翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

無念のうちにこの世を去った人々に思いを馳せる

「妊娠したら、街を歩いてて小さな子どもがよく目につくようになった」という話がありますが、何かのきっかけで普段あまり意識していなかったことが急にクローズアップされることがあります。

映画『関心領域』を観たことで、欧米の著者による本を読んでいると、いきなりホロコーストの話題が出てきてぎょっとしたことなどを思い出しました。

 

たとえば片づけの本だと思って読み始めたら、著者の両親がユダヤ強制収容所の生き残りだったとか。

bob0524.hatenablog.com

 

最近ではオリバー・バークマンの『限りある時間の使い方』。

bob0524.hatenablog.com

 

オリバー・バークマンはイギリスとアメリカで活躍するジャーナリスト。

彼が育ったのは、先の先まで計画を立て成り行きまかせで行動するとパニックになるという家庭。旅行するなら4か月前に飛行機とホテルを確保し、早めに家を出て駅や空港で長く待つのが習慣でした。

 

というのも父方の祖母はユダヤ人で、1933年にヒトラーが政権を握ったときにベルリンに住んでいました。なんとかハンブルクからイギリス行きの船に乗れましたが、逃げ遅れた家族はのちに収容所で命を落とすことになったのです。

以来、「早めに計画して動かなければ最悪なことが起こる」が家訓となったのです。

 

しかし、これは極端な例で、未来のすべてを計画通りにしようとしても不測の事態は起こりえるので、人生を過度にコントロールしようとするなという教えが続きます。どんなに心配して準備しても、防げないこともあるのです。

ヒトラーの時代のヨーロッパ大陸に暮らすユダヤ人ならぐずぐずしている暇はありませんが、平和な時代に生まれて急ぐ必要がないことをしみじみありがたいと思います。

 

そして、長崎の旅ではコルベ神父の記念館を知りました。

コルベ神父は戦前の日本で伝道していたユダヤ系のポーランド人神父です。

ポーランドに帰国後、ゲシュタポに逮捕されアウシュビッツに送られました。宗教も決して聖域ではなかったのです。

収容所から脱走者が出たことで懲罰として無作為に選ばれた囚人が餓死刑に処せられることになりました。選ばれた囚人のうちの一人が「私には妻子がいる」と泣き出し、コルベ神父が進み出て「私はもう若くないし、カトリック司祭で妻も子もいません」と身代わりになりました。若くないといってもコルベ神父は47歳。今の感覚ではとても理解できない極限状況です。

助けられた男性は収容所を生き延びました。悩み苦しんで沈黙を守った後、各地でコルベ神父についての講演活動を行って93歳で天寿を全うしたそうです。

 

老いを自覚して、限りある時間を意識するという贅沢が許されず、無念のうちにこの世を去った人々の歴史の延長線上に現在があります。