太宰治が最も好んで口にしていたというヴェルレーヌの詩の一節。
選ばれてあることの
恍惚と不安と
二つわれにあり
子ども時代の太宰がよく遊んだという芦野公園の文学碑にも刻まれています。
太宰は東大の仏文科に入学しているので、フランス文学が好きだったのでしょう。この時代の仏文科は無試験で入れたとので、それを狙っていたという説もあります。フランス語はまったくできないため講義について行けず、1単位も取ることなく5年後に除籍になったという、これまたクズ歴史。
さて、五所川原出身の有名人といえば、吉幾三もいます。泊まったホテルのそばに吉幾三コレクションミュージアムがありました。
吉幾三といえば、北海道選出の議員、長谷川岳のJAの機内での横柄な態度を告発したのが記憶に新しいところです。羽田・新千歳便はマスコミ関係者もよく搭乗するはずなのに、ずっと見て見ぬふりで報じていなかったのでしょう。吉幾三の勇気ある行動がなければ、長谷川岳はずっとやりたい放題だったのでは。ジャーナリズムの敗北です。
金木町の斜陽館を訪れた翌朝、開館と同時に入館。まるで熱烈な吉幾三ファンです。
愛用のギターや紅白歌合戦で着用した衣装などが展示されています。受付の女性が「カラオケは無料ですから、好きなだけ歌っていかれては」と声をかけてくれましたが、あいにくどの曲も歌えません。
吉幾三の人生を紹介した地元紙の切り抜きも展示されており、実に興味深い内容でした。
生まれは北津軽郡嘉瀬町(現・五所川原市)。太宰の金木町の隣です。兄4人、姉4人がいる末っ子で、中学卒業後に歌手を夢見て上京。アイドル歌手としてデビューを果たすものの鳴かず飛ばず。
ニューヨークでシェフ修行をしていた友人から送られてきたラップミュージックのレコードを聴いてひらめいたのが『俺ら東京さ行くだ』。なるほど、あの曲はラップなんだ。BTSのRMと同じ! ちなみにRMは「ラップ・モンスター」の頭文字です。
「東京へ出て銭を貯め、銀座に山を買う、ベコを飼う」という歌詞もプロテスト・ソング。こんな曲を作って歌う人だから、国会議員も告発する気概があるわけだ…。すべての謎が解けたような気になりました。
太宰治目当てに訪れた五所川原ですが、思わぬところで反骨のアーティストを発見しました。
五所川原駅前のカフェで若生(わかおい)のおにぎり定食。若生は津軽北部の名物で、薄くてやわらかい一年昆布。太宰治の好物だったそうです。