本格的な老いに突入する前にコロンビア行きの野望を抱いていました。
愛読しているガルシア=マルケスに加えて、ずっと熱中しているズンバの創始者ベト・ペレスもコロンビア人です。
コロナによってコロンビアどころか、日本の外に出ることができなくなった今、2年前の秋のスペイン旅行が、今となっては夢のよう。
マドリッドからラマンチャ地方、セルビアを周り、カディスまで南下。カディスから多くの人々が新大陸へと渡った港ですし、マドリッドの空港で南米行きの便の多さを目にし、スペインと南米の近さを実感しました。
スペインの食べ物は美味しいし、人々は陽気で親切だし、すっかり気に入りましたが、コロンビアをあきらめることもできず、JALのサイトで航空運賃を調べたり、個人の旅行ブログを読んだりしていました。観光ではなく暮らすように滞在し、現地のフィットネスクラブでズンバのレッスンを受けることが夢です。
コロンビアは物騒なイメージがあります。
1994年のサッカーワールドカップでオウンゴールをしてしまったアンドレス・エスコバルがコロンビアに帰国して射殺された事件は、ガルシア=マルケスの『予告された殺人の記録』が現実化したかのよう。
外国人旅行者がいきなり殺されたり誘拐されるような無法地帯ではないでしょうが、現地に知り合いがいれば何かと心強いはず。
カウチサーフィン、すっかり下火になったみたいですが、日本を旅行するコロンビア人をホストすれば友人になれるかも。フィンランドはこの作戦でうまくいきました。
それから、昔教えていた日本語学校にコロンビア人学生指定でホームステイを受け入れいてもいいし。ヘンリク君と親友になれたのはこの方法だったし。
そんなあれこれの思惑は、コロナで吹っ飛んでしまいました。
休館していたスポーツクラブが再開しましたが、60分のレッスンが40分に短縮されています。マスクをして長時間運動するのは良くないと言われているので、コロナが落ち着くのを待つしかありません。
貴重な若い時代の自由を制限された若者のことを思えば、いい年の人間があれもこれもと欲を持つのはみっともないものですが、先の希望がないと人は生きていけません。
萩原朔太郎は「ふらんすへ行きたしと思へども ふらんすはあまりにも遠し」に続けて、「せめては新しき背廣をきて きままなる旅にいでてみん」と書きました。
国内でも気ままな旅はむずかしい状況ですが、せめてYouTubeを検索してメレンゲやサルサのステップを練習しています。
小樽の老舗喫茶コロンビア。室内には巨大シャンデリアとグランドピアノ、深紅のソファ。小樽の最盛期を思わせる豪華さで、ガルシア=マルケスの小説の舞台になりそう。広い店内を一人で担当していた女性店員さんはとても丁寧な接客でした。小樽のドーミーインに長期滞在してコロンビアでお茶したり、いかにも昭和のパフェやプリンアラモードを楽しむ日々も夢見ています。