとは、作家よりミュージシャンになりたかったというのは本当だったのでしょう。

 

日の名残り』を読んだとき、真っ先にボブ・ディランの「ガッタ・サーヴ・サムバディ Gotta serve somebody」が浮かびました。

 


Gotta Serve Somebody Bob Dylan

 

「大使、世界チャンピオン、社交界の名士、実業家、泥棒、ドクター、チーフ…、あなたが何であろうが、誰かに仕えなければいけない」という歌詞です。

これでもかとばかりに、単語を羅列してくるディラン節。

 

サビのフレーズ。

 

Well, it may be the devil or it may be the Lord
But you're gonna have to serve somebody.
そう、悪魔かもしれないし、神かもしれない
しかし、あなたは誰かに仕えなければならない

 

 『日の名残り』の主人公スティーヴンスは執事でしたが、スティーヴンスの主人のダーリントン卿にしても、国に仕えようという意識があったからこそ、結果的に悪魔に仕えることになったわけです。

 

どんな立場であろうと、生きている限り、誰かに仕えなければいけないと、ディランが歌い、イシグロが書く。

 

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いかにも執事がいそうなイギリス様式の旧門司三井倶楽部。現在、内部は観光案内所とレストランになっています。 

 

カズオ・イシグロの『日の名残り』は小津安二郎の映画からも影響を受けています。

 

bob0524.hatenablog.com

 

すべての 名作はどこかでつながっていくものなのでしょう。

 

そしてカズオ・イシグロの『私を離さないで』。

作中に出てくる歌詞とは違うし、雰囲気もまった異なりますが、ディランとバエズのデュエット"Never Let Me Go"をつい連想してしまいます。おなじみの投げやりな歌い方のディランに、バエズが圧倒的な歌唱力で声をかぶせています。

 


BD-RTR01 (Never Let Me Go)