出会った人、本や映画、ドラマがつながって、これからの人生で成し遂げたいことが見えてきます。
このところ毎晩のように観ているネットフリックスの『グレイスとフランキー』。
グレイスの元夫のロバートは弁護士を引退後は、元の劇団に入って活躍します。夢は『ラマンチャの男』でドン・キホーテを演じること。しかし得たのはサンチョ・パンサ役で、パートナーのソルがいちゃもんをつけたことから降板させられます。
そこでソルはロバートのために、主題歌の『見果てぬ夢』を歌う舞台をプライベートで用意します。ロバートを演じるマーティン・シーンが堂々と歌い上げ、アメリカ芸能界の底力を感じました。
原題は”Impossible dream”。
To dream the impossible dream
To fight the unbeatable foe
To bear with unbearable sorrow
To run where the brave dare not go
見果てぬ夢を夢見て、
かなわぬ敵と戦い
耐えがたき悲しみに耐え
勇者も行かない場所へ走る
This is my quest
To forrow that star
No matter how hopeless
No matter how far
これこそ我が探求
あの星を追う
どんなに絶望的で
どんなに遠くても
2019年の秋に旅したラマンチャ地方の情景を思い出しました。
スペインにすっかり魅了され、次はどんなルートを旅しようか、計画をたくさん立てました。
昨年の春に映画『ノマドランド』を観て、原作の『ノマド 漂流する高齢労働者たち』も読了。日本の格差が生ぬるく感じられるほどの厳しいアメリカ社会で、尊厳を失わずに働き続ける高齢者の姿に胸を打たれました。そこで高齢ノマドの愛読書として紹介されたのが『私に会うまでの1600キロ』です。
この本からも大きな影響を受けました。生活に必要な物一切合切を背負って1600キロのトレイルを歩き通す若い女性。若かったら私もやってみたかったのにと思いましたが、アウトドア派でない私は、険しい山道にテント泊、キャンプ料理は無理。
だったら、平坦な道で宿で寝てレストランで食べるのなら、長い距離でも歩き通せるのではないか。そこで頭に浮かんだのが、スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼の道です。
吉祥寺のスペイン料理店『ドス・ガトス』に食べに行き、シェフの高森さんに「巡礼の道を歩いた人を知っていますか」と聞いたところ、親戚じゃないけれど名字が同じ高森玲子さんという方が詳しいとのこと。早速、本を取り寄せました。
800キロという距離は『私に会うまでの1600キロ』の半分。それでもかなり長いけれど、難所はピレネーといくつかの峠。基本的に巡礼の道は治安が良く、お年寄りや子供も歩いているし、いざとなったらバスや電車、タクシーが使えるとあります。
泊まるのはアルベルゲという巡礼者専用の宿か、個室が良ければペンシオン、オスタル、バスタブにつかりたくなったらオテルと、巡礼の道に沿ってさまざまな選択肢があります。荷物だけ次の宿に運んでくれるサービスもあるそうですが、できれば自分のザックぐらい自分で背負って歩きたい。
これなら私も歩けるかもしれない、いつか行ってみたいと夢は広がったところでオミクロン株が発生。スペインに行ける日が来る前に足腰が立たなくなっているかもしれません。まさに「見果てぬ夢」だけど、インポッシブルな夢のない人生なんてつまらない。夢見ていれば、実現できなくても、夢から派生するおもしろいことも起こります。