翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)、ビジネス記事翻訳ですが、そろそろリタイア状態へ移行中。JALの「どこかにマイル」で日本各地に出没。ウラナイ8で活動しています。

八丈島、積善の宿

一人で泊まる宿を選ぶときは、親切で感じがいいかどうかを口コミでチェックします。きれいな部屋でコストパフォーマンスがいいに越したことはありませんが、旅先で冷たい対応をされると一気に心細くなるからです。

 

八丈島では港近くの民宿に泊まりました。竹芝桟橋への東海汽船は一日一便、朝に出航。万一乗り遅れたら、空路に変更しない限り、帰宅は翌日になってしまいます。

 

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モーニングサービスを出すカフェが近所にないので、朝食付きはありがたいサービス。メニューは日替わりでした。名産のくさやはちょっと苦手なので、ふつうのアジの開きでほっとしました。オムレツは私が着席してから卵を溶いて焼き上げたできたてです。料理を褒めると、作っているのはご主人で、奥様が配膳担当だそうです。こんなに丁寧に料理してくれるのなら、夕食付プランにすればよかったと後悔しました。

 

感じのいい奥様が「お客さん」じゃなくて名前で呼びかけてくれます。温泉、ウォーキングと登山という私の計画を話すと「秋の花もきれいですが、6月は木々に一斉に花が咲き始めて、私が一番好きな季節」と教えてくれました。初夏の八丈島もきっとすてきでしょう。奥様は八丈島の生まれではなく、結婚して島に住み始めて、今では島暮らしのほうが長くなったとのこと。

 

島を去る朝、朝食を終えて余裕を持って帰り支度をしていると東海汽船から電話がありました。波が高いので、今朝は底土港ではなく八重根港に入港し、出航時間は変わらないというので、あわててチェックアウト手続きへ。

八丈島は「ひょっこりひょうたん島」のモデルになった島で、ひょうたんのくびれた部分の南側が底土港で、北側が八重根港です。出航時間までに徒歩で到着できる距離ではなく、バス便もありません。フロントの若い女性にタクシーを呼んでもらおうとしたら「お送りします」。フロントが不在になって大丈夫なのかと思ったら、私以外のお客さんは出張の長期滞在。夏はマリンスポーツ目当ての観光客が多いけれど、それ以外の季節はビジネスホテル替わりに利用されているようです。

 

言葉遣いから島の生まれではないようで、「海が好きで八丈島に移住して民宿で働いているお嬢さん」と勝手に想像していたのですが、車中の会話で宿の若奥様だと判明しました。

結婚は5年前で、それまで働いていたのが私の自宅がある阿佐ヶ谷! 知らないうちに何度もすれ違っていたかもしれません。二人のお子さんを保育園に預けながらご主人、義理のご両親とともに家業を切り盛りしています。勤め人の家に育ったので自営業には慣れていないとおっしゃいますが、伸び伸びと子育てしながら仕事もできる環境はけっこういいかもしれません。

 

旅先で垣間見る人生。私の気ままな日々の対極にある勤勉で堅実な人生に頭が下がる思いでした。宿は旧館、新館に加えて新たな館も建設中。コロナの影響で建築資材が島まで届かずオープンが延びているそうですが、二代続けて働き者の女性がお嫁に来て家業が受け継がれています。

易経の坤為地、「積善の家には必ず余慶あり」の一文が頭に浮かびました。善を積んだ家は必ず福が子孫に及びます。ホスピタリティあふれる宿を営んでいる家はこうして発展していくのでしょう。この宿に滞在できただけでも、八丈島に来た甲斐がありました。

 

 

八重根港には猫がいることも若奥様から教えてもらいました。

猫の写真を撮っていると、地元のおじさんから話しかけられました。釣り人が魚を与えるので30匹ぐらい猫がいるそうです。器量のいい猫はもらわれていくけれど、そうじゃない猫は港に留まり、魚をもらって生きていく。「年金暮らしになった俺も猫と同じだよ」。それを言うなら、私もそろそろ猫と同じです。