キンドルを使うようになって、気軽に本を買えるようになりました。
本棚はもう一杯で、新しい本を買うためには古い本を手放さなくてはいけないのですが、電子書籍なら収納スペースは不要です。
今週、読んだのがこれ。
「評価経済社会」という言葉がブームになったのは2012年頃。この本ではこんなううに説明されています。ハイパー情報化社会では、沢山の情報が流通しています。モノやサービスに対する「評価」も情報として沢山流通しています。貨幣と商品を交換し合う貨幣経済社会に対して、評価と影響を交換し合う経済形態を私は「評価経済社会」と名付けました。
そして、評価経済社会を生きるために、本当の「いいひと」にならなくても戦略的に「いいひと」になるという考えには大いに共感しましたが、「これはやらなくていいかな」というものも。
たとえば、Twitterでは、沢山の人をフォローしてリツイート。フォローされたらフォロー返し。Facebookでも「いいね!」を押してコメントするなど。
Twitterはブログ更新の告知をするぐらいで、Facebookはメール機能しか使っていない私は、いくら戦略と言われても、気が進みません。
それよりも、カウチサーフィンこそ「いいひと」戦略が必要だと思います。
無償で外国人旅行者を自宅に泊めるカウチサーフィン。「そんな無謀なことを!」と驚かれることが多いのですが、私なりに「いいフィンランド人」を引き寄せるために「いいひと戦略」を取ってきました。
まず、外国で泊めてもらうより、日本の自宅に泊めてあげる活動から始めました。
カウチサーファーの平均年齢(29歳)を大幅にオーバーしている私が、いきなり外国人に泊めてほしいというリクエストを出しても断られるのは目に見えています。「いい年して、ホテル代もないの?」と思われるのがオチです。
まず、「いいホスト」という評価を得ないことには始まらないと考えたのです。
そして外国人なら誰でもOKというわけではなく、厳選しました。
プロフィール欄には明記していませんが、ホスト経験のないサーファーは基本的にお断りしています。自分は人を泊めずに、旅先では人の家に泊めてもらいたいというのは、ずうずうしい旅人かもしれません。大学の寮生活などで、人を泊められないという事情もあるでしょうけど、年が離れてすぎていると、ホストマザーとしてお世話するだけの関係になる危険もあります。
それに、自分がホストをしている旅人は、最上のゲストとなる可能性が高いのです。
選びに選んだカウチサーファー第一号はヘルシンキ在住のドイツ人女性。
スザンヌをホストすることで、カウチサーフィンのおもしろさに目覚め、さらに評価を上げようと決意したのでした。
カウチサーフィンのプロフィールサイトには、自宅のカウチの説明、趣味や性格などに加え、ホストやゲストからのレファレンスも書き込まれます。
リクエストを送ってきた旅人のプロフィールに次々と目を通しているうちに、読み方のコツもわかってきました。
「ポジティブ」「ニュートラル」「ネガティブ」の3段階評価では、大半が「ポジティブ」。「ネガティブ」は「約束した日に現れなかった」「冷蔵庫の中の食品を勝手に食べた」「約束の日数以上に居座ろうとした」など、よほどの狼藉がない限り付けられません。
「ニュートラル」も要注意。「彼は夜遅くやって来て、翌朝は早く出発したので、ほとんど話していません」とあれば、無料宿泊所替わりに使われたということ。カウチサーフィンで最も嫌われるフリーローダー(タダ乗り)です。
「ポジティブ」でも、単に「よかった」「楽しかった」とだけ書かれてあるのは、結婚披露宴のスピーチや見合いの釣書のようなもの。割り引いて考える必要があります。
私が求めているのは、単に外国人旅行者を泊めて英語の練習になったというレベルではなく、もっと深い交流です。
だから、具体的にどんな交流があったかが書かれてあるリファレンスを好むし、私もそんな内容のリファレンスを書くように努めています。
中には文章を書くのが得意ではなくて、短くてシンプルなリファレンスしか書かないという人もいるかもしれませんが、ライターという職業の私は文章を書いたり読んだりするのが好きな人と気が合う確率が高いのです。
これまで8人の外国人旅行者を泊めて、カウチサーフィンのネットワークで「いい人」戦略は着々と進みました。
昨年秋のフィンランド旅行では、ホストした旅人の家以外に、リクエストを送って受け入れられたケースもあります。
ヘルシンキ在住の編集者のエリカのお宅です。
森でキノコ狩りをしたり、エリカの働く出版社、長男のラウリ君の通う小学校の授業も見学させてもらいました。
エリカが私をホストしてくれたのは、元々日本好きであったことに加え、私が次々とフィンランド人を東京でホストしていることをカウチサーフィンのサイトを通して知ったから。
「フィンランド人にこれだけ親切にしている日本人なら、悪い人じゃないはず」と判断したことは想像に難くありません。
そして、今年の6月にシカゴから来たマイケルと銀座で会ったのは、お互いのカウチサーフィン歴を評価しあったからこそ。
初対面でも、会ってすぐに打ち解けることができたのは、二人ともカウチサーフィンで「いい人」戦略を取り、その成果を存分に楽しんでいるという前提があったからです。
そして、アンネとはカウチサーフィンの枠を超えた関係に。
優春翠の故郷・島根県川本町では、新聞にも取材されました。
「いい人」と出会うためには、まず自分が「いい人」になること。
本格的にカウチサーフィンを始めて1年半ですが、大好きな国フィンランドがぐっと身近になり、世界は一気に小さくなりました。
ヘルシンキ大聖堂の前で繰り広げられたレニングラード・カウボーイズの「トータル・バラライカ・ショー」がすべての始まりです。