翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年秋、スペイン巡礼(フランス人の道)。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。おかげさまで重版になりました。

北原白秋が見た空と日光

7月の旅はJALの「どこかにマイル」。行き先が福岡になったので、柳川を旅することにしました。

柳川に行きたかったのは、北原白秋の生地だから。

東洋占術の陰陽五行、木火土金水は季節や色も司ります。木が春で火が夏、金が秋、水が冬、季節の変わり目が土です。そして木は青、火は赤、土は黄、金は白、水は黒。こうした説明をする時に「青春」という言葉とともに「白秋」を出します。名前をさんざん使わせてもらったのだから、北原白秋ゆかりの場所を訪れるいい機会だと思ったのです。

雨の多い不安定な天気で、宿にひきこもる旅になるかと思ったのですが、時おり青空が見え、柳川名物の川下りも楽しめました。船頭さんはしきりと「白秋先生」の話をして、「この道」や「待ちぼうけ」を歌ってくれました。白秋の誕生日と命日には盛大なお祭りが開かれるそうで、街全体で国民的詩人として白秋に心酔している感じです。

 

19歳で柳川から上京した白秋は数多くの詩で世間に認められたのですが、大きなつまずきがあったのが27歳の時。人妻と道ならぬ恋をして、相手側の夫から姦通罪で訴えられたのです。名声は地に落ち、東京から船で三崎に渡った白秋は死のうとまで考えます。

 

白秋記念館で観た動画で、自死を思いとどまった心の動きが紹介されていました。

死ぬにはあまりにも空が温かく、日光があまりにもまぶしかった。

この一節を知るために柳川まで来たのだと思いました。

 

柳川の旅の道連れにした本が『統合失調症の一族』。読みだしたら止まらなくなったのですが、あまりにも重たい内容に打ちのめされました。好き勝手に生きて来た私ですが、自分の血筋を思うと暗い気持ちになります。精神に変調をきたしがちで、近親者には自殺や未遂、金銭欲の権化、宗教に走ったり結婚を繰り返す者もいます。『統合失調症の一族』に描かれているのは遺伝に抗えない恐ろしさ。これから高齢期に入り体も頭も動かなくなれば、さっさと人生を終わらせたほうが楽だと思うかもしれません。

 

それでも、空の温かさや日光のまぶしさが感じられるうちは大丈夫だと白秋に教えられました。体や頭が自由に動かなくなっても、日が昇れば窓を開けて空を見上げ、四季の移り変わりを感じるような毎日を送りたいものです。

 

柳川の名物は鰻。あちこちに鰻料理の店があります。

 

たれを絡めたご飯に鰻と錦糸卵を載せて蒸すのが柳川風。ごはんにもしっかり味がついています。自然に触れてご飯をおいしく食べているうちは、死のうなんて思わないはずです。