翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

30メートルで聖から俗へ

大都市レオンの前に立ち寄ったレリエゴスという小さな街。ベジタリアン料理を出すアルベルゲがあったので泊まってみました。

ソル(スペイン語で太陽)という名のハキハキした若いお母さんが取り仕切っています。マドリード出身ということで、夫婦と子供たちの新天地としてこの街を選んだのでしょう。レオンまで約20キロですから、田舎過ぎず子育てにもいい環境なのかも。

 

シャワーと洗濯を終え、美しい中庭でくつろいでいたら、見覚えのある顔が!

10日ほど前に同じアルベルゲに泊まり、その後、休憩中のバルでも再会したデンマーク人のクリスティーナです。ブラジル人のカミラとカミーノで意気投合して二人で一緒に歩いているというので印象に残っていました。その後、カミラは先を急ぐということで別々になったそうです。カミーノ・ファミリーではなく、カミーノ・フレンドの関係はくっついたり離れたり、自由です。

 

夕食は18時から。前菜は村で採れたトマトをたっぷり使った野菜サラダ。主菜は豆の煮込みとライス、デザートにフルーツがでました。日本人の私にはちょうどいいのですが、長い距離を歩いてきた欧米系の巡礼者は物足りなくないのでしょうか。

しかし最初からベジタリアン料理を掲げていますから、そういうのが好きな意識高い系の巡礼者が集まっています。日本への関心も高く、お遍路や熊野古道の話題も出ました。

 

この村には「バル・エルビス」という50年代のロックをテーマにしたバーがあるので、夕食後行ってみることに。アルベルゲからは30メートルほどの距離なのに、私以外は誰も興味を示しませんでした。

夕食を終えた午後7時過ぎでも十分明るく、外観はこんな感じ。外壁も内装も落書きがびっしりで、精神的な向上を求める巡礼者とはやはり相性がよくないでしょうか。

 

ノリノリのロックンロール爺さんが迎えてくれました。客は4人しかいません。こんなテーマ性の高いバルは巡礼路ではなく都会でやったほうがいいんじゃないかと思いますが、何らかの理由があってこの村で続けているのでしょう。

 

音楽に合わせて白ワインの封を切り、カッコよく注いでくれる爺さん。「写真を撮ってもいい?」とスマホを構えると「一緒に楽しもうぜ」。日本から来たロックンロール婆さんとしては、乗らないわけにはいきません。常連さんとの記念写真も撮り、あまりの楽しさにグラスを重ね、翌朝はスペイン巡礼初めての二日酔い。

クリスティーナに話すと「仏教徒は思慮深いはずなのに、ロックンロールバルでそんなに飲んだの?」と驚かれました。淡々と歩いてばっかりでは退屈だし、50年代から70年代の洋楽は私に日本以外の世界に目を向けるきっかけを与えてくれました。

 

スペイン巡礼で、もしかしたら人生を変えるような気づきがあるかと期待したのですが、人間の本質はそう変わらないものだと悟りました。自分の核を改めて意識するために日々歩いているのです。