日本語学校の作文のクラスには、中国系の学生もいます。
国籍はアメリカ、カナダ、オーストラリア、オランダなどさまざま。そして、台湾、香港、中国本土の学生もいます。
学生のリストには英文の名前しか記入されていないので、漢字の名前を聞きます。
漢字文化圏の日本語を学ぶのですから、漢字の名前を使ってほしいし、個人的に中国の姓名に興味もあります。
そんな光景をうらやましそうにながめる欧米系の学生からは「先生、私にも漢字の名前をつけてください」というリクエストが出ます。たとえばジュリアは樹里亜、ジャステンは蛇寿天(蛇がかっこいいから、ぜひ蛇の字を使ってほしいというリクエストされました)。
中国系アメリカ人の女の子は、「雪麗」という名前でした。
1月生まれで、雪がきれいに積もった日に生まれたそうです。両親の思いが込められた美しい名前です。
一方、「霜」という名前の香港の女の子がいました。「秋か冬に生まれましたか?」と聞くと「いいえ、私は夏の暑い日に生まれました。バランスを取るための名前です」とのこと。
もしかしたら両親は八字(四柱推命)の専門家に相談したのかも。五行の水を喜ぶ命式なのかもしれません。
生まれた季節の勢いの五行に応じた名前をつけるか、バランスを取るために別の五行の名前をつけるか。中華圏の命名は奥深いものだと感心しました。
私の名前も、偶然ですが、五行の喜ぶ気を象徴する漢字が入っています。平凡でおもしろくない名前だと思っていましたが、今では親に感謝しています。
T.S.エリオットに「猫に名前をつけるのはむずかしい。休日のお遊びなんかじゃない」という詩があります。
The Naming of Cats is a difficult matter,
It isn't just one on your holiday games.
真剣に考え始めるとなかなか名前がつけられませんが、別名やペンネームとなると気楽に楽しめます。
先日の教室では「別名:大魔王」「別名:天使」と書いて作文を提出する学生がいました。マクシミリアンとか、セバスチャンとか立派な本名があるのに。
「だって、大魔王は強いし、かっこいいから」「エンジェルという名前でゲームをやっています」と学生たちは説明します。
日頃から「クリエイティブな日本語を書きましょう」とはげましているのですから、私のクラスでは、自由な発想で好きな名前を名乗ってほしいと思います。