近所の映画館で、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル(CCR)を観ました。1970年のロイヤル・アルバート・ホールのコンサート映像が50年ぶりに発掘され、映画化されたのです。
そしてメンバー全員が生まれも育ちもカリフォルニアで、南部に一度も行ったことがないというのに、南部のカントリーロックを完璧に再現しています。当時、南部の人々はCCRの曲を聴き黒人のバンドだと思い込んでいたら、白人だったのでびっくりしたそうです。
私の好きなザ・バンドも南部風のロックですが、ドラムのリヴォン・ヘルムのみが南部人で残りはカナダ人。生まれた場所は変えられないけれど、好きだという気持ちがあればどこの音楽だって演奏していいのです。
映画館に到着すると、初老の男性たちが上映を待っていました。リアルタイムのCCRのファンなら70代でしょう。
映画の予告編。
ジョン・フォガティが高校の同級生と3人でバンドを結成し、兄のトムも加わります。音楽活動に打ち込もうと思ったタイミングで徴兵され、2年間の兵役を務めました。
私が好きな二曲はいずれも雨をテーマにしたもの。時代背景からベトナムにアメリカ軍が落とす爆撃を雨にたとえた「Who'll stop the rain(誰が雨を止めるのか)」、バンドの人間関係が崩れて解散に向かっていく状況を歌った「Have you seen the rain(雨を見たかい)」。ジョン・フォガティの独特な声が胸に迫ってきます。
ジョン・フォガティ、ロイヤル・アルバート・ホールであろうとチェックのシャツなのがとてもいい! コンサート直前にビートルズの解散が発表され、動揺するロンドン市民からブーイングされたらどうしようと不安になっていましたが、同じ場所で「ユダ(裏切者)!」と罵倒されても動じなかったボブ・ディランの胆力を改めて実感しました。
映画ではCCRのメンバーが「ロックンロールがこれからどうなるかわからないけれど、15年後にロックを演奏する人が真摯に向き合ってくれていればそれでいい」といった意味の発言をしました。15年後どころか50年後に東洋の片隅で食い入るように観ているファンがいます!
そのとき、遅れて入る爺さんが。静かに座ればいいものをスクリーンの前を横切って、どの席が空いているのかを確認します。最前列の一番端に座ったものの、荷物やコートをごそごそと探っています。そしてスクリーンが見にくかったのか後ろの席に移動して、そこでもまた落ち着かず再び移動して元の席へ。観客が10人ほどしかいなかったのでかなり目立ちました。
ADHDの爺さん? ストーリーを追う映画ではないし、スクリーン上ではノリノリで踊り出す観客も映し出されているし、しかたがないか。
エンドロールが終わって明るくなり席を立とうとしたら、動き回っていた爺さんに劇場スタッフが駆け寄りました。観客からクレームが寄せられたのかもしれません。
「すみません、認知症に加えて精神的な病も患っているもので」という爺さん。
認知症でも一人で映画館に来れるとは。たしかに、この映画館はネット予約もできますが、マイナーな映画が多く満席になることは少ないので全席自由席。窓口で現金払いで入場できます。なぜCCRの映画を選んだのか謎ですが、熱心なファンにとっては腹立たしいことでしょう。
下種な好奇心からゆっくり身支度しながら会話を盗み聞きしたのですが、爺さんの言い分はますます支離滅裂になっていきます。劇場側としても出禁にすべきかどうか、対応がむすかしいところでしょう。
まったく動けなくなって施設に収容されるなら、まだましです。中途半端にわけがわからなくなったまま出歩く高齢者になったらどうしよう。50年ぶりのCCRを堪能しましたが、今後の身の振り方を考えさせられる映画鑑賞でした。
スペイン巡礼では晴れの日ばかりではありませんでした。。雨が降り出したら嫌だなと思いつつ歩いた道。