ブログを通して交流している、よかよかさん。
稲垣えみ子『人生はどこでもドア リヨンの14日間』という本を教えてもらいました。
「旅に出たからといって日頃興味を持っていないことをやってもおもしろくない。料理や洗濯、掃除や買い物など旅先で日常生活を送りたい」という稲垣えみ子の考え方は玉村豊男と同じです。そこで、フランスのリヨンに2週間滞在して日常生活を送ることに。
悪戦苦闘です。私が体験したスペイン巡礼だと、地元の人たちは日々通り過ぎていく巡礼者の扱いに慣れているので、どこでも受け入れてもらえましたが、リヨンとなるとそうはいかないでしょう。しかし稲垣えみ子は4日目にして地元のカフェで開眼しました。
楽しそうにおしゃべりしていたおばあさん二人組が帰ろうと席を立とうとしたところで何となく目があい、にっこりしたらおばあさんも天使のような笑顔を返してくれました。フランス語で熱心に話しかけられて、かろうじて「サイレンス」という言葉だけが聞き取れたので「うるさくおしゃべりしてごめんなさいね」とおっしゃりたかったのではないかと推察。ぜんぜんそんなことないからと、顔と手を振ったら、おばあさんはにっこり笑って手を振って帰ってくれた。
たったこれだけのことで、銭湯と同じだと気づいたのです。
自分の居場所を作っていくのに必要なことは、きっと語学力でもないし、お金でもないし、いやどっちもあるに越したこたあないですが、そこに本質はないんじゃないでしょうか。
つまりこれって……我が愛する銭湯と一緒です。
財産も、名声も、地位も関係ない。ただその人の「ふるまい」と「佇まい」だけがその人の価値を決めるのが銭湯だと思ってきましたが、まさかリヨンが銭湯だったとは!(笑)
そうです、公共浴場デビューはけっこう大変。いわゆる「主」が仕切っている空間に入って行くのは勇気が要りますが、そこで認められたら、世界で通用するコミュ力を手に入れたようなもの。
『人生はどこでもドア リヨンの14日間』を読んでまた旅に出たくなりました。ザ・バンドのロビー・ロバートソンは「音楽が世界を広げてくれた。どこへでも連れて行ってくれた」と語っていましたが、本を読むのも同じ効果があります。
スペイン巡礼で会ったスロベニア人のカップルの女性は「ベロニカ」という名前でした。「スロベニアのベロニカ! パウロ・コレーリョの本の通り!」とびっくりしたら、「どうやら私たちは同類。いつも本を読んでいるタイプ」と言い当てられました。スペイン巡礼のために読んだ本をお互いに紹介して盛り上がったのを覚えています。
スペイン巡礼中に出会った私設図書館。読み終えた本を入れて、誰でも自由に持ち帰ることができます。世界のどこに行っても読書愛好家がいます。