引き続きエリザベス・ギルバートの本から。
彼女がインドネシアのバリ島を再訪したのは、治療師にして手相観のクトゥに「ここに戻って来て3か月か4か月、住む」と予言されたことがきっかけでした。
バリ島で出会ったもう一人の治療師がワヤン。病気や怪我だけでなく子づくりがうまくいかない夫婦の治療もする女性ヒーラーです。
不妊の原因が女性にあれば、古来の治療法で治せるけれど、問題は男性側にある場合。
厳格な家父長制度が続いているバリで、不妊の原因が夫にあるとは告げるのはむずかしいのです。そして、子供を授からないのは妻のせいとされ、暴力をふるわれたり離縁されたりします。
ワヤン自身も夫の暴力に耐えかねて離婚し、子供の親権を取るために全財産をつぎ込んだ女性ですから、不妊の原因を押し付けられた妻への理不尽な仕打ちにがまんできません。
そこでワヤンが編み出した方法。
夫には「あなたの妻は不妊症であり、治療する必要がある」と告げ、妻だけで治療院に来させます。そして、村の若い青年を呼んで、赤ん坊を宿すように性交渉させるというのです。呼ばれるのは、おしゃれで長髪のハンサムな運転手たち。9か月後、美しい赤ん坊が誕生してみんなが幸せになる。
絶句する話ですが、バリの男性にとって子種がないということは、自らのアイデンティティを失うも同然。一族の継承が最重要事項ですから、誰も不幸にならない不妊治療ともいえます。
そのうちバリにも血液検査やDNA鑑定が定着したら、どのようになるのかでしょうか。
昔、主婦向け雑誌で不妊治療の記事をよく書いていました。
夫側に原因がある場合、非配偶者間の人工授精(AID)という方法があり、精子のドナーは慶応大学医学部の学生だったので、優秀な子供が生まれる確率が高かったという話を聞いたことがあります。その後、子どもの「父親を知る権利」を重視するため、ドナーが確保できなくなったそうです。
今や日本では生まれてくる子供の15~16人に一人が体外受精。何が何でも自分が生んだ子供を育てたいと願う女性がそれだけいるのでしょう。
南米の家族観も独特です。
ガルシア=マルケスの一族の男たちは、妻以外の女性と子供を作ることが多いのですが、そうした子が訪ねてくると、実の子同様に歓待するのが習わしだったそうです。
長年、指導してもらっているズンバとピラティスのインストラクターのご主人は南米出身。ピラティスのクラスは年配の参加者もいて、雑談中に「南米でも嫁姑問題なんてあるの? こんなに遠い国のお嫁さんをもらうことに反対されなかったの?」なんて質問が飛び出します。
「夫の実家には誰かわからない人が一緒に住んでいて、嫁とか姑とかいちいち気にしないみたい」との答え。なんて大らかなこと。
ガルシア=マルケスの自伝『生きて、語り伝える』に登場するおばさん。
ほとんど90歳になろうとしている時、予告もなく完全な喪服姿でやって来て、陽気な声でこう伝えます、
「みんなにお別れするために来たんだよ、あたしはもうじき死ぬことにしたんでね」
そのまま家にとどまって、じっと時が来るのを待ち、死んでいったのは見事ですが、死んだのが102歳とあり、愕然としました。10年以上居候していたのか!
こういった話を耳にするたびに、私が常識とか社会通念と思ってきたことは日本特有のものだったことがわかります。
占い師として対面鑑定を行っていたころは、家族関係の悩みもよく持ち込まれたものですが、家族はこうあるべきという思い込みを手放せば、悩まなくてすむことも多いのです。
九星気学で不妊に対処するなら、夫婦和合の方位の北、あるいは一白水星が巡っている方位の温泉旅行を勧めます。非科学的ですが、不妊で切羽詰まっている夫婦が旅行で一息入れるのも悪くないはずです。