翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌やビジネス誌の原稿書きを30年。現在はリタイア生活へ移行中。2023年秋、スペイン巡礼(フランス人の道)。2025年夏、ガルシア=マルケスの作品舞台となった地を一目見たくてコロンビアへ。ウラナイ8https://uranai8.jp/で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。おかげさまで四刷になりました。

高齢者のキッザニア

高齢者も働くのが当たり前の世の中になりつつある中、申し訳程度の仕事をして、毎日気ままに過ごしていいものかと思います。

 

スキマバイトなら、スキル不要で高齢者もできる仕事があるそうです。

ホームセンターで品出し中のスタッフに、探している商品の場所を聞いたら「私、タイミーなんで」と返されたという話を聞きました。品出しだけの担当で、お客さんの案内は業務外ということです。

昨年末、新宿の居酒屋で参加者40名ほどの忘年会に行きました。料理は決められたコースで飲み物の注文はQRコードを読み取ってスマホから。瓶ビールがきても栓抜きがないなど、スタッフに頼んでもかなり時間がかかりました。おそらく、繁忙期をスキマバイトでしのいでいるのでしょう。

 

要求水準がゆるいスキマバイトなら私にもできるかもしれない。週刊誌のライターをやっていた頃なら「本誌記者が実体験!高齢者スキマバイトの現場」とか企画を持ち込んだのに…。そんなことを考えていたら、すでに東京新聞でやっていました。

 

 

実際にスキマバイトをやってみて感じるのは、この社会がいかに不安定で脆弱な労働力に支えられているのかということ。 なぜ宅配便はその通りの時間に届くのか、突然の衆院選でもちゃんと投票所が設けられるのか、1万人規模のイベントができるのか、大量のインバウンドにもホテルが対応できるのか。

 

ジャーナリストの潜入取材といえば、ジェームズ・ブラッドワースの『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した』、バーバラ・エーレンダイクの『ニッケル』・アンド・ダイムド アメリ下流社会の現実』などがあります。

最低賃金でぎりぎりの生活を送っていると、日々をやりくりするだけでエネルギーを使い果たし、条件のいい仕事を探す気力も湧いてきません。自炊して冷凍保存するといった節約もできず、手っ取り早くおなかを満たすジャンクフードに手を伸ばしアルコールで憂さ晴らし。貧困から抜け出すのがますます困難になっていきます。

バーバラ・エーレンダイクは細胞免疫学の博士号を取得後、社会問題に興味を抱きフリーランスのライターとなる傍ら、大学でも教鞭をとった才女です。最低賃金で働くうちに、自分の性格が意地悪になっていくのを感じます。銅鉱山で働いていた父親は学位を取得し会社の幹部になりましたが、「もし父親が鉱山で這い上がることができなかったら、私も低賃金労働で働くはめになったかもしれない」と想像します。そして、「キャリアも高等教育もはぎ取られた本当の自分は意地悪で陰険でねたみ深く、思っていたほど賢くもなかった」と分析しています。

 

こういうのを読むと、社会見学気どりでスキマバイトを体験するのもはばかられます。それに、人が考え付かない独創的なアイデアや表現を出すかが勝負の世界で30年以上働いてきたので、マニュアル通りの仕事ができるかどうかも不安です。

 

結局、私が求めているのは「高齢者のキッザニア」。社会とのつながりを確認し、自分も役立っているという気分を味わいたいのです。

 

だったら、スペインに行くしかないかも。

ボランティアが働いているアルベルゲ(巡礼宿)がけっこうあったのです。動機を聞くと「恩返し」「巡礼者として歩いたあと、違う角度からカミーノを見てみたかった」といった答えが返ってきました。

仲良くなった韓国人のスンヒは、アストルガのアルベルゲでボランティアをして伴侶を見つけました。

bob0524.hatenablog.com

 

就労ビザを取得しなくても、寝る場所と食事を提供されて無給で働くのなら問題ありません。教会が運営しているアルベルゲはキリスト教徒であるのが条件でしょうが、個人経営のところなら潜り込めそう。何軒か思い浮かぶ宿があります。

bob0524.hatenablog.com

 

モリナセカで泊まったアルベルゲはベーカリーを兼業していて、巡礼がオフシーズンとなる冬は宿を閉めて、パンを焼くことに集中するそうです。パンを焼く厨房も見せてくれました。どちらの仕事も心から楽しんでいるのが伝わり、こうした幸せな職業人にあこがれます。