シスターフッドに興味を持ったのは、岡田育『我はおばさん』を読んだから。
母と娘の関係はどうしてもこじれる。だからこそ、縦の関係じゃない斜めの関係、血縁の伯母さん・叔母さんに加えて通りすがりのおばさんの存在が女の人生を救うことがあります。
NHKあさイチで毒親が取り上げられ、ネット上でもかなりの反響を目にしました。
どの母にも多かれ少なかれ毒があります。白雪姫に毒リンゴを食べさせたのは、原作では継母ではなく実母です。
昨年の10月のNHKラジオ英語会話で、こんな夫婦の会話がありました。
Paul: Hi, Riko. I'm home.
Riko: Hi, Paul. Did you buy the princess costume for Hannah's Halloween event?
Paul: Yes. I got a pink one.
Riko: But she wants a purple costume, not a pink one. She may get disappointed.
Paul: Sorry, but they only had pink ones left.
Riko: Ha-,well, I guess I'll have to make another costume for her myself this year.
Paur: Do you have time to do that?
Riko: Not really. But you know how picky Hannah is about everything.
娘のためにプリンセスのコスチュームを買って帰った夫のポール。色はピンク。妻のリコは、娘が望んでいるのは紫だからがっかりするだろうと言います。ピンクしか残っていなかったとポール。好みにうるさい娘のために妻は衣裳を手作りすることになります。
学ぶべき文法や語彙が吹き飛びました。こういう母親像に激しく動揺するからです。私はここまで母にかわいがられたことがありません。しかもラジオ英会話の設定では、リコは娘の上に息子もいて、会社員としてバリバリ働いているのです。
母に虐待されたこともないし、進路も好きに選ばせてくれました。それでも、子育ては好きじゃないことを子ども心に感づいていました。
田舎の家にとって待望の長男である兄がいたこともあり、一つ下に生まれた私はおざなりな扱いでした。父は外国航路の船員で長期の不在。舅姑と同居の上、鬼のような小姑たちにいじめられる日々で母は精神的なゆとりもなかったのでしょう。
父の船が日本各地の港に寄港すると、家族は面会に行くことができます。母にとっては貴重な息抜き。母は本を取り出して一心不乱に読みふけり、幼児だった私に邪魔されることを嫌がりました。母と電車に乗っても、私は景色を眺めるしかありませんでした。
母が私に求めたのは優秀さ。自分で稼ぐ力さえあれば、嫁ぎ先の理不尽な支配に従わずにすみます。家の手伝いより勉強を優先してくれたおかげで、好きな進路を選べました。
日本語教師になったのは、母に認められたかったから。フリーランスのライターもよかったけれど、それより真っ当な仕事なら母はもっと喜んでくれると無意識のうちに考えていたのです。
母の死でようやく目が覚めました。
母の介護が必要となった2004年以来15年間、月に一度は東京から神戸の実家に通いました。老々介護の父を手助けし、母を送ったのが2018年末。2年後に父も旅立ち、子としての義務は果たしたつもりです。
自宅に腰を落ち着けることなく、あちこち旅ばかりしているのは、母への反発もあるかもしれません。