スペイン巡礼に向けて読んだ本。
著者の森知子さんは旅先で知り合ったイギリス人夫と劇的な結婚をして、9年後に離婚。心の傷を癒すためにスペイン巡礼へ。サンティアゴ・デ・コンポステーラに加えて西の果てのフィステーラまで歩いた44日間の痛快な記録です。
スペイン巡礼の翌年には四国八十八か所へ。スペインの巡礼先では四国について聞かれることもあるかもしれないので、合わせて読みました。
四国88か所を通しで歩くと1400キロ。スペイン巡礼のほぼ倍です。
この本が書かれた2011年時点で、歩き遍路は年間で3000人弱。同じ年のスペイン巡礼者は約18万人。四国には巡礼者専用の宿、カフェ、トイレなどがあまり整備されていないのは当然で、スペインのほうがずっと歩きやすそうです。
一方、四国には「お接待」の習慣があります。通りすがりのお遍路さんに飲み物やお菓子を差し入れしたり、格安で宿を提供する「善根宿」。お遍路さんは弘法大師と一緒に歩いており、お遍路さんを助けることは弘法大師を助けることと同じだと考えられているからです。
『バツイチおへんろ』で印象的だったのは、車のお接待エピソード。
お遍路の終盤、香川県の67番大興寺へと日照り道を歩いていた森知子さんは車のお接待の申し出を受けました。
70歳ぐらいの威勢のいいおじいさんと後部座席には奥さんらしい白髪の女性。「すべてのお寺を歩いてつなぎたいから」と断ったのですが、おじいさんはこう返します。
まあ、そう意地はらんと。こんな暑い道歩いたら日射病になるで。そーやって断るお遍路さん、よういるなあ。歩きたい気持ちもわかるけど、頑張り過ぎはあかんよ。素直にお接待を受けるのも修行のひとつなんやで、ハッハッハ…
ここまで言われたら、断るのがむずかしいでしょう。森さんも、素直に厚意に甘えることも必要かと思い、乗せてもらいます。
老夫婦は異常に親切で、次の観音寺も乗せて行ってくれると言います。断り切れず、観音寺まで行き、老夫婦を車に待たせて急いで納経所へ。「親切な方に車に乗せていただいて」と世間話をすると、ピンと来たお寺の人が老夫婦の車へ。
なんと、お接待だといって歩き遍路を車に乗せて、仲良くなったら金を貸してくれともちかける寸借詐欺の常習犯だったそうです!
結果的には詐欺だったけれど、「素直にお接待を受けるのも修行のひとつ」というフレーズは、いいことを言ってます。
善意は与えるのも受け取るのもむずかしいものです。
電車の中で席を譲られて「失礼な!私はまだそんな年じゃない」と断る高齢者は器が小さい、せっかく勇気を出して声をかけてくれた人が気の毒という話を読んだことがあります。
若い人に何かを与えるべき年齢となりましたが、身体的な衰えによりサポートを受けるようにもなるでしょう。どれだけスマートに善意の応答ができるかが、今後の課題です。
帯広のサウナで年上の老婦人からすあま2つをいただきました。
toikimiさんのコメント、心に沁みました。
ちょっとしたものをごく自然に手渡せるには、生まれ育った文化とか、見返りを求めない心とかが必要なのでしょうね。そして、それを気持ちよく受け取る方も、素直に相手を思いやれる心の持ち主なのだと思いました。
帯広の喫茶店「のらくろ」。いかにも温厚そうなマダムが一人で切り盛りしていました。今は亡きご主人が、のらくろが好きで始めたお店だそうです。のらくろは最終回で除隊後、喫茶店を開くのです。
のらくらのステッカーとマッチをいただきました。飛行機の荷物検査でひっかかるかもしれないので、マッチ箱はありがたく箱だけもらいました。