翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

洞窟に眠る泡盛と人生の残り時間

宮古島で海宝館の次に向かったのが多良川酒造。泡盛の蔵元です。

単なる酒好きですが、背景を知ればもっとおいしく感じるので、酒蔵の見学が大好きです。

 

これまで訪れた酒蔵では、製造工程を見学することが多かったのですが、多良川酒造ではDVDで説明。見学の目玉は天然の洞窟を利用した泡盛の貯蔵庫です。

 

泡盛は寝かせることで、古酒(くーすー)となります。ひんやりとした温度が安定している鍾乳洞は格好の貯蔵庫。購入した泡盛を保管してもらえます。

 

 

料金は自宅への配送料込みなので、申込んでみようかと思ったのですが、かつて宮古島でキャンプをしていたオリックス・バファローズの故・仰木監督の甕を見て思いとどまりました。奥様に連絡したところ、甕ごと寄贈するとのことで、そのまま鍾乳洞の中に置かれています。

 

今はこうして旅をしてアルコールも飲んでいるけれど、女性の健康寿命は70代半ば。人生の残り時間は、泡盛を洞窟に寝かせて古酒を楽しむほど残っていないかもしれません。

泡盛の購入者が亡くなったり製造者が代替わりしても、この洞窟は天然の鍾乳洞だから、建て替えされることなく、ずっと貯蔵庫として利用されていくでしょう。遠い未来に人類が滅亡してもそのまま残るかも。洞窟内のひんやりした空気のせいか、そんなことが頭に浮かび、自分の人生の残り時間の短さを嘆きたくなりました。

 

易経の離為火(りいか)の三爻

日昃(にっそく)の離。缶(ほとぎ)を鼓ちて歌わずば、大耋(だいてつ)の嗟(なげき)あらん

八卦の離は自然界では太陽。三爻は太陽が西に傾いた状態。人生にたとえれば、年老いた黄昏時です。「酒を飲んで器を叩いて歌うぐらいでないと、老いを嘆いて暗くなる一方だ」という意味。

私に残された人生の時間はそう長くありません。どうせ死ぬのだから、飲めるうちに飲んで楽しく過ごそう。そう思って、すでに古酒になっている泡盛を自宅に宅急便で送ってもらうことにしました。

 

六十四卦の最後、火水未済(かすいびせい)にも、お酒に関する記述が出てきます。六十四の物語が終わって再び、最初の乾為天(けんいてん)に戻って新しいサイクルが始まる直前。

「飲酒に孚(まこと)あり」は、ともに人生を歩んできた旧友と酒でも飲んで、しみじみ振り返れということでしょう。ただし「首を濡らす(溺れる)ほど飲んではいけない」戒めが続きます。

易の起源は諸説ありますが、数千年の時を経ても、お酒と人間の関係はそう変わっていないのでしょう。そんなことを考えながら、今日も飲んでいます。