翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年秋、スペイン巡礼(フランス人の道)。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。おかげさまで四刷になりました。

何者にもならなくていい街

スポーツクラブのダンス仲間の奥様から「仕事を引退して時間がたくさんあるでしょう、毎日、何しているの?」と聞かれました。

この奥様は私と同年代ですが、ご主人が開業医で定年がないのでそのお手伝いがあり、お孫さんの世話もしています。昔は私のほうが忙しくてお誘いを断ることが多かったのですが今ではすっかり逆転してしまいました。

 

何もしていないと世の中に引け目を感じてしまいがちですが、NHKの夜ドラ「ひらやすみ」を見ていると、別にいいんじゃないかという気もしてきます。ドラマの舞台は私が30年以上暮らしている街です。

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主人公は29歳のフリーターの男性。都会では珍しい釣り堀でゆるく働いています。山形出身で役者を目指していましたが挫折。人柄がいいので仲良くなった高齢女性から一戸建ての平屋を譲り受けるという幸運が舞い込んできました。その語、いとこの女の子が美大に入学するために上京し、二人暮らしが始まります。

原作のコミックも読みましたが、大事件が起こるわけではなく、若者が今の日本で心を壊さずに生きていくむずかしさが描かれています。

 

舞台となった阿佐谷に住み始めて35年ほどになります。

そもそもここを選んだのは、自由業が住みやすい街だから。一昔前はリモートワークもなく、昼下がりの住宅地は主婦と子どもばかりで、いい年をした大人がぶらぶらしていると不審者扱いされそうでした。その点、阿佐谷や高円寺、荻窪は自由業の比率が高く、何をやっているのかわからない人がたくさんいるのです。編集者やイラストレーターも中央線沿線に住んでいる人が多く、近所で打合せができるのも大きな利点でした。

 

現役時代はとにかく忙しくて、中央線の自由な文化をあまり楽しんでいませんでした。リタイアしつつある今こそ、阿佐谷の良さがしっかり味わえるはず。役者や作家、アーティストを目指して若い時期を謳歌していた人が中高年になっても心楽しく暮らせる街です。

 

といってもこの街の住民が全員自由人というわけではなく「ひらやすみ」でも、主人公に家を遺したおばあさんも「将来のことを考えないの? 定食とか結婚とか?」と声をかけていたし、釣り堀のいた男性高齢者は「わしが若い頃は死に物狂いで働いていた!」と声を荒げます。

 

このままでは日本の人口は減少の一途をたどり国は衰えるばかりですが、今の時代に無理やり「産めよ増やせよ」というわけにもいきません。この街は、何者にもならなくても、ささやかな自分の物語を生きられる街であり続けてほしいものです。

 

スペイン巡礼で会った猫の集団に会いました。猫は生産的なことはしませんが、そこにいるだけでかわいくて見とれてしまいます。来世を動物として生きるとしたら猫は第一の選択肢です。