翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

家に帰るために旅に出る

コロナが収束して、のびのびと旅に出られるのはいつになるのでしょうか。

 

旅が好きだけど、観光スポットを駆け足で巡るのではなく、暮らすような旅をしたいとずっと思ってきました。

Wi-Fiのある宿なら旅先で仕事もできますから、1週間ぐらい滞在できるのではないか。できればサウナと水風呂のある宿で、適度に街を歩いてその雰囲気を感じたい。

死ぬまで自宅で暮らせればいいですが、心身の機能が衰えて自立した暮らしができなくなるとどこかの施設に入所することになるでしょう。人口減の日本ですが、東京の過密状態は解消しそうにありません。東京を離れるという選択肢も視野に入れ、その予行演習として各地に1週間ほど滞在する旅をしてみようとあれこれ考えています。

 

先月、伊豆のやすらぎの里に養生食コースで1週間滞在したことで、イメージが具体的になりました。

 

やすらぎの里は、おひとり様の長期滞在には理想的な宿です。

朝10時と夜6時に食堂に行けば、丁寧に調理された500カロリーの食事が出ます。肉があまり好きではないので、野菜や魚中心の優しい味付けの食事には大満足。食べ過ぎることもないし、館内禁酒ですからお酒を断ついい機会です。

毎日のプログラムも充実し、屋上には小さなサウナと水風呂があります。そして20分ほど歩けば、海と一体化するような露天風呂にサウナと水風呂を備えた日帰り赤沢温泉があり、毎日のように通いました。一人泊の人がほとんどなので孤独を感じることもありません。

 

こんないいところは他にないと喜んでいたのですが、5日目の夜ぐらいから家に帰りたくなってしまいました。やっぱり自分の家は落ち着くのです。21年前に大決心して購入して分譲マンションで、一昨年にはリノベして希望通りの間取りにしました。

そして長年住んでいる街のなじみの場所。スポーツクラブも1週間休んだし、行きつけの八百屋さんで食べたい野菜を買って好きな料理にできるのは自宅だからこそ。

 

30年ほど前、アイルランドを旅した時のこと。

イギリスからアイルランドに渡るフェリーで同席になった優しそうな老婦人が語ったことをよく覚えています。

「私はイギリス人だけど、結婚してアイルランドに住んでいるの。いつも里帰りしたいと願っていて、今回、実家に行ってきたところ。でもね、30年もアイルランドに暮らしていると、もう私の家はアイルランドなの。家に帰るってすばらしい。里帰りは楽しかったけれど、この気持ちを味わうために旅に出たようなもの」

 

旅は楽しい。だけど家に帰るのはもっと楽しい。その気分を味わうためにこれからも旅に出たい。そう遠くない将来、旅に出られなくなり、不本意ながら大好きな家を離れなくてはならない日が来るのですから。

 

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伊豆やすらぎの里養生館。本館や高原館のほうが新しいのですが、古い養生館のほうがくつろげるという人もいました。できれば養生館と本館を順繰りに滞在してみたいものです。