「全身ユニクロ」という言葉があります。昔は安価なイメージがあったので「金持ちなのに全身ユニクロ」みたいな使い方をされていましたが、今やリーズナブルな価格で品質のいいスマートカジュアルのブランド。全身ユニクロで洗練されたコーディネート例などが紹介されるようになりました。
マドリードのユニクロのお店。プエルタ・デル・ソル(太陽の広場)近くの一等地にあります。店頭で花を売っていました。こういうのは各国の裁量に任せているのでしょうか。
このところ、旅のスタイルは全身ユニクロならぬ全身モンベルとなりつつあります。昨年7週間のスペイン巡礼では、洗濯を繰り返しながらほぼ同じ服で過ごし「何を着ようか」と悩まないですむのは本当に楽でいいと実感したのです。アウトドアウエアは軽くて動きやすいものが多く、昼過ぎに巡礼宿に着いて手洗いして干せば夜には乾いていました。
そして、歩きやすい靴となるとローカットのトレッキングシューズ。
旅行バッグは軽いレスポートサックを使っていましたが、靴に合わせてモンベルのバックパックになりました。
キャリーケースは持っていません。いかにも旅行者然としているし、温泉宿などでは外を転がしてきた車輪がついたケースを部屋に持ち込むのがはばかられますし。
そして、何よりいいのは登山ウエアだと「贅沢を求めず単独行動を好む人」として旅先ですんなり受け入れてもらえるのです。
5月の那須湯本の旅で実感しました。
登山ウエアにバックパックという旅姿だったので、「明日はどの山へ?」と聞かれました。女一人で地方を旅するには登山姿はなかなか都合がいいのです。メンタルに問題がある訳あり旅でもなく、深刻な病気を抱えて藁にもすがる思いの湯治客でもないと一目でわかり、宿の人も安心でしょう。
先日、五所川原の吉幾三コレクション・ミュージアムに立ち寄ったときのこと。
開館早々だったので館内には受付の女性一人だけ。見学のあと、あれこれ話していたら「何かスポーツをやってらっしゃいますか?」と聞かれました。地元の人や他の旅行客にも私のような恰好の人はいないから好奇心を持たれたのかもしれません。
「歩くのが好きなので…」と言葉を濁していると、「背が高くて、姿勢もいいから」とお褒めの言葉。体型に合ったバックパックだと背筋が伸びるのです。
これから服を新調するならモンベルと決めました。ブランドを絞ることで余計なものを買わなくて済みますし、モンベルの異名は「アウトドア界のユニクロ」。外国製の登山ウエアより求めやすい価格です。
目標はいくつになってもモンベルを着こなせる老女。美術館や高級レストランとは無縁の自分らしい旅を続けます。