翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

旅のスタイル

今年はウィークデーを中心になるべく旅に出るようにしていますが、いわゆる観光のようなことはあまりせず、旅先でも日常の延長のように過ごしています。若い頃に読んだ玉村豊男『旅する人』の影響です。

 

パリ大学言語学研究所に入学後、東京大学仏文科卒の玉村豊男は毎年のようにパリを訪れるのですが、有名な教会や寺院、博物館や美術館などの観光名所にはほとんど行かなくなったそうです。

 考えてみると、日本で暮らしているときに、連日お寺や教会ばかり訪ね歩いている人はまずいまい。

 美術館博物館にばかり毎日通っている人も滅多にいないだろう。いるとすれば模写中の画家か美術評論家くらいのものだ。

 ごく普通の人は、仕事場と自宅のあいだを往復し、そのどちらかに近いところで毎日の買物をしたり一杯飲んだり、要するにごく狭い限られた範囲の中で生活している。その生活が、一年三六五日の大半を占めている。そういう人が、外国へ行ったからといって、突然お寺ばかり巡り歩くのはおかしいではないか。三日で五か所の遺跡を見るのは、不自然ではないか。

 

だったら旅先で何をするのか。

玉村豊男は、ふだんやっていることを旅先でやってみるそうです。ふだんやっていることとは、家の周りを散歩したり近所の喫茶店で本を読んだり、駅前の飲み屋で一杯やるなど。旅先で自分の住んでいる街のように行動してみると、「文化や環境のかたちが肌身に滲みるように即物的に理解できる」と書かれています。

 

そのためにもできるだけ荷物は軽くします。キャスター付きのキャリーバッグは、いかにも旅行者然としているので、海外旅行でも使いません。これも玉村豊男の影響です。

私がキャスターつきのトランクを嫌う理由は、せめて旅をするときくらいは、自分の生活のために必要なものは自分の手でしっかりと持ちたいからである。

 

年を取って体力が衰えて、旅行の荷物を自分で持てないようになったら、旅を卒業するタイミングです。

 

今週はJALの「どこかにマイル」で石垣島へ。たしかウラナイ8の玉紀さんが初めての「どこかにマイル」で石垣島へ行ったはずですが、私にも当たりました。先週は島根で雪に囲まれていたというのに、石垣島は季節外れの陽気でTシャツ一枚で十分でした。

荷物はこれだけ。「旅行というより、隣町に来たみたい」と友人に驚かれたことがあります。スペインの7週間の巡礼でも機内に持ち込めるバックパックに必要最低限のものを詰めましたが、空港では巨大なスーツケースと山のようなお土産物を運ぶ乗客が大多数でした。