デール・カーネギーの『道は開ける』は自己啓発本の古典であり、現代にも活用できる知恵が満載です。ウラナイ8のサイトでも紹介しました。
そして、現代には現代にふさわしい自己啓発本があります。『シングルタスク 一点集中術』はネット依存症の現代人への一冊。
一つのタスクに集中する人がもっとも能率が高く、マルチタスクをやめるだけで成果が上がる…耳の痛い指摘です
掃除や洗濯など毎日の家事。禅の教えでは、作務に無心で真剣に取り組めといいますが、私はマルチタスク。録音したNHKラジオの英語講座を聞きながら皿を洗ったり床を磨いています。
これはOKです。「意識的な努力を必要としない活動は、メインの作業と同時におこなうことができる」とあります。皿洗いや床磨きは毎日のルーティンなので、意識せずに体が動きます。
そして、意識的な努力を必要とする活動はシングルタスクに徹するべきです。
携帯電話が普及し始めた頃、広告業界で働いていました。会議中なのに、これ見よがしに携帯をデスクに置き、着信があるとすぐに出る人。目の前の私よりも、遠くにいる相手の方が重要なのかと憤慨しました。
元国務長官ヘンリー・キッシンジャーの講演会でボランティアを務めた若きサミュエルのエピソードに心打たれました。
キッシンジャーの旅行鞄が紛失し、着替えのシャツがなくなってしまいました。あわてて新しいシャツを買いにでかけたサミュエル。
買い物から戻ってくると、キッシンジャーは礼を言い、ぼくが選んだシャツを受け取った。彼はそのあいだずっとぼくの目を見つめつづけていた。一度もほかのところに注意をそらすことなく、ぼくだけに意識を向けてくれた。すべてのことを排除し、ぼくだけに集中するという努力をしてくれた彼のことを、ぼくは一生、忘れないだろう。
キッシンジャーは、まるでぼくが宇宙で唯一の人間であるかのように思わせてくれた。もちろん、一緒にすごした時間は短かったが、あのときの強烈な印象はいまも鮮やかに残っている。
キッシンジャーはさまざまな債務を負った偉人という言葉では表現しつくせない人物だ。彼には、ぼくに礼を尽くし、きちんと対応する必要などなかった。それでも、彼はぼくのことを思いやってくれた。あの能力が、世界を相手にする外交家としても大いに役に立ったのだらう。
すばらしい! 世界を相手にするには、まず目の前の一人から。
この一節も胸に刻みました。
心と肉体を同じ場所に存在させるのだ。出席する(be present)とは、「今この瞬間に意識を向ける」(be present)ことなのだから。
私がシングルタスクに徹するのはズンバのレッスン。音楽に耳を傾けて体を動かすだけで精一杯。他のタスクが入り込む余地はありません。ライターと日本語教師の二足のわらじで極限状態にあった3年間、ズンバによって正気を保っていました。
ジムでエクササイズをするには、心身ともに完全に集中しなければならない。
レッスンで周囲に置いていかれないようにするには、100%集中しなければならない。そして、毎週、新たなリズムの新たな動きを覚えていく、
肉体と精神を同様に集中させるために、受講者は容赦なくシングルタスクを迫られる。
願わくば、一日でも長くズンバのレッスンに出られますように。
熊本の小泉八雲邸宅。デスク周辺がこれだけシンプルだったら、執筆にも集中できたことでしょう。