翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年秋、スペイン巡礼(フランス人の道)。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。おかげさまで重版になりました。

ニセコと資本主義

北海道のニセコに行ったのは、日本国内で展開されている資本主義の最前線だから。ラーメンが3000円だとか、時給が低すぎて(他業種時給が高すぎて)介護職員が集まらないなど報じられていますが、自分の目でニセコを見て今後の相場の動きのヒントを得たかったのです。

 

しかし、夏のニセコはオフシーズン。インバウンドの富裕層を目にすることはほとんどありませんでした。

アーバスの運転手さんは地元出身。外国人旅行者が集中する地区の焼き肉店は「冬は最低でも2万円だけど夏はランチを1000円で出している」とのこと。需要と供給によって価格は変動する。資本主義のお手本のようなスポットです。

ツアーでニセコ道の駅に立ち寄り、自由行動の時間があったので観光案内所へ。

「マスコミに報道されている、富裕層のインバウンドの現場を見たいのですが。外国みたいな街並みの比羅夫(ひらふ)を中心に」と相談。

「あれは倶知安(くっちゃん)。ニセコではありません」という意外な返答。下調べして来なかったのが悪いのですが。隣町なので、パンフレットや地図などもないそうですが、親切にもゴンドラの割引券をくれました。

 

公共の交通機関倶知安を回ることはむずかしく、タクシーが少ないので行き帰りのの便を予約しておいたほうがいいとアドバイスされたので、ホテルのフロントでお願いしました。すぐに予約は取れないらしく部屋で待機。別の部屋のお客さんとの相乗りを提案されました。タクシー不足は本当のようです。

 

スキー用のゴンドラは夏も動いており、往復で乗車できます。マウンテンバイクの大会が開かれているので、自転車ごと乗っている人も。富裕層のために特注した大型の豪華ゴンドラに観光案内所でもらった割引券で乗るという庶民感覚あふれる旅。

 

冬は大賑わいの飲食スペースも夏はがらがら。開いていたのはコスタコーヒーのみ。イギリスのカフェチェーンでコカ・コーラに買収されたという、ニセコにふさわしいブランドです。

 

何の変哲もない夏山ですが、スキーシーズンとなれば世界のスキーヤーを魅了するパウンダースノーの世界。『黄小娥の易入門』序章の一節に易占を「真冬に満開の花を見いだし、花の盛りに、枯れ木のわびしさをおしはかる技術」とありますが、ニセコが世界有数のリゾートになることを見いだした人は巨額のリターンを手にしたことでしょう。

 

タクシーの運転手さんは地元の方だったのでいろいろと話が聞けました。

「冬は外国人旅行者ばかり乗せているのですか?」

「いや、外国人は体が大きいし荷物も多いから、日本のタクシーは窮屈。大型車をチャーターして新千歳空港から直行です。しかも、プライベートジェットで」

「冬は物価も上がるんですか?」

「そりゃもう。一泊100万円の宿がそこらじゅうにあります」

 

運転手さんにぜひ行くように勧められたのが北海道のコンビニチェーン、セイコーマートニセコ比羅夫店。日本で一番売上げ額の高いコンビニです。冬は1本3万円近いドンペリニヨンが飛ぶように売れるとか。

 

セイコーマートのパンはおいしさに定評がありますが、外国人用にイギリスパンも置いています。店内には国際クレジットカード対応のATMや両替機も完備。

 

残念なのは、ニセコを最初に開発したのは東急や西武などの日本企業だったのに、結局は外資に売却されてしまったこと。世界を相手にする大規模なリゾート開発は国内の企業ではなかなかむずかしく、外国の巨大資本が乗り出したからこそ、ニセコがここまで発展したとも考えられます。日本企業がここにからむとしたら、どんな業種でしょうか。そして、気候変動で雪質が変化したら? 考える種をたくさん与えられた夏のニセコ探索でした。