『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』に夢中です。
共感性が乏しく、他者の感情を想像できないのが自閉症の症例の一つ。そんな障害を抱えたヨンウが弁護士として成長していくのがドラマの見所です。
ヨンウの幼少期のエピソードが随所に挿入されます。
男手一つで障害児を育てる父の苦労。
「あの子(孫)は私が育てるから、あなたは再婚しなさい」という自分の母親からの電話を切って、娘のところに向かう途中、素足でおもちゃを踏んでしまった父。「痛い!」と叫んで転んでも娘はブロックを正確に並べることに夢中で父のほうを見ようともしません。父の目に浮かぶ涙が印象的でした。
人の心はわからないけれど、記憶力は抜群で成績のいいヨンウは学校でいじめられます。高校時代にかばってくれた風変わりなグラミとは、特別な挨拶を交わす親友になりました。
そして、ソウル大学法学部とロースクールの同級生で、大手法律事務所で同僚となったチェ・スヨン。私が最も好きな登場人物です。
スヨンは完全な善人ではありません。障害を持つヨンユを手助けしてきたのですが、試験があると常にトップはヨンウで、内心もやもやしてきたようす。日本女性も生きづらいけれど、韓国女性もかなり大変そう。
やっとの思いで入社できた大手法律事務所に後からヨンウが入って来て、複雑な思いだったでしょう。でも、ヨンウを見捨てることはできず、腹黒策士とチームを組まされたヨンウが失敗しないように助言します。
自閉症のヨンウは決まった味のものを好み、食事はいつもキンパプ(韓国式海苔巻き)。ペットボトルのふたが開けられません。
「腹黒策士」「どたばた」と呼び合っていることを知って、スヨンは「私にもあだ名をつけて」。
「童顔スヨン?」「美女スヨン?」と候補を自分で言うのですが、ヨンウの答えは「違う、そうじゃない、あなたは…春の日差し」。
このシーン、何度見ても涙腺が崩壊します。
ロースクール時代、講義室の場所や休講情報、試験範囲を教えてくれて、私がからかわれないようにしてくれた。
今もふたを開けてくれて、のり巻きの日は教えると言ってくれる。
あなたは明るくて、温かくて、思いやりにあふれた人なの。
春の日差し、チェ・スヨン。
期待もしていなかった言葉に驚き、心を震わせるスヨンの表情。この女優さん(ハ・ユンギョン)も上手だなと思います。
腹黒策士はその後、ヨンウが親のコネで入社したことを匿名でネット掲示板に書き込みます。日本ではコネ入社はそれほど問題になりませんが、競争が激しい韓国では大統領の失脚につながるほど大問題なんでしょう。
会社の人たちに噂されるヨンウをかばって、スヨンは「ソウル大学首席卒業なのに障害のために入社できなかったのが間違っている」と大声で宣言するシーンも感動的でした。
釜山を旅したのは2018年の初夏でしたが、いたるところで春の日差しのような優しさを感じました。
空港のバス乗り場では、こちらが何も言わなくても行先のホテルを確認して乗るべきバスを教えてくれた親切な係員がいました。
タクシーで従軍慰安婦像の前を通り、思わず身を固くしていると「昔にこだわっている頭の固い連中はどうしようもないね」と運転手さん。
そして店番を放り出して探していた海鮮料理店に案内してくれたお姉さん。教え子の紹介だというと、満面の笑みを浮かべた食堂のおばさん。
釜山には気軽に何度も来れると思っていたのに、コロナで中断。また訪れたい場所です。