自分の生活をすっきりしたいと願っているのですが、その前に親の家の片づけがあります。
母は何とかしなくてはいけないと考えていたようですが、実行に移す前にパーキンソン病を発症し、何もできないまま亡くなってしまいました。
母が元気だった頃、こんな話を聞きました。
「片づけしようと思っているんだけどなかなか着手できないと友達に相談したら、『どうせ死んだら、廃品処理の2トントラックを何台頼むかの違いなんだから、気に病むことはない』とアドバイスされた」
母が亡くなって2年になろうとしているので、服や靴を処分することにしました。小柄な母と私はサイズが違うので、取っておくという選択肢はありません。
月に一度のペースで帰省しているので、ゴミ袋に入れて指定された日に出すのは無理です。ネットで検索して遺品整理の業者に依頼することにしました。
近所の業者を選び、家まで来てもらって見積もりを取りました。2トントラックで4万4000円。隣の奥様には「それは高い」と言われましたが、燃えるゴミ・燃えないゴミの分別もなくまとめて持って行ってくれるのが便利です。
遺品整理という仕事、中にはシリアスな依頼もあるそうです。
たとえば、働き盛りの夫がいきなり亡くなり、遺された妻と幼い子供は最短の期日で家を空けなくてはいけないといったケース。予算との兼ね合いもあり、遺族との交渉にも気を使わなくてはいけません。うちは父が施設に入居して空き家となっていますが、父が生きている間は家を手放さないことにしたので、いたってのんびりした依頼です。
当日は作業員の方が2人来ました。私は手伝わなくていいと言われましたが、見ているだけなのも居心地が悪くて、一緒に作業しました。立ち会うはずだった兄はまさかの当日ドタキャン。最初から期待しなければいいのです。「家族じまい」という言葉がはやっていますが、私も父を見送ったら身内じまいをする予定です。
母は着道楽だったので3畳ほどのクローゼットにぎっしりと洋服がかかっています。断捨離はできなかったけれど、きっちりした性格だったのでクリーニングに出してタグが付いた洋服がほとんどです。施設に入ってからの数年間は支給される寝間着で過ごしていたとのですから、トルストイの短編「イワンのばか」を思い出してしまいました。
人はどれほどの服がいるか。
お洒落を考えなければ、本当に必要な衣服は洗濯の替えがある程度でいいはずです。日本は四季があるので年中同じ服というわけにはいきませんが、夏と冬、合服の3パターンで何着と基準を決めておけば余計な買い物はしなくて済みます。流行があるから買い替えなくてはいけないのはファッションを楽しみたい人だけで、高齢になればこざっぱりとしていればいいのでは。
凝った刺繍やプリント柄の母の服を処分していると、服は無地を基本としてアクセサリーやスカーフで変化をつければいいと思い至りました。高齢になるとアイロンをかけるのもおっくうになるだろうから、しわにならない素材を選ぶべきです。そう考えていくと、服はほとんど買わなくていいような気がしてきました。
介護帰省の最後の夜は神戸ハーバーランドの万葉倶楽部に泊まることにしています。サウナーに「関西最凶」と讃えられる凶暴なほど熱いサウナのオートロウリュを浴びて水風呂へ。
リラックスルームやプライベートリクライナーでは落ち着かないし窓もないので、自分へのご褒美と一人でツインルームに泊まっています。窓から見渡せる神戸港。瀬戸内海の水先案内人だった父の職場です。