翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

きれいなティーカップは使えるうちに使っておけ

住んでいるマンションの管理人さんは、定年退職後っぽい男性が多かったのですが、若い女性に替わりました。彼女の提案なのか、ゴミ置き場に自動センサー照明が取り入れられ、掃除道具はそれぞれラベルがついた場所に整然と並べられるようになりました。

住民はゴミをいつでも出していいことになっているのですが、管理人さんの負担を少しでも減らすために私は収集日の朝に指定の収集場所に出すようにしています。その時にすれ違うと「ありがとうございます、助かります」と丁寧にあいさつしてくれます。

 

年末に向けて、ゴミの量が増えています。大量のゴミ袋を台車に乗せて収集場所と往復する彼女の華奢な姿を見て、『メイドの手帖』を思い出しました。

シングルマザーでメイドの仕事を選ばざるをえなかったステファニー。

雇い主の一人、ウェンディーの姿に私自身を重ねるようになりました。がんを患って自分の余命を知る高齢女性です。自宅の整理と子どもや甥姪に遺すものの仕分けのためにステファニーに来てもらっています。

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ステファニーに昼食を用意して、とっておきのティーカップでお茶をふるまうウェンディー。ピンクの花模様に縁どられた客用ティーセットです。手が震えてカップがかたかた鳴るほど体調が悪かったというのに。しかも、ランチタイムも「あなたの時間を使ったから」とステファニーに時給を支払う気前の良さ。感激するステファニーにかけた言葉は「きれいなティーカップは使えるうちに使っておけ」。

見事な終活! 世話になる若い人への接し方といい、ぜひ見習いたいものです。

 

断捨離や片付けの番組を見ていると、来客用の高級な食器セットは棚の奥にしまい込み、景品や100円ショップの食器を普段使いにしている人がたくさんいます。いつか使おうと思っていても、そんな日は決して来なくて、死後にリサイクルショップに引き取られるのが関の山です。まさにウェンディーの言う通り「使えるうちに使っておく」べきです。

 

『ゼロで死ね』を読んで、稼いだお金を死ぬまでで使い切りたいと思いましたが、そんな大げさなことでなくてもいいのです。客用の食器やよそゆきの服を日常使いにするだけでも生活の質は上がります。

押し入れや食器棚の隅まで点検し、しまい込んでいたものに日の目を当てようと思います。文房具が好きで、コレクションしているノートやペン。パソコンに向かうことが多くなり、溜まる一方です。何か書き始めてみよう。TO DO LISTもきれいな紙に丁寧に書くとモチベーションが上がります。

 

物質だけでなく肉体や頭脳も「使えるうちに使っておけ」。

30年も通っているスポーツクラブで、何人もの先輩を見送りました。ダンスが上手だった年上の人たちが次々と引退。私もいつかは踊れなくなるでしょう。その日を想像して悲観的になるのでなく「踊れるうちに踊っておけ」。

両親を見ていると、いよいよ高齢になると本も読めなくなるようです。「読めるうちに読んでおけ」。

 

子どもの頃はお正月が来るとすべてが一新するような高揚した気分になりました。今はあと何回、新年を迎えられるかと考えます。年末やお正月は、与えられた時間が有限であることを知るための節目です。

 

店内に飾られているカップから好きなものを選んでお茶を飲める有田のカフェ。

私が選んだのは左側のカップ。佐賀で陶芸が盛んになったのは、大陸から多くの陶工たちが海を渡ってやって来たから。そして名産となった陶磁器は船でヨーロッパに輸出され、大人気となりました。帆船の絵がそんな歴史を感じさせるカップです。若かったら、買って帰りたいと思ったでしょうが、今はこうして旅先で体験できるだけで十分。

旅も「行けるうちに行っておけ」なんでしょう。来年はどんな土地を訪れることができるでしょうか。