『百年の孤独』の舞台、アラカタカの街を散策していると、教会前の広場から音楽が聞こえてきました。音楽が終わると何かのスピーチ。選挙運動なのでしょうか。ガルシア・マルケスの短編にもよく出てくる光景です。

2匹の犬まで熱心に耳を傾けているのがおもしろくて写真を撮りました。
それが演説者の目に留まってしまったのか、ハポン(日本)という単語が聞こえてきます。そして私のほうを指して何かを問いかけ、聴衆も私を振り返ります。
頭をフル回転。インバウンドを政策に掲げ「ほら、ここにも日本人みたいな観光客が来ているでしょう、世界中から観光客が来れば街は発展しますよ。そこのあなた日本人ですか?」と言っているのでは。そうでなければアジア人の私を話題に出すはずがありません。とりあえず「ハポン」と答えるとみんな納得したようでした。
アラカタカには日本凋落のニュースが伝わっていなくて日本人観光客が来れば経済効果が大きいと思われているのかもしれません。あらかじめ翻訳アプリで調べておけば「百年の孤独は日本でもベストセラーです」とスペイン語で言えたのに!

アラカタカには鉄道の駅があり、ガルシア=マルケスも母と汽車に乗って帰郷しました。今はバナナの輸送にしか使われていないようですが、乗客を乗せるようになればアラカタカを訪れる観光客もぐっと増えるはずです。
旅先での出来事を以前は手書きの日記やメモに残していたのですが、今はiPadに打ち込むようにしています。
アラカタカの宿はその名も、Casa Turistica Realismo Magic。
中庭の長椅子に膝の上でキーボードを打っていると、スタッフが小さなテーブルや扇風機、電源を取るための延長コードを出してくれました。
何やら質問されました。音声の翻訳アプリによると「あなたは作家ですか」とのこと。
作家と名乗るほどの者ではありませんが、英語で言うwriterならもう何十年も書いてきたので、シー(スペイン語のイエス)と答えました。

中庭では猫や犬がのんびりしています。コロンビア行きのために黄熱ワクチンを接種した東京医科大学渡航センターの医師から狂犬病の危険があるから犬や猫に触らないように注意されましたが、写真を撮るだけならいいでしょう。
魔術と現実が入り混じるアラカタカ。こんな体験ができただけでもはるばるこの地まで来た甲斐があるというものです。