翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

物欲の消滅

毎年一度は巡礼路を歩くという自称カミーノフリークのマイクとメラニー夫婦。メラニーがこんなことを言いました。

「スペインに来ると、素敵な物がたくさん目に入ります。夫は欲しいならなんでも買ってもいいと言ってくれるのですが『自分で運べるなら』という条件をつけます。バックパックを重くしたくないなから買わないでいるうちに何も欲しくなりました」

 

カミーノを歩いているとメラニーの気持ちがよくわかります。毎日、夜明け前に歩き始めてその日の宿を目指すだけで精一杯の日々。宿に着いたらシャワーを浴びて洗濯。ファッション性より、歩きやすさ、乾きやすさを最優先。洗って乾かしては同じ服を着ていますが、毎日会う人が違うので問題ありません。靴は外ではトレッキングシューズ、宿の中ではゴム草履。

 

洗濯が終わったら、翌日からの予定を確認。巡礼者が多すぎてアルベルゲ獲得戦が激しくなっているので、数日先まで予約を確保するようにしています。ブッキングドットコムを導入していなるアルベルゲなら手軽ですが、そうでない宿はメールでやりとりしています。先着順の公営アルベルゲも一度だけ利用してみましたが、順番待ちの列に並ぶのはあまりすきじゃありません。

受付横のテーブルを借りてiPadを開くことが多いのですが、午後にかかってくる空きベッド問い合わせ電話がいかに多いことか。部屋数の少ない私営アルベルゲにはほとんど空きがない状況です。

 

そこまで苦労して得るベッドがこれ。ログローニョのアルベルゲで、新しくてきれいなほう。男女関係なく先着順でベッドを選びます。アルベルゲではゆっくり休めないという人もいますが、私は屋根があって横になれるベッドがあればそれで十分。宿泊者全員が巡礼者なので、譲り合いと助け合いの精神にみちています。

 

不用品を入れておくボックスもあります。欲しい物があれば自由に取ってOK。左上の紺色のポーチは私が置きました。マリメッコなのでついフィンエアーでもらってしまいましたが、巡礼には必要ないものでした。

 

物欲とともにグルメ欲も消滅。当初はレストランやバルに出かけていたのですが、全体的量が多すぎるし定食を頼むとお一人様でもワインがどーんとボトルで出てきます。飲みすぎると翌朝の歩きが苦しくなるので、夕食を出してくれるアルベルゲを選ぶようにしています。メニューは一種類しかないのですが、好き嫌いは一切なくなり何でもおいしくいただいています。1日2食でバルで朝昼兼用のボカディージョ(スペイン風サンドイッチ)しか食べない日が多いのです。同宿者と情報交換できるのも大きなメリットです。

 

ショッピング欲もグルメ欲も消滅した日々。毎日新しい街を訪れ、新しい人と出会うので巡礼中はこんな生活ができますが、日本に戻ればすべて元の木阿弥となるのでしょうか。