やすらぎの里・養生館の滞在から2週間が過ぎました。
1日1000カロリーで1週間滞在していたのですが、体重は少し落ちただけ。帰宅後アルコールを飲むようになり、ジャンクフードにも手を出したため、すぐに戻ってしまいました。
若い頃と比べて、明らかに代謝が落ちています。1日1000カロリーで痩せないということは、それがちょうどいいカロリーなのかもしれません。
マラソン選手の高橋尚子は現役時代にお寿司50貫を食べていたそうですが、食料が乏しくスポーツなど楽しむゆとりのない時代だったら、燃費の悪い体を持て余していたかもしれません。生産性の低い高齢者は少量で満足し、育ち盛りや働き盛りに食料を回すのが合理的です。その意味では、私は正しく年を取っているのでしょう。
少ししか食べられないからこそ、毎回の食事をゆっくりと味わいたいものです。
今回、養生館でよかったのは、テーブルが相席ではなく一人だったこと。同席者がいると、どうしても会話に意識が向けられてしまいます。無言で食べることだけに集中するので「食べる瞑想」を毎食ごとに実践できるのです。やすらぎの里では、リゾートホテルのような本館が一番人気ですぐに予約が埋まりいつも満室のよう。1テーブルに2人から3人が座るので、無言で食べることはありませんでした。養生館に根強い人気があるのは、ひっそりと自分と向き合って過ごせるのが理由の一つかもしれません。
滞在中に読んだメイ・サートン『70歳の日記』の印象的なエピソード。
友人のエリザベス・ロジェは、83歳で二作目の小説を書き終えたばかり。「80代が人生でいちばん幸せだ」と言います。
エリザベスは車に乗っているときは何もしゃべりません。目に見えるものに集中したいから。ほとんどの人は車に乗っているあいだ、せっせとおしゃべりをするけれど、エリザベスが一度にするのはひとつのことだけ。街のようすや野の花に至るまで、あらゆるものをじっと見て、歓びとともに観察します。
マルチタスクは多忙な若い人のやること。年を重ねた者は、一度にひとつのことだけ。ウォーキングにしても音楽を聴きながらでは、足元がおろそかになって転びそうです。あらゆるものを歓びとともに観察することを、旅先だけでなく日常生活でも心がけたものです。
養生館のある日の夕食。秋だったので栗ご飯が出ました。
サバみりんは、伊豆高原の山幸干物店。おいしいと評判で、みんなで買い物に行きました。2~3泊という人が多く、1週間滞在するのは6人だけだったせいか、最終日にはみんなで館長に感謝の手紙を書こうという提案があったり、LINEグループを作るなどけっこう一体感も生まれました。かといって過剰に接近することもなく、ほどよい距離感が保たれた滞在でした。