出発の日。まず成田からヘルシンキに飛び、パリに向かいます。
夫が休みを取って見送りに来てくれました。成田山新勝寺で旅の無事を祈り、空港近くの空の湯で温泉、サウナ、外気浴を堪能。日本を離れるのが嫌になりました。
直行便だとパリに夜の到着になってしまうので、あえてコードシェアのフィンエアーを選びました。遅い時間なのでJALのサクララウンジはガラガラ。アルコール飲み放題ですが、酔っ払うとパスポートをなくしそうなので自粛。海外一人旅は前回のフィンランドからかなり時間があいています。バックパッキングの旅となるとほぼ30年ぶり。ここまで来て、無謀な計画のような気がしてきます。
気を鎮めるために、ザ・バンドのロビー・ロバートソンの思い出話。
先日、訃報を耳にしました。ザ・バンドを解散するのは「ロックミュージシャンは若死にするからだ」と語っていましたが、80歳まで生きたので解散は正解だったのかも。
ザ・バンドの代表曲「ザ・ウェイト」は、今回の巡礼のテーマ曲です。
「ナザレ」「モーゼス」「ルカ」など聖書の言葉が多く使われた難解な歌詞ですが、作詞作曲を担当したロビーは「みんな考えすぎだ、この曲に深い意味はない」と説明しています。まさに今回のスペイン巡礼と同じ。キリスト教の聖地を目指すと見せかけ、深い意味はあまりないのです。
映画『ラスト・ワルツ』ではゴスペルのザ・ステイプル・シンガーズと共演。
歌い出しの一節。よろよろと歩いて目的地の村について、アルベルゲに着き、その日のベッドを確保した時にこんな気持ちになるのでしょうか。
I pulled into Nazareth, was feeling about half past dead
ナザレまで来て、半分死にかけた気分だ
I just need some place where I can lay my head
ただ横になれる場所が必要だ
こちらは2019年、チャリティプロジェクトのためにロビーが制作したミュージックビデオ。国際色豊かなミュージシャンが参加しています。いきなりリンゴ・スターが登場し「ロビー、どのキーだ?」。音楽プロデューサーとしてのロビーの手腕が光るビデオです。
今回の旅は荷物を少しでも少なくするために携帯用音楽プレイヤーは持ってきていません。個室ではないアルベルゲでは、音楽を聴くこともできませんが、ザ・ウェイトはいつも心の中で鳴り響くでしょう。
まだ旅は始まってもいないけれど、多くを望まず、折々に死者を偲びながら歩けたらと思います。