昨年に続いてスペインを歩いてみて、日本の外に出ないと私は息が詰まって内向き志向になっていくと実感しました。単なる外国好きと言ってしまえばそれだけですが、日本の外に目を閉ざして生きていくのはむずかしい時代です。
JALのスマートフォン決済サービス、JAL PAYを使って現地でユーロを引き出していたのですが、昨年のうちに多めに両替していたのが幸いしました。さらに円安が進んで1ユールが170円近くになっているのですから。
世界一の美食の街として有名になったサンセバスチャンは巡礼路の北に位置するので立ち寄りませんでしたが、このところ「日本のサンセバスチャン」を名乗る街を耳にするようになりました。最初は函館のスペイン料理店。その後、別府の温泉街やいすみ市、三重県多気町など。ピンチョスやタパスと呼ばれるフィンガーサイズのおつまみを目当てに複数のお店をはしごする気楽なグルメです。
マドリードなら、サンミゲル市場。日本のデパ地下のように複数の食べ物とワインの店が密集し、中央の立ち飲みスペースで楽しむことができます。
スペインワインはおいしくてつい飲み過ぎてしまうので、まずはノンアルコールのカクテル。オリーブが無料でついてきました。
寿司の店もあり、小さな盛り合わせが10ユーロでした。焼き鳥や天ぷらもあります。
さらに探索すると、マグロ専門店が。真ん中の段、マグロの漬けは1皿7ユーロ! 一切1000円以上です。それを「5皿ちょうだい」と注文する中華系の観光客。日本の食品商社が買い負けするのもわかります。そのうち日本人はマグロの刺身なんてめったに口にできなくなるかもしれません。もし私が若かったら、寿司職人になって海外出稼ぎを考えていたでしょう。海外だったら女性が寿司を握っても違和感がないだろうし。
日本の実態経済はかなり弱いのではないかと感じ始めたのは、渋谷の日本語学校で主にヨーロッパ人の学生を教えていた2017年頃でした。学生は富裕層の子弟が多かったのでしきりに「日本はなんでも安い」と驚いていました。当時、1ドルは107円前後だったのに。
学生の親も来日することが多くよく食事に誘われました。「一流ホテルやレストランで最高のサービスが受けられるのはわかるけれど、なぜファストフードやコンビニもそうなの?」と質問されたものです。日本の労働者の意識は高いのに、お金がうまく回っていません。政府は円安を放置して、ますます世界との格差は広がる一方です。
帰国のJAL便の乗客のほとんどは外国人旅行者。空港の入国審査のスペースは8割がインバウンド対応で長い行列ができているのに対し、帰国する日本人の列はまばら。ボーダレス化した世界では最も費用対効果の高い旅行先を誰もが目指すのですから、しかたがありません。