世界を震撼させたトランプ前大統領銃撃事件。大統領選への影響も大きいとあって、報道が続いています。
驚いたのは共和党の副大統領候補がJ.D.ヴァンスだったこと。彼が書いた『ヒルビリー・エレジー』に衝撃を受けたのは5年前のことです。
ヒルビリーとは、アメリカ中西部の貧しい田舎者を小馬鹿にした呼称です。
ヴァンスはオハイオ州生まれで、母親は薬物中毒で結婚と離婚を繰り返すため祖父母に育てられました。12歳の時、母親の自殺の道連れにされそうになり、必死に逃げるという壮絶な体験をしています。
努力と幸運が重なり、イェール大学のロースクールに奨学金を得て進学。
お金持ちの子息だらけの名門大学で、高卒後に海兵隊を経て進学してきたヴァンスはかなりめずらしい存在だったのでしょう。指導教官に自伝を書くように勧められ、出版するとベストセラーに。卒業後はベンチャーキャピタル業界で手腕を発揮し、政界に進出。オハイオ州選出の上院議員となったのは2022年。それからわずか2年で副大統領候補となるとは!
トランプ大統領はお飾りにして、実務はヴァンス副大統領が仕切ればいいのになどと思ってしまいます。現在39歳ですから次の大統領選でも43歳。若い大統領の誕生となるでしょうか。
先日の東京都知事選でも、新鮮な候補者が現れて2位に躍進しましたが、その後はマスコミのおもちゃみたいになっています。一方、国のトップを選ぶのにお爺さん二人の対決でアメリカには人材がいないのかと思っていたら、ヴァンスが登場するなんて! がぜんアメリカ大統領選に興味が湧いてきました。
ヴァンスのこれまでの人生は開運術の教科書に載せたいぐらいですが、本人の資質も優れていたのでしょう。『ヒルビリー・エレジー』を読んで、こんな感想を抱きました。
もしこれがフィクションだったら、「そんなうまくいく話なんてありえない」と思うでしょう。
ヴァンスの社会的成功の要因は、努力だけでなく、要所要所で適切な人物と出会ったことが大きいと思います。祖父母、勉強に興味を持たせてくれた教師、海兵隊を勧めたいとこ、海兵隊の教官、大学の教授、大学でできたガールフレンド…。
はたしてトランプ前大統領は、ヴァンスにとって出会うべき人物だったのか。そのあたりの成り行きにも興味津々です。
マドリードの人気バル、カサ・ラブラ。スペイン社会労働党が誕生した場所と聞き、政治についてバルで話し合うなんて、すばらしいと思いました。10年後、20年後にはこの世にいないような老人と二世三世議員だらけでは、日本の将来はどうなることでしょう。