翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年秋、スペイン巡礼(フランス人の道)。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。おかげさまで重版になりました。

那須湯元で二泊三日の湯治

すっかり夏のような暑い日もあり、あわてて湯治に出かけることにしました。

ここ数年はサウナと水風呂にハマっているのですが、今はよくても高齢になると過激な温度変化を繰り返すのは体には負担かも。昔ながらの湯治に慣れておこうと、東京からそう遠くなく涼しそうな日光か那須で宿を探すことに。

温泉旅館は二人泊が基本ですが、湯治宿なら一人で泊まれるところがけっこうあります。那須湯本では小林館が温泉通に人気のようですが、名物がジビエ。宿のご主人が獲ったばかりの鹿を庭先で解体することがあるというので、初心者にはハードルが高そう。地元の人と民宿の客用の共同温泉が目の前の松葉という民宿に決めました。

 

那須には観光スポットも多いのですが、那須湯本は昔ながらの静かな湯治場。街全体に硫黄の香りがただよっています。鹿の湯という共同浴場が有名ですが、民宿に泊まれば無料で何回でも共同浴場の滝乃湯に入れます。

登山ウエアにバックパックという旅姿だったので、「明日はどの山へ?」と聞かれました。女一人で地方を旅するには登山姿はなかなか都合がいいのです。メンタルに問題がある訳あり旅でもなく、深刻な病気を抱えて藁にもすがる思いの湯治客でもないと一目でわかり、宿の人も安心でしょう。

 

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共同浴場には主(ぬし)がいて、新参者に厳しい」とも聞きますが、滝乃湯の利用者は民宿の客が多く、のんびりしたムード。熱めとぬるめの浴槽が二つあるのも、初心者向きです。石鹸やボディソープは使用禁止。泡立たないし、温泉が皮脂を流してくれるから。洗髪だけはシャンプーが使えます。

 

平日だったので民宿松葉の客は、私ともう一人だけ。二日目はご夫婦一組でした。これくらいの人数だから若旦那一人で切り盛りしていました。地元の野菜や筍をふんだんに使った食事はとてもおいしくて、二日目はがらりとメニューを替わりました。物価高騰の昨今、一泊二食で一万円を切る宿泊代で利益が出るのだろうかと客の方が不安になるようなおもてなしです。

 

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おひとり様用に川沿いの窓際カウンターもあり、ワーケーション利用も可。Wi-Fiもしっかりつながりました。

 

若旦那はなかなかのアイデアマンで街おこしの中心人物。九尾の狐祭りの実行委員長も務めお忙しそうですが、気さくな人柄です。滝乃湯に加えて宿泊者用に河原乃湯もあるというので、夕食後一息ついて午後8時過ぎに行ってみました。

誰もいなくて真っ暗でしたが、照明のスイッチを入れて新鮮なお湯を独占する至福のひととき。後から女性が一人いらっしゃいました。埼玉からIターンした移住者で私と同年代です。那須湯本の話を聞かせてもらうのに、これほどぴったりの人が他にいるでしょうか!

移住先に那須湯本を選んだ理由は、まず温泉。最高のお湯に毎日入れるから。そして四季がはっきりしていること。春と秋は自然が美しく、夏は涼しくて冬はきりっと寒い。本業はリタイアして移住したけれど、こちらにもけっこう仕事はあるとのこと。島根の温泉津(ゆのつ)の移住女子も同じような感じでした。

温泉好きなら那須への移住を勧められましたが、やはり車がないとむずかしそうです。

話が弾み「明日、アルバイトを頼まれていて、それさえなかったら車であちこち案内してあげるのに!」とまで言ってもらえました。連絡先を交換せず、あっさり別れましたが、だからこそこういう交流は心に残ります。

那須湯元は、異なる季節にもまた来てみたいと思わせるいい湯治場でした。