翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

最後の女神、ラクシュミー

スペインから帰国後、なかなか日本にいる実感がわかず、ぼんやり過ごしています。

 

易の本が出版されたというのに、他人事のよう。ウラナイ8の夏瀬杏子さんを初め、告知してくださったみなさま、ありがとうございます。

uranai8.jp

 

スペイン巡礼の日々は、朝起きたら何も考えず荷造りをして歩き出すだけ。とても長いい日々だったのに、一瞬のうちに過ぎてしまったような気もします。

 

今回の目的地のサリアで、巡礼路ではなく駅に向かって歩き出したとき、本当に終わったんだと実感しました。

サリアで巡礼を終える人は少ないだろうと思っていたのですが、駅にはロンドンから来たという若い女性がいました。休暇のたびにスペインに来て、数度に分けて歩いているそうです。四国八十八か所区切り打ちと同じで、ヨーロッパ在住者にとっては国内感覚なのでしょう。

ラクシュミー」と名乗るので、「インドの女神の?」と聞き返したら両親がインド系だそうです。仏教徒の私も巡礼しているのだから、ヒンズー教徒がいてもおかしくありません。

 

マドリード行きの特急列車が出るサリアの駅は、無人駅でした。

 

事前に予約していた切符を券売機で出力していると、ラクシュミーは「なぜわざわざそんなことを?」と不思議そうな顔をします。ヨーロッパの鉄道は改札もないし、チケットレスがすっかり定着しているのでしょう。

 

発車時間近くなったのでプラットホームに出ました。駅員の姿はまったくなく、ホームの時計は止まったままです。

ポロシャツ姿のおじさんが現れて、スペイン語で何かを話しています。「機械の故障で列車が来ないから、途中の駅までバスで行く」と乗客の一人が英語に訳してくれました。日本だったら駅員は平謝りでしょうが、そもそも駅員はいないし、バスの運転手を務めるポロシャツ姿のおじさんも通常業務のように淡々としています。

 

バスに30分ほど乗って、列車に乗り換え。ちゃんと指定した席に座れました。ラクシュミーとは別の車両でしたが、私がいかにも旅慣れていないように見えたのか、マドリード到着後に再び合流し、一緒に地下鉄に乗り継ぎました。東京都民として複雑な路線の地下鉄の乗り換えには慣れているはずですが、何週間も徒歩で巡礼していたせいで、久しぶりの大都会の人の多さに緊張してしまいました。

降りる駅まで「あと何駅」と教えてくれて、「グッド・ラック」と言葉をかけあって別れたラクシュミー。もう「ブエン・カミーノ(良き巡礼を)」は言えません。最後に受けたカミーノ・フレンドからの親切でした。

 

この日から一週間以上が過ぎ、東京の自宅に戻ってきたのに、まだ心はスペインをさまよっているかのようです。