高齢化社会となり、「親の家を片づける」必要がクローズアップされてきました。
雑誌で特集が組まれ、書籍もたくさん出版されています。
自分の身の回りの断捨離もむずかしいのに、親の家の片づけができるのか。しかも今の高齢者は戦後の貧しい時代のトラウマからか、「いつか使うかもしれない」と物を捨てたがらない傾向があります。
10年ほど前に、田舎の家を兄と二人で片づけたことがあります。
長男である父が建てた家で、両親が転居し子供が独立したことから、父の姉が住むようになっていました。
その姉(私にとっては伯母)が一人暮らしができなくなり、施設に入り空き家に。日本全国、こんなケースはたくさんあり、これから増える一方でしょう。
田舎には父の親戚がいるので、不用品を処分して水回りをリフォームすれば、孫やひ孫の帰省に使ってもらえます。
大量のゴミを通常の収集には出せませんから、廃棄物業者を頼み、庭に積み上げたゴミを処分してもらうことに。
兄と二人がかりで2日もあれば片づくだろうと踏んだのですが、結局2泊して3日間かかりました。
戸棚から大量の砂糖や醤油が出てきました。一人暮らしの終盤、伯母は認知症ぎみで、山のようなストックがあるのに、スーパーの安売りで特売になっているものをせっせと買い込んだようです。戦後の窮乏時代に育ったので、砂糖や醤油を溜め込むことで精神的に安定したのでしょう。
洋服も山のように残っていました。とりあえず施設で着る服には不自由していないようだし、「服が要るなら、ユニクロで買えばいい」を合言葉に、片っ端からゴミ袋に入れていきました。仕分けしている余裕なんてありません。
そんな体験を思い出し、『フランス人は10着しか服を持たない』という本がベストセラーになっているぐらいだから、さぞかしヨーロッパでは、親の家を片づけるのも楽なんじゃないかと想像して手に取ったのが、この本。「親の家の片づけ」ブームの先駆けといえる本です。
- 作者: リディア・フレム,友重山桃
- 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス
- 発売日: 2014/12/10
- メディア: 文庫
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重たい本でした。単なる片づけ本だと思ったら大間違い。
著者のリディア・フレムはベルギー在住の精神分析学者。両親はユダヤ人強制収容所の生き残りです。
娘がいくらせがんでも、ヒトラーが政権を握ってからの時代については口を閉ざしていました。
たとえば、色あせた小さな革のトランク。
1939年に祖母が父に送った手紙の束。ロシア系の祖母は、1942年に収容所へ送られ殺されました。
この祖母のことを私はもっと知りたかったのだが、そうするにはあまりにも苦しすぎたのか、父はめったに祖母について語ろうとはしなかった。父が最後におばあちゃんに会ったのはいつだったのだろう。いつ、そのいまわしい亡くなり方を知ったのだろう。
たとえ親が平和な時代を生きて天寿を全うしたとしても、親の家を片づけるのは子供にとって一大事です。
そして、私のように子供のいない身は、しかるべき手続きをしておかなければ。そんな思いに駆られた一冊です。