パリオリンピックが開幕。昨年秋のスペイン巡礼のために訪れたパリの思い出がよみがえりました。フランス文化に触れてパリの美しさを愛でるような優雅な滞在ではなく、ドタバタしながら通り過ぎただけですが、巡礼路以上に記憶に残っています。
というのも、予定より24時間遅れのパリ到着だったからです。
フィンエアーのお詫びなのか、ヘルシンキからパリのフライトはビジネスクラスにアップグレードされて快適そのもの。成田とヘルシンキに各一泊して時間はかかったものの、すべてフィンエアーが手配してくれたので戸惑うことはありませんでした。
シャルルドゴール空港に降り立ち、フィンエアーから降機したとき、これからは一人で判断して動くしかないと、急に心細くなったのを覚えています。
それでも、まだ午前中です。パリで一泊予定だったのをスキップして、ピレネーの麓のサンジャンピエドポーまで一気に移動できれば、一日分の遅れが取り戻せます。
ともかくパリ高速鉄道のモンパルナス駅へ。空港から直行バスがあるはずなのですが、バス乗り場に着いたもののモンパルナス行きがありません。係員に聞くと「トレインB」と言われました。
しかたなく鉄道駅に向かっていると観光案内所がありました。ここの女性係員はとても親切で、モンパルナスへのバス便は廃止になったと教えてくれ、鉄道と地下鉄の乗り継ぎ経路をGoogleマップで検索し、わざわざプリントアウトまでしてくれたのです。そして、乗車券まで観光案内所で買えたのです。
地獄に仏とはこのことか。順調な滑り出しにほっとして、足取りも軽く鉄道駅へ。ところが、乗車券が改札を通りません。警備の女性に「このチケットが通らないのだけど…」と英語で助けを求めると、ちょっと困った顔をされて、おもむろにスマホを取り出して入力を始めました。「磁気がおかしくなっているので、窓口で取り替えるように」という英文画面を見せてくれました。
ようやく改札を通過して乗車。車内は落書きだらけで照明も暗く、映画『ジョーカー』の地下鉄のよう。パリの高速鉄道や地下鉄は治安があまりよくなく、女性一人で乗らない方がいいとか、注意していても盗難が発生するといったネットの書き込みを思い出しました。落書きだらけで暗い照明。ここでパスポートや財布を盗まれたら、巡礼のスタートに立つ前に旅が終わってしまいます。緊張で体が硬くなりました。
しかし、あたりを見渡すと乗客はごく一般の人々で犯罪者の巣窟という感じでもありません。地下鉄の乗り換えも東京と同じで、無事にモンパルナスに到着できました。
フランス高速鉄道のTGV(オリンピック開幕当日に破壊攻撃がありました)のチケットは14時発にしていましたが、前の便に乗れそうです。「みどりの窓口的なところで変更できるのか。窓口の人はさすがに英語ができるだろうけど、日本みたいに大行列だったらどうしよう」と思案しながら駅に着くと、ずらりとチケット発券機が並んでいます。英語表記を選び、スマホでチケットのQRコードを読み取ると、簡単に変更できプリントアウトされた切符が出てきました。戸惑ったのはホームがわからないこと。スペイン高速鉄道と同じく、直前までホームが決まらりません。プリントアウトされた切符を見せながら周りの乗客に確かめて乗車し指定された席に座り込んだときは、旅は始まったばかりなのにもう半分以上終わったような気がしました。

パリでは写真を撮る心のゆとりもなく、ようやく撮影できたのは乗換駅のバイヨンヌ。
不安になったりほっとしたり、人の親切も身に染みて、一人でドタバタ劇を演じましたが、秋の始まりの空と風で気持ちも落ち着きました。
巡礼で知り合った韓国人のスンヒは、フランス文化が好きで巡礼路を歩く前にバイヨンヌに二泊したとそうです。バイヨンヌはフランスのバスク地方を代表する美しい街。そういうゆったりした旅程にすればよかったと反省しました。