翡翠輝子の招福日記

本業は女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)、ビジネス記事翻訳。副業で外国人に日本語を教えていましたが、2019年3月で卒業。フィンランドが大好き。ウラナイ8所属。

コロナの時代に観る『映像の世紀』

本の整理をしようと思い立ち、古い本の棚卸しをしています。

 

自己啓発本の古典、デール・カーネギー『道は開ける』。

原題は"How to Stop Worrying and Start Living"(悩むのをやめて、人生を始める方法)。悩んでばかりの人間は、生きることを放棄しているということでしょうか。

 

両親の本棚にあったので、初めて読んだのは高校時代。アメリカ人の考え方が新鮮で、日本よりアメリカに暮らしたいと夢見たものです。

先の見えないコロナの時代にちょうどいいと考えて再読しました。古臭いところもありますが、現代にも通用する自己啓発ネタが散りばめられています。

 

巻末にさまざまな人の悩みの克服法が紹介されています。

経済学者のロジャー・W・バブソン氏「私は一時間以内で楽天家に変身できる」。

書斎で目を閉じて、歴史関係の書棚から一冊を取り出し、行き当たりばったりに読み始めるのです。

読めば読むほど、世界は常に苦闘の渦中にあり、文明は常に危機に直面ししていたころが理解できる。

(中略)

一時間ほど歴史をひもといていると、現状は決して良くないけれども、過去に比べるとはるかに良くなっているという事実をはっきり認識できる。これによって私は、全体としての世界が少しずつ良い方向に動いているのを知ると同時に、私の現在の悩みについても大局に立って考えることができるようになる。 

 …とは言うものの、去年の春からのコロナ禍は人類歴史上に刻まれる苦難でしょう。たまたま日本にいるから、それほど悲惨なことになっていないとはいえ、このままデルタ株の拡大が続けばどうなるでしょうか。

 

そこで、NHK映像の世紀』を観ることにしました。NHK内部に気骨のある人がいて、あえてオリンピック開会式前夜に再放送を始めたという説もありますが、たしかに絶妙のタイミングです。後世の人に「どうしてあの時、オリンピックを止めなかったのか」と聞かれたら、「第二次大戦と同じで、政府が『もう決まったことだから』と押し切ったから」と答えるしかありません。

 


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圧倒されるのは、第4集『ヒトラーの野望』、第5集『世界は地獄を見た』。いったん再生を止めると二度と観ないような気がして、一気に最後まで観ました。

 

ナチスホロコースト関連の本やドラマ。ドイツと同盟国だった国の人間として、知っておく義務があると思い、昨年の春は『これが人間か』を再読しました。

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『これが人間か』や『夜と霧』など、生還者がいるから当時を伝えられるわけですが、ほとんどの収容者は命を落としています。『映像の世紀』では、それが人間だったとは意識できないほどあまりにも多くの死体が映し出されました。

 

当時のドイツ国民が残虐な差別主義者だったわけでなく、ナチスに関わらなければ善良な市民として生きたであろうことは、多くの作品で描かれています。

 

じゃあどうしてこのような事態が起こったか。

ヒトラーの天才的な演説も『映像の世紀』で観ることができます。

私は我が民族の復興が自然にできるとは約束しない

国民自らが全力を尽くすべきだ

自由と幸福は突然、天から降ってはこない

すべては諸君の意志と働きにかかっている

 

我々自身の国家のみが

我々自身の国民のみが頼りとなる

ドイツ国民の未来は

我々自身のうちにのみ存在するのだから

国民自身が国民を向上させるのだ

勤勉と決断と

誇りと屈強さによって

ドイツを興した祖先と同じ位置に上がることができる

 

ある国の人間であること以外誇ることがないので右翼化するネトウヨはもちろん、意識高い系までカバーする見事な演説です。私が当時のドイツ国民だったら、迷わず入党したでしょう。日本の政治家の伝達能力のなさが批判されていますが、演説の下手な政治家は大衆を扇動することはありません。

 

そして強制収容所以上に衝撃的だったのが、フランス解放後のパリ。ナチスに協力したフランス人女性が公衆の面前で丸刈りにされる映像。

 平和な時代に生きているのはなんと幸運なのだろうと思ってきましたが、コロナによって日本がどうなるか、予測できません。凡庸な人間は加害者と被害者、どちらにもなりえると胸に刻みました。

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スペインの港町、カディスの大聖堂。複雑にからみあったヨーロッパ各国の歴史がよくわかり、『映像の世紀』は歴史の教科書としても秀逸です。