翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年秋、スペイン巡礼(フランス人の道)。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。おかげさまで三刷になりました。

温泉で自己啓発

島根の温泉津(ゆのつ)には共同浴場があるので、大浴場のないゲストハウスに滞在しても温泉を楽しめます。

 

ノスタルジックな洋風建築の薬師湯。2階には無料の休憩スペースがあり、風情のある街並みを眺めながらゆっくり休めます。温泉津のお湯は薬効があるので、湯上りは心地よい疲労感に包まれるのです。

 

そしてもう一つ、900年以上の歴史があると言われる元湯。

初心者向け、ぬる湯、あつ湯と3種類の温度の浴槽があります。「ぬる湯」と銘打っているものの、かなり熱い。そして「あつ湯」は、平気で入るご常連さんもいますが、足をちょっと入れただけであきらめました。

ぬる湯好きなので、初心者向けがちょうどいい温度です。そんな話を番台の女性に話すと「お湯がぬるいから調子に乗って長湯して、倒れる人がいるから危険」と注意されました。

初心者向けは体を温めるためにちょっと入るだけにして、基本はお湯に短い時間入り、風呂椅子に腰かけて休憩し、また入るのが正しい入浴法です。

「真ん中の温度には入れるけれど、あつ湯はとても無理…」と言ったら、「若いのに、そんな固定観念に囚われていたら何にもできない」と返ってきました。

「若い」というのは相対的な表現で、たしかに番台の女性より私は若いでしょう。それにしても、ひなびた温泉で自己啓発セミナーのような渇を入れられるとは!

そして、浴槽に入らなくてもいいから、上がり湯として、熱いお湯をかけ湯して出るようにとアドバイスされました。

実際に体にかけてみると、たしかに熱いのですが「心頭を滅却すれば火もまた涼し」。山伏の火渡りでは火傷をしないというし、入ろうと思えば入れるのではないか。熱いお湯が苦手という固定観念を手放すんだ!

すんなり入れました。それからは必ず最後は「あつ湯」で締めることに。

 

そうして元湯に通い続けていたところ、80代の元気なご常連と出会いました。筋肉質の体型は日々の筋トレとストレッチ、ウォーキング、そして温泉の賜物。「あつ湯」の注ぎ口の新鮮なお湯を洗面器に取り、顔をつける美顔術を教えてくれました。

そこに初心者の方がいらっしゃり、かつての私のように「あつ湯は無理」とおっしゃいます。「私もそうだったのですが、思い切って入ってみると入れるものです」とアドバイス。まるで新興宗教の勧誘みたいです。そしてご常連は教祖のように、お湯の力を語りますが、姿形とはきはきとした語り口で説得力は満点。ついに初心者の方もあつ湯にチャレンジし、みごとに入りました。その場にいた全員が謎の達成感に包まれました。

 

そういえば10年前も、ご常連から「2分ほどで上がって、浴槽のほとりで休み、繰り返し入るように」「お湯が熱くても一気に肩までつかる」と教えてもらっています。

bob0524.hatenablog.com

「20年後、偏屈な老女ではなく、気さくに初対面の人と会話できるようになりたい」と書いていますが、10年後にして正しい道を進んでいるような気がします。