台湾人の張さんが、最近の日本映画で感動したのは「PERFECT DAYS」だと言い、イギリス人のサムも絶賛していたことを思い出しました。
主人公がトイレの清掃員という地味そうな話で、あまり興味を持てなかったのですが、Amazonの配信にあったので観てみました。
役所広司が演じる平山はトイレ清掃員ですが、担当するのは東京財団のプロジェクトによって設置された高品質な公共トイレ。世界的に活躍するクリエイターたちがTOTOの観衆を受けて制作されたものです。
それでもトイレはトイレ。若い同僚は「いくら掃除してもすぐ汚される」と手を抜いていますし、迷子になった子供を保護しても、母親はお礼も言わずに子供の手を消毒します。
平山が住んでいるのは古いアパートですが、物が少なく整理されています。夜が明ける前に起き出して毎日決まった手順で身支度をします。仕事が終わったら銭湯に行き、本を読んで寝るという日々。木の芽を持ち帰って部屋で育てたり、フィルム写真を現像してコレクションするという趣味もあり、なじみの店では丁寧に扱われていることからも、性格のよさがにじみ出ています。たしかに、この年代の男性に多い自分語りもないし、黙々と仕事に打ち込む好人物です。トイレ掃除のシーンに影響され、掃除のモチベーションが上がりました。
監督のヴィム・ヴェンダースは来日時に折り目正しいサービスや清潔さに感銘を受けて、この映画を作ったそうですが、いかにも日本ファンの外国人が好みそうなシーンが続きます。
「消費文化に追われることなく、木の小さな芽や木漏れ日のような、多くの人々が見逃してしまう些細なものに目を留めることができる。本を何冊も買うのではなく、今必要な一冊だけを買い、読み終わったら次の一冊を買う。自分が今必要としているものだけで満足できるのです」とヴェンダースは語っていますが、目の前のトイレに集中して掃除する平山に禅僧の姿を重ねる外国人も多いでしょう。
海外で高い評価を受けた作品ですが、「低賃金の単純労働を美化している」という批判もあります。メディア学者の林香里は「日本の労働環境を無視した上で日本の平穏さを美化する西洋人や男性の夢」「本作を素晴らしいと思うのはお金持ち」など辛辣です。
労働市場から降りつつある私は、小さな楽しみをつなぎ合わせる生き方が大いに参考になりました。
そして私にとってはおなじみの70年代の音楽が使われているのもうれしいところ。映画のタイトルにもなった挿入歌、ルー・リードの「PERFECT DAY」。
Just a perfect day
Drink Sangria in the park
And then later, when it gets dark we go home
Just a perfect day
Feed animals in the zoo
Then later, a movie too and then home
完璧な一日とは、公園でサングリアを飲んだり、動物園で餌をやったり、映画を観るといったささやかな楽しみのある日。
ただし、歌の終わりは聖書からの引用で、自分で蒔いたものは刈り取らねばならない(You're going to reap just what you sow)と釘を刺されます。

私にとってのPERFECT DAYSは、スペイン巡礼の日々。朝日が昇る前に起き、決まった手順で身支度をして歩き始めます。巡礼宿に着いたらまずシャワー、洗濯。楽しみは巡礼者や地元の人との会話とバルのワイン。明日来て歩く服を着て簡素なベッドの上に寝袋を広げてその中で眠ります。場所は異なっても、毎日同じことを繰り返していました。