翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

いきなり松山

スペインの日々が総天然色カラーだったとしたら、帰国後の日本はモノクロのよう。巡礼では毎日歩いて新しい場所にに移動していたのに、今は自宅を中心に半径100メートルで生活が完結しています。

 

もしかして、カミーノ依存症に感染したのかも。何度も繰り返し歩く巡礼者は、カミーノ・ホリック、カミーノ・マニア、カミーノ・アディクションなどさまざまな名称で呼ばれていました。

また旅に出れば停滞感も払拭できるのかと久々にJALの「どこかにマイル」。旭川、釧路、松山、福岡の組合せが出たので申込みました。どこになっても温泉が楽しめます。スペインではずっとシャワーで温泉に恋い焦がれていました。

 

結果は松山。やった! 道後温泉だ。

しかし急に思い立ったのでおひとり様で道後温泉に連泊できる宿が見つかりません。松山駅近くのビジネスホテルと組合わせることにしました。

そうなると、お遍路の真似事ができます。松山市内には8つのお寺があるのです。スペインでさんざんお遍路について質問されてちゃんと答えることができなくて、もどかしい思いをしました。

46番の浄瑠璃寺から歩けるだけ回ることにしたのですが、浄瑠璃寺までのバス路線は廃線。地方の運転手不足は深刻です。Googleマップで調べると最も近いバス停から浄瑠璃寺まで徒歩で40分ほど。スペイン巡礼で鍛えられたので何ともありません。

 

日本の秋の美しさを満喫と言いたいところですが、瀬戸内海沿岸育ちの私にとっては見慣れた風景です。

 

お寺が集中している箇所を歩いたせいか、スペイン巡礼との違いが浮き彫りになりました。

スペイン巡礼を描いた映画「星の旅人たち」の原題は「道」。点と線なら線を重視するの対して、お遍路は88のお寺という点を重視するのでは。道を歩けばどこかにたどり着きますが、四国八十八ヶ所は循環していてどこから歩き始めてもいいし、逆方向に歩いてもいいとされています。その意味では熊野古道がスペインと姉妹中巡礼となったのもよくわかります。紀州田辺、高野山、伊勢のどこから歩き始めても最終目的地は同じなのですから。


人に言えないような深刻な事情を抱えているお遍路さんがいるから、なぜ歩いているのか聞いてはいけないというのを読みました。スペイン巡礼では「ホワイ・カミーノ(なぜ巡礼を)?」が会話のきっかけだったのとは正反対です。そのためか、スペイン巡礼の話題を出すと不機嫌になる人も多いそうです。

 

実際に歩いてみると、外国人のお遍路さんもけっこういました。気候のいい時期なら日本の美しさを堪能できます。そして、日本人なら温泉を楽しみながら歩けるのが大きな魅力です。松山市のお遍路ではあちこちに温泉の看板が出ていて、歩くのをやめたいと何度も思いました。

 

途中の喫茶店で休憩して、店を出たところで「あ、トレッキングポール忘れた」と引き返しそうになって苦笑しました。手ぶらで歩いているのに。7週間のスペイン巡礼の記憶はまだまだしっかりのこっているようです。