お金とアルコールという私の二大関心事であり心配事をテーマにしたアメリカ映画『To Leslie トゥ・レスリー』、公開が今週末となったのであわてて見に行きました。そのうちネットフリックスかアマゾンでと思っていると見逃してしまうことが多いのです。
舞台はテキサス。シングルマザーのレスリーが宝くじで19万ドルを当ててテレビのインタビューに答えているシーンから始まります。1ドル140円だと2660万円。日本の宝くじのCMでは何億円単位が連呼されていますから、取材されるほどの大金なのかと思ってしまいます。
アメリカでは、贈収賄を防ぐために宝くじ高額当選者を実名で報じなければいけないそうですが、金目当ての親戚縁者がどっと寄ってくるのではないでしょうか。
映画はすぐに数年後のシーンに切り替わって、レスリーは酒浸りで一文無しに。息子とも離れて暮らしています。
レスリーを演じるアンドレア・ライズボローの迫真の演技。アメリカ南部にいそうなアルコール依存症の中年女性がリアルです。飲み過ぎるのはよくないと背筋が凍る思いでした。アメリカ人ではなくイギリス人で王立演劇学校出身というキャリアを知ってびっくりしましたが、これぞ女優! 低予算のマイナーな映画ながらじわじわと評判が広がりアカデミー賞主演女優候補に選ばれたのもわかります。
ストーリーはこの映画の脚本担当者の実話。宝くじに当たるのは、とんでもない幸運のようでいて大きな落とし穴であることがよくわかります。
富裕層が宝くじに当たったら、投資に組み入れてさらに豊かになります。レスリーだって、19万ドルを高配当の安定した株式に投資してパートタイム程度の仕事をすれば息子と二人の暮らしは十分成り立ったはずです。
しかし、宝くじは別名「貧者の税金」と呼ばれているように、マネーリテラシーに欠ける層が一縷の望みをかけて買うものです。長期投資をしようなんて人は宝くじに手を出しません。
そして、宝くじだけではなく遺産相続で思わぬお金が入った人が、浪費癖がついて破産したという話もよく聞きます。人間は自分の器以上のお金は持てないのでしょう。
レスリーは「お酒で大金を溶かし、息子を捨てた女」として街の人からも軽蔑されます。思いきって街の人と賞金を分けていたら生きやすかったのではないかと想像しました。お金を人的財産に変えるのです。
でも、ムーミン・コミックでは、それもうまくいかないという話があります。
スノークのお嬢さんが軽い気持ちで買ったサッカーくじが大当たりして、金貨の袋が山のように転がり込んできます。隣人たちに袋を配るのですが、かえって関係が悪くなります。施しを受けているような屈辱を感じるからです。そこで、ムーミンママはある夜、金貨の袋すべてを谷に投げ込みます。「誰だって金貨を恵まれるのはいやだけど、物を回収するのは好きなはず」というのがママの考えです。
このあたり、高負担高福祉の北欧の国民性から生まれたストーリーかもしれません。
昨年、ムーミン・コミックス展で紹介されていました。コミックスにはけっこう辛口の話があります。