わざわざ映画館で観るところまでいかないけれど、映画館で予告編を見て心惹かれたのが『アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル』。Netflixで観ることができました。
かなり脚色された部分もあるそうですが、トーニャの育った家庭がすさまじい。貧乏な白人を意味する「レッド・ネック」「ホワイト・トラッシュ」という言葉がありますが、貧しさに加えて虐待母にスケートを強要されるという悲惨な状況。母親役のアリソン・ジャネイがアカデミー賞の助演女優賞を受けています。
虐待を受けて育った子供は、結婚後も同じような家庭を作りやすいと言われてますが、トーニャの夫もすぐ暴力をふるい、トーニャも負けずにやり返します。
「ナンシー・ケリガンは1回殴られただけで世間に同情されるけれど、私は100万回殴られている!」というトーニャの台詞が哀しくておかしい。
トーニャを演じるマーゴット・ロビー、どこかで見たと思ったら『ウルフ・オブ・ウォールストリート』、テレビドラマ『パンナム』にも出ていました。頭が空っぽのブロンド美女の役を振られることが多いのに嫌気がさして、自分で出資しこの映画のプロデューサーになっています。もともとアイスホッケーをやっていたことに加え、コーチについて1日4時間のスケート練習を週5回、4か月続けたというから、根性が入っています。
映画製作にあたってマーゴットがトーニャ本人にも会った時、「若くして有名になると転落しやすいのに、どうしてあなたはうまくいっているの?」と質問されたそうです。育った家庭は悲惨でも、トーニャは女子選手としては史上二人目のトリプルアクセルを成功させた才能あふれるスケーターで、道を誤らなければ、幸せな人生を歩むこともできたかも。
マーゴットは「周りの人に恵まれたから」みたいな返事をしていました。
典型的なアメリカのブロンド美女に見えるマーゴットですが出身はオーストラリア。祖父母が所有する牧場で育ち、シングルマザーの母親の家計を助けるために清掃員、サブウェイやサーフィンショップの店員などのアルバイトを掛け持ちしていたそうです。
家が裕福でアルバイトをしなくてすむ学生は、貴重な人生勉強の場を失っています。家庭教師は実入りがいいけれど、それ以外に店員やウエイトレス、肉体労働系のアルバイトは若いうちにぜひやっておくべきです。
ハリウッドでオーディションを受け続ける無名時代も大変だったけれど、名前が知られるようになったらなったでそれも大変です。批判を受けて傷つくことも多く、人生が奇妙なものになっていったとマーゴットは語っています。
自分の周りで正しい人たちを見つけて、業界内で自分の居場所、自分のチームを作っていったんだけど、すべてのことが固まる前は、本当に命綱がない感じだった。少し錨が外れている感じで、不安定だった。
占いでよく出る質問。
「生年月日が同じなら同じ運命になりますか?」
周りの人間が違うのだから、同じ日に生まれても運命は人それぞれ。そして成長すれば自分で付き合う人も選べます。トーニャ・ハーディングはスケートの才能があったのだから、夫やコーチを慎重に選んでアドバイスに真摯に耳を傾けていれば別の人生が開けていたはずです。
コロナ禍で外出自粛が続き、ほとんど人と会わない日を送っていますが、自由に出歩けるようになっても、付き合う人は選ぼうと改めて思いました。