翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年秋、スペイン巡礼(フランス人の道)。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。おかげさまで四刷になりました。

移動の物語としての「ばけばけ」

NHK朝ドラ「ばけばけ」、楽しみにしていました。

若い頃、アイルランドの魅力に取りつかれて、3か月ほど旅をしました。帰国後、アイルランド関係の原稿を書く機会も多く、小泉八雲の孫の小泉時氏にお目にかかったこともあります。

 

小泉八雲の本名はパトリック・ラフカディオ・ハーン。父方のアイルランド守護聖人のパトリックに母方のギリシャの島の名前を組み合わせた名前です。

ギリシャ人の母はダブリンでの暮らしに順応できず、子どもを置いて帰国。父は再婚し、ハーンは叔母に育てられます。厳格な宗教教育になじめず、母恋しさからミドルネームの「ラフカディオ」をメインに名乗ることにしたのでしょう。

「自然や人生を楽しく謳歌するという点で、日本人の魂は古代ギリシャ人の精神によく似ている」とハーンは書いています。八百万の神がいる日本と同じく古代ギリシャ多神教です。

 

アイルランドからアメリカ、マルティニーク島、そして日本。はるばると旅して「神々の国の首都」と彼が呼ぶ松江の地へ。

 

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小泉八雲は西洋人としては小柄で、少年期の事故で左目を失明しています。そのままアイルランドにとどまっているとぱっとしない人生だったかもしれませんが、日本に来たからこそ、教育と文筆で大いに才能を発揮しました。古くから渡来人との交流があり異文化を受け入れる島根という土地柄もよかったのでしょう。

 

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ハーン訪れた横浜のお寺のエピソードに心打たれました。

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さて、朝ドラではヒロイン一家からお婿さんが出奔。

ヒロインの父は、明治維新という時代の変化について行けず「立ち尽くす」人として描かれていましたが、ただ立っているだけならいいのにあやしげな投機に手を出して大借金を作るという設定です。お婿さんは仕事をかけもちして家の借金を返しているのに「家の格」などと言われ、逃げ出すのも当然の状況。まるでブラック企業からの退職のようです。「小糠三合あったら婿に行くな」という諺があるのもよくわかりました。

ともかく、私は立ち尽くすより移動したい。置かれた場所で咲くのではなく、咲ける場所に移ります。

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お婿さんが去ったから、後にハーンと結婚できるのだから、結果的にはよかったのかも。そして「神々の首都」としてあれほど気に入っていた松江でしたが、冬の寒さに耐えられず熊本や神戸へ。最終的には東京に落ち着きました。妻にとっても、最初の夫に逃げられたことが知れ渡っている故郷を離れるのは案外うれしいことだったかもしれません。

 

熊本市小泉八雲旧居。各地で住居が保存され公開されているのも、小泉八雲の功績によるものでしょう。