ピレネーの麓、ロンセンバーリェスのアルベルゲ(巡礼宿)でボランティアとして働いているのは、ほとんどオランダ人でした。オスピタレイラとして巡礼者の世話をしている女性によると、オランダの教会組織がアルベルゲを所有しているそうです。
「なぜボランティアを?」と重ねて質問してみました。
「聞いてくれて嬉しい! 私も巡礼者としてカミーノを何度も歩き、異なる角度からカミーノを見たかったから」とのこと。拘束時間が長くて大変だけど、2週間という限られた期間だから楽しく働いているそうです。
ビジョマヨール・デ・モンハルティンという小さな村に「オアシス・トレイル」という古い農家を改装したというアルベルゲがあったので泊まってみました。
ここもオランダの教会組織による経営で、6人のチームで宿を切り盛りしています。受付時間の2時前に到着するとレモンを浮かべた水を出して歓迎してくれました。ボランティア期間は平均3週間で「クリスチャンとして働けて世界から来た人と交流するいい機会だから」と受付係のナターシャ。本職は看護師で、てきぱきとしながら温かく接客しています。
屋外に並べた椅子とテーブルがフロントデスクになり、夕食会場になります。今夜のメニューは夕食はサラダとチキンカレー。
ココナツカレーと外米ですが、久々の日本風の食事に「カレーライスは日本人のソウルフード!」と喜びました。「今日は君がくるからこのメニューにしたんだよ」とボランティアの男性。オランダ人にしては口がうまい。
8時半から瞑想の時間もあり、参加者で感想をシェア。オリソンの山小屋に続いて、巡礼者仲間を作りやすい宿でした。そうした暑苦しい関係は避けて淡々と歩きたい人には向きませんが、カミーノならではの体験です。
トレス・デル・リオで泊まったアルベルゲはイタリア系だと思います。はっきりしないのは、宿を取り仕切っている男性(夕食時にビンセントという名前だと判明)がまったく英語を話さないから。オスピタレイロはナポリ出身だというし、客のほとんどがイタリア人。巡礼者のはずなのですが、水着姿で日光浴を楽しんでいます。そして、夕食の巡礼定食はパスタでした。日本語の「乾杯」を教えると、次々に赤ワインのグラスが空きました。
赤いスカーフを巻いているのがビンセント。イタリア人の陽気な客と大盛り上がり。
オランダ人の宿では別料金の夕食の支払いや次の宿への荷物の配送手配など、じつにシステマティックでしたが、イタリア人の宿はこちらから言わなくては何も動きません。しかし、いつも芝居がかっているほど愛想のいい反応があり、チェックイン時に名前を覚えられ、何かにつけて声がかかりました。
巡礼なのに、観光気分満々で個性的なアルベルゲ巡りに精を出しています。世界各国の人々と交流できるのがカミーノの魅力の一つですが、日本カミーノの会でアドバイスされた通り、宿のキャパ以上に巡礼者が押しかけ公営のアルベルゲ以外は予約がないとなかなかむずかしそう。一昔前なら、なんとか融通をつけて受け入れてもらうこともあったようですが、今はあっさり「満室です」と断られます。予約をまったくせずにやってきて、タクシーで空いた宿に行ったという気の毒な体験談も聞きました。